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リヴァイアサン 4 (岩波文庫 白 4-4)

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リヴァイアサン 4 (岩波文庫 白 4-4)

ホッブズ 水田 洋 
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いよいよ最終巻

(第3部からのつづき)

 第3部に引き続き、ホッブズはカトリック教会の支配の不当性を論証すべく、綿密な聖書解釈を展開してみせる。
 「暗黒の王国」という第4部の表題が指しているのは、ローマ・カトリック教会のことである。
 ローマ法王は聖書をねじ曲げて解釈し、キリストの代理人を僭称して、教会が「神の王国」であると偽っている。ローマ教会は、誤謬の教義により人々を支配する、「詐欺師の同盟」としての「サタンの王国」にほかならない。
 こんな教会に、主権国家が従属させられるいわれはない。やはり人々を支配する正当な権力が認められるのは、社会契約によって成立する「国家主権」のみである。

 ちなみにこの岩波文庫版第4分冊には、『リヴァイアサン』第4部の後に、「リヴァイアサンへの附録」第1〜3章(「二ケア信仰箇条について」「異端について」「リヴァイアサンに対するいくつかの反論について」)が収録されている。いずれも、対話篇の形式で書かれた、ホッブズによる『リヴァイアサン』本文への補足である。個人的には、異端者の処理をめぐって「市民法」と「神の法」の関係が論じられる第2章が重要だと思う。


政治学、社会学など人文科学を学ぶ人の必読書

世界史でお馴染みの名前、ホッブズは耳に懐かしい響きです。16~17世紀の、イギリスの政治哲学の雄、ホッブズは、人類は「闘争状態」こそ、自然なありかたであると定義づけました。そして、国家とは,平和を維持するために絶対主権をもって君臨すべくつくりだされた装置であるという主張を行いました。聖書に由来する、巨大な翼を拡げる怪獣の名に、書名を求めた本書は、中世政治学の要とも言える書です。


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ホッブズ 水田 洋 
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ここから神学についての議論が始まります!

 (第2部からの続き)

 第2部の第31章の段階ではさほど明確にはならなかったが、第3、4部で大々的に聖書が取り上げられ、ホッブズがその解釈作業に深々と入り込んでいくのは、ローマ・カトリック教会のヨーロッパ全土に及ぼす権力が、「自然法」にも「神の法」にも背いていることを撃つためである。第3部の表題は「キリスト教のコモン-ウェルスについて」となっているが、「キリスト教のコモン-ウェルス」とはカトリック教会のことだ。
 教科書的なホッブズ理解においても、「教会権力に対する国家権力の優越を説いた」というのは、ホッブズの思想の要点のひとつである。

 カトリック教会は、(『リヴァイアサン』第1、2部に示されたような仕方で結ばれた)社会契約によって「主権」を獲得してはいない。また、旧約聖書におけるユダヤ人のための「神の王国」、新約聖書におけるキリストが支配する「神の王国」のいずれにもカトリック教会は該当しないし、ローマ法王が「奇蹟」を伴って神の啓示を告げているわけでもない。そうである以上、カトリック教会・ローマ法王の権力は、ヨーロッパ各国の「国家主権」に優越するものとして認めるわけにはいかない。人々は、もっぱら国家主権に対してのみ服従すべきなのである。

 ここで注意しなければならないのは、ホッブズの政治思想は必ずしも非宗教的・反宗教的な態度をとるものではなく、むしろ、(王が統治する)俗なる世界についての政治理論と、(神が統治する)聖なる世界についての神学理論を、何とかして総合しようと試みているように思われるという点だ。
 ホッブズがそんなことを明確に意識していたかどうかは分からない。それにホッブズは、当時の彼を取り巻いていた抜き差しならない政治的、社会的状況のなかで、ある意味では日和を見ながら書いていたようなところもあるようなので、『リヴァイアサン』自体もどこまで本気なのか分からないといえば分からない。
 しかし、ともかく我々に残された『リヴァイアサン』という書物の後半は、「政治学と神学の総合を試みたもの」として読むのが、最も理解しやすいアプローチだろうと私は思うのだ。(たとえば43章を参照)

 ところで、この第3部に到ってはっきりするのは、『リヴァイアサン』から「信仰の自由」や「基本的人権」を読み取ろうとする訳者序文(解説)が、おおよそデタラメであるということである。
 たしかにホッブズは「信、不信はけっして人間たちの命令から生じるものではない」「信仰は神のおくりものであって、人はそれを、報酬の約束や拷問の脅威によって、あたえることもとりさることも、できない」(211頁)と述べてはいるが、これは当り前のことを言っているにすぎない。

 ホッブズが言いたいのは、政治的主権者──それがキリスト者であろうと異端であろうと不信心者であろうと──に対する絶対的服従が、「神の法」への服従と一致する、ということである。「信仰の自由」やら「基本的人権」の尊重を導こうとしているのではなくて、ホッブズの主眼はあくまで、カトリック教会の振るう権力が「神の法」から逸脱したものであることを暴くという点に置かれている。

 さらにいえばホッブズは、たとえば「リヴァイアサンへの附録」の第2章では、無神論者は追放されるべきだとも述べているのである。
 「国家権力に対して基本的人権、とくに信仰=良心の自由をつらぬこうとするホッブズの努力は、この本のいたるところににじみでている」などという訳者の解説は、曲解もいいところである。

(第4部へ続く)



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