パヴァロッティの抜けるような青空に輝く明るい陽光のような声、色気と威厳をたたえたドミンゴの劇的で悩ましい声、一途で誠実な情熱に燃えるカレーラスの優しい声。なんという対照的個性がつくる絶妙の三角形だろう! 夕暮れ時の風に吹かれながら、数万人の群集が楽しんできたこのイヴェントは、人々を限りなくぜいたくな気分と平和を満喫する幸せに誘う。 1990年ローマ、94年ロサンジェルス、98年パリ――。サッカーW杯決勝戦前夜に行なわれるイヴェントとして、風格ある3大テノール・コンサートの果たして来た役割はきわめて大きい。全世界の人々をとりこにするスポーツの祭典への、芸術の側からの限りないオマージュ。それが3大テノール・コンサートの原点なのである。
2002年、韓国・日本共同開催W杯大会でも、3大テノール・コンサートは横浜アリーナで開催。それを機に発売された、それまでの3大会の3大テノール・コンサートのエッセンスを凝縮したベスト盤である。
これが実によく編集されていて、本当に一番盛り上がったいい雰囲気のところだけがチョイスされた、ベスト・オブ・ベストとも言うべき大変ぜいたくな抜粋となっている。とりわけコンサートの頂点を形作る、『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」の迫力は、やはり3大テノール・コンサートならではの巨大な凄みがある。いままでの3大テノールを知っている人にも、改めてこのイヴェントの素晴らしさを見直すいい機会になると思う。また、初めての人でもこれ1枚あれば、3大テノールの本質である、祝祭的で特別な雰囲気が存分に味わえる。W杯の文化的背景という意味でも、ぜひ聴いておきたいディスクである。(林田直樹)