奥付には両者とも「著者」とクレジットされているが、和田誠が26人のジャズメンの肖像画を描き、そこに村上春樹がエッセイをつけた。同じ体裁で作られた前作『ポートレイト・イン・ジャズ』の続編である。 和田の明るい画風、村上のホンワカとした文体が手に手をとってジャズをノスタルジックな甘さで包んでいる。和田の絵はシックな色遣いが魅力的だ。肌の色、上着、バックを茶系で統一し、シャツの衿と袖口を白く目立たせたテディ・ウィルソン。ピンクがかった肌の色、ブルー・グレイの上着、黒いギターに緑色のバックがそれぞれを引き立て合うジャンゴ・ラインハルト。レイ・ブラウンやグレン・ミラー、ボビー・ティモンズ、ホギー・カーマイケルはいずれもバックが夜空になっていてムードたっぷりだ。
村上は巧みな比喩で彼らの本質に迫る。ソニー・ロリンズが唄ものを演奏するときのうまさを「すさまじいまでの解像力」ととらえ、その手法を「あっというまもなく唄の懐に入り込んで、その中身をひとまずゆるゆるにほどいて、それから自分勝手に組みたて直して、もう一回かたくネジを締めてしまう」と視覚的なイメージで表現しているところなど実に見事だ。頻繁に聴いたオスカー・ピーターソンのアルバム『サムシング・ウォーム』について「間取りの隅々までしっかり覚えてしまった」と体感的な言い方をするところなどもおもしろい。
データや歴史的意義づけに重きは置いていないし、ジャズの伝道師たらんとする意気込みも感じられないけれど、小粋なピアノ・トリオを聴いているようなリラックスした気持ちにさせてくれる本である。(松本泰樹)