赤字続きで経営の危機に瀕しているサーカス団長のヴァレンティンは、妻を亡くしてからめっきり老け込み、生きる喜びを忘れかけていた。そんなヴァレンティンにもたらされた、一通の手紙。それは、アラブにいた頃の親友ナビルからの招待の手紙だった。
ガンに侵され、余命いくばくもないといわれたナビルは、残りの人生をヴァレンティンのサーカスと共に過ごしたいと言ってきたのだ。
費用は全部ナビル持ち。しかも、高額の準備金つき。そのお金で借金を清算し、まってもらっていた団員の給料も払えたヴァレンティンは、勇んでウラニアへと旅立つ。
サーカスでの様々なエピソードを縦軸に、ヴァレンティンの母親と父親の愛を辿る模索を横軸に、物語は回っていく。
あたかも、シェラザラードの千夜一夜物語のように、朝と夜のあいだの時間・ナッハモルグごとに語られる魅力的な物語。
作者のシャミは、シリアからドイツへの亡命者なので、物語はそのへんの事情も織り込まれている。ウラニアで大成功していたサーカスが、やがて、為政者の都合に翻弄されていく過程は、大変興味深い。
ナビルの語ったユーモアたっぷりの「おなら」話。サイコーに面白い話が、独裁国家では、命取りになったりする。うっかりジョークもいえないような国・・そんな国は悲しいな・・。
軽妙な語り口とは裏腹に、思いテーマを秘めた作品でした。