数理社会学のリクルーティング・ブック
最近、ますます元気な数理社会学会。
これは学会HPでその構想が公開され、ながらく登場が待たれた、数理社会学のリクルーティング・ブックである。数ページ完結で数多くのネタ(テーマ)がふられているのは、従来の入門書にはない「間口の広さ」をうちだそうという魂胆だろう。初学者向けの数学解説が必要なら、すでに「数理の発想(アイディア)でみる社会」があった。数学が勉強したいなら矢野健太郎ほか「社会科学者のための基礎数学」があった(確か新版が出ていたはずだ)。モデル作りなら「社会科学のためのモデル入門」があった(はやく再版してくれ)。なかったのは、ほとんどあらゆる人の興味を取り付き、数理社会学へとリクルートしてくるための、こんな本だったのだ。
古典を抑えるには「社会学の古典理論」が登場したし、また数理社会学の古典から最前線はまでは「数理社会学シリーズ全5巻」が待ち構えている。
あとは君がこの船に乗るかどうかだ。
社会科学の間口の広さが楽しめます。
○○社会学とつけば何でも社会学じゃんと、揶揄されることもある学問ではありますが、社会学の論法で、社会から課題を抽出し、それに対してモデル化を行い、ありとあらゆる課題を切ってまわります。「なぜ禁煙に失敗するのか」「なぜ好きなのにケンカするのか」「なぜカルト教団は極端な行動に走るのか」と様々な課題44に対してモデルを構築して、それに対しての解も提示していきます。
ゲーム理論あり、セルオートマトンあり、レヴィストロースあり、とにかくいろんな多様な方法で社会の「なぜ?」に対して応えていって、数理社会学と銘打ってはいますが、経済学や文化人類学も含めて、人文社会科学の間口の広さと楽しさに出会える本だと思います。
参考文献が人によってレベルが異なっていて、いきなり英語論文(原著にあたれってのはわかりますが)やら難し目のものが紹介されていますが、それぞれの分野の入門書(他にもウィークタイズの話のところでは玄田有史『仕事の中の曖昧な不安』に触れないのは不自然というか不親切な気もしました)も提示してほしかったと思います。(配慮が見られる人もそれなりにはいましたが)
対象範囲は広くて良い。が、初学者には難しいのでは?
本書が対象としている範囲は広く、数理社会学を知らない読者に対して、数理社会学の対象領域について網羅的に示されており、一定の数学力があれば、他分野専攻の人間にとって、1冊目のテキストとしては適切であると思う(本書の目次等については数理社会学会HPが詳しい)。しかし、これまで数理モデルや統計解析に関する書籍・論文を読んだことのない読者には数学的に難しすぎるであろう。それこそ高校数学からさかのぼり、「私立文系でもわかる」数学入門的な章を加えてもよかったのではないかと考える。古典解釈しか経験のない人にとっては、このレベルではまず理解できないであろう。
基本的に社会学分野では、数理社会学や計量社会学に関心はあっても、「数式をみるだけで頭が痛くなる」といったタイプが多いのが実情であろう。数理社会学の裾野を広げる意味でも、「数学リテラシー解消」を意図した「数理社会学テキスト」の誕生が望まれる。