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奇子 (下) (角川文庫)

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奇子 (下) (角川文庫)

手塚 治虫 
奇子 (下) (角川文庫)
定価:¥ 620
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恐ろしい世界

しかし,読み終えた後の嵐の去った後のような荒涼たる感覚は秀抜だ。壮絶なラストは虐げられ抑圧された奇子の起こした反乱であり革命である。こんな人間達が身近にいたら本当に気が狂うだろう。奇子は本当に生まれなかった方がよかったのだろうか?あと,田舎は怖いというイメージでトラウマになりそうでした。

土曜漫画

これは凄まじい。

たとえば、アメリカン・ニューシネマの傑作、『イージー・ライダー』を観終えたあとや、稲垣足穂の『弥勒』を読み終えたあとや、つげ義春の『無能の人』を読み終えたあとなどは、あまりのショックでとても学校や会社など行く気がしなくなってしまう。
これらは、全て土曜日に味わうべきものだろう。

この間はじめて読んだ手塚治虫の『奇子(あやこ)』も、やはりそのひとつで、僕はしばらく立ち直れなかった。
なんでこの手塚治虫という人は、人間というものの弱さや下らなさや醜さをここまで徹底的に救い無く、胸悪く描くことができるのだろうか。
こういうものを読むとつくづく、ジョン・レノンにも同様のことが言えるが、手塚治虫が愛や勇気や希望の使者的な扱いを受けているのが不思議でしょうがない。

とにかく、このあまりにも強烈な手塚治虫のダークサイドの美しき結晶に触れてみて欲しい。
この絶望をどう取るかは、あなたの自由である。



 昭和の戦後の闇を描いた傑作だと思います。地下で外界から隔離されて異常に育った奇子が再び外の社会に出て、異常な人間関係の中に交わっていく。見終わった後のなんともいえない余韻、手塚先生は天才です!

手塚治虫にしてはこういった話を取り上げるのは珍しい。

横溝正史的な田舎の閉鎖された環境で起こる。本当に古い東北地方の田舎ではこういうことがあったのだ。一族の恥は外には出さない。外に洩れるくらいならなんとしても隠してしまえ。そうして奇子という少女は子供の時代に死んだことにされ、土蔵の中で育てられる。そして、そういう環境の中で育った奇子はねじまがってしまう。

近親相姦は当たり前、一族の殺人も当たり前という異常な環境の中で起こる話であると同時に読んだほとんどの人は奇子に悲しみや同情の気持ちを持つだろう。

すくいがない・・・

個人的に手塚作品で一番好きな作品です。ひとつの物語を見るとき、キャラクターをたてるために善人と悪人を置くのがふつうだと思うのですが、この作品にはそれがない。どの登場人物も善人でもなく、悪人でもなく、という生々しい人たちばかりです。こういう登場人物は手塚作品にはけっこういる(ブラックジャックetc)とは思いますが、この作品は際だっていると思います。手塚さんの人間観の暗い部分を表した作品なのでしょうか。すくいのない終わり方も、いいですね。


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