歌人としての彼を現代の日本人で知らぬ者がいるであろうか? 明治を代表する歌人と称され、文学の世界で不動の地位を築いている自分を、天上の世界で啄木が知れば彼はなんと歌うであろうか?是非とも聞いてみたい欲求にかられる。
「ともはみな・・・」などと歌ったが、彼の友人、本作品の編者で国語学で今も並ぶものの無い権威を持つ金田一京助でさえ彼の名声を超えることができない。
苦しい生涯を過ごした故に今ある彼の地位。人生とはなんと皮肉なものだろう。
本作品は400円と値段も手頃です。手元において置くのに迷う必要はないでしょう。
自ら大きな志を持ちながら、家業の傾き、病弱、貧困、そのなものに足をとられて、どうしようもなく鬱積した気持ち。それらを何ら自らを飾ることなく、よく表現されている。
芸術とは、やはり苦しみの中から生まれるものらしい。
「悲しき玩具」は啄木の死の直前、金に困って売ったものだ。彼が生前自らの歌をそう評したことに起因している。
確かに元気が出るという本ではない、しかしながらこれほどまでに庶民が抱くごく普通の苦しみを、芸術の域までに高めた彼は天才だし、日常に疲れた庶民である私を含めた自分をほんのひととき癒してくれるに違いない。