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松永 美穂

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逃げてゆく愛 (新潮文庫)

Bernhard Schlink 松永 美穂 
逃げてゆく愛 (新潮文庫)
定価:¥ 700
新品最安価格:¥ 700
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悲惨な歴史の果てに

一筋縄にはいかない人生があって、愛があって、個人や家族や民族や国のヒストリーがあって、仲間や友人や恋人がいて、でも結局、人間は孤独。そんな事実を改めて感じさせられる作品だが、だからと言って未来が暗い訳ではないことも、伝わってくる。

シュリンクの作品に一貫している、「歴史」に関する考察。
敗戦国、侵略国としての歴史を共通に持つドイツと日本。

戦争を体験していない世代が、自国の歴史にどこまで責任があるのだろう。個人的には責任はないと思うが、「割礼」の恋人たちと同様に、歴史に関して何らかの見識を持っていて、その見識が互いに一致しない時、ほんとうの意味で理解し合った関係はありえないと、感じた。もちろん、それはシュリンクの意図する結論ではないが。

とにかく、いい作品。
戦争を知っている世代の方の感想を伺ってみたい。


バイオリニストの妻を亡くした男の話が面白かった

まぁ、面白かった。
欧州の人の心情をよく表しているということで読み始めた本。
ドイツ人の話。
短編集。バイオリニストの妻を亡くした男の話が面白かった。彼の心情は理解できないこともなかった。

小説は小説として、市井の人との乖離はどの程度なのだろう。日本の小説の記述と日本の市井の人々との距離感から類推すると、ダイブ違うのだろうなとわかる。ただ、どこが突飛な部分として小説に記されているのかは、まだ理解できていない。


愛とは

 
 作者の「愛」の感覚なのだろうか、
それぞれの短編の中に出てくる愛はとても個人的だ。

 求めてもすり抜けてゆき、手元には愛の残滓だけが残る。
そんな短編集。

 しかし実は愛とはそういう物ではないだろうか?
愛し合うもの同士の間にあるようで居て、
その実、ある瞬間に一方の中にだけしか存在しない。
おとぎ話ではない愛、少し考えるにはいいだろう。

 もう一つの特徴は、東西ドイツに関わる問題を背景にしているところ。
この雰囲気は独特で、味わうに値する。

 僕が中学生の頃はまだ東ドイツがあって、ベルリンも東西にわかれていた。
そのころ東ベルリンに引っ越して行った子と文通していた事を思い出した。
外国人である彼女は西ベルリンに行く事ができて、
東の友達にお菓子をねだられるのだと言っていた。
僕らの知らない東西間の話は子供ながら面白く記憶にある。
そのころの東西間にあったもつれは、きっと今もあるのだろう。


スローな短編集

 結末を強制しない短編集。全7編、ドイツの過去とユダヤ人、個人のアイデンティティーと最も近い存在のはずの妻とは何か、東西ドイツ統一の功罪と、いろいろ趣向が楽しめる短編集。
 ゆるい短編集で好き嫌いが分かれる。起承転結でバシッとオチるのが好きな人は読まないほうが無難。
 個人的には全7編中、最後の『ガソリンスタンドの女』が秀逸。男なら、この気持ち分かる!?



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帰郷者 (新潮クレスト・ブックス)

Bernhard Schlink 松永 美穂 
帰郷者 (新潮クレスト・ブックス)
定価:¥ 2,310
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死んだとされていた父捜しの話。

読み進んでいくうち、何が真実なのかわからなくなってくる。母の話、自分の昔の記憶、祖父母と思っていた老人たちはいったい誰?サスペンス仕立てで読ませる!後半のその結末が・・・いまいち。
父とされていた人物がそうではなく、自分の過去の行動を誰でもその状況にあればとる行動として理解させようとするが、その設定自体に無理がありはたして、それほどの人物がそんな自己弁護をはたしてしようとするのか?”朗読者”の読後感の残像を引きずる読者はちょっと幻滅するかもしれない。


自らの過去のアイデンテティ探しがそれほど重要であれば現在はどうなるのだろう

主人公は父を第二次世界大戦時に失い、母と祖父母に育てられたという過去をもつ。しかし、祖父母が現役後の活動として行っていた雑誌に編集された作品のなかにある戦争帰還者の話を見つける。家に帰った帰還者は、妻の横に見知らぬ男と子供を目にする。

やがて、この小説が、実際の話に基づいている事、しかも死んだと思っていた自分の父の物語なのではという考えにたどり着き,それから事実をつきとめるため、過去の記録をたどり、国をまたいだ真実を求める旅へと主人公はかき立てられる。

皮肉な事に、彼にとっても、その旅は、愛するものを去るのか、愛する人は自分を待つのか、関係が破滅するのかという、同じ岐路を再現するかのようになる。

戦争やまた別の理由で自分の前からいなくなった人を残された人は待つのか、あきらめるのか、また、帰ってきたものは、受け入れられるのか、受け入れられようとするのか、受け入れられないのか、また万一そこに第三者がいれば、対峙するのか、あきらめるのか。

また、法学者であり、古典に通じた作者は、この永遠ともいえるテーマを法の原理とオデュッセイアの物語に重ねてさらに深く主人公に考えさせることによって、同じテーマを、筆者は、時代、場所をうつして様々に洞察しようとする。またこの物語の懐古時の時代設定が、ドイツナチ政権時代を含むものであり、ともすれば極めてリスクの大きい題材であるのだが、筆者独特の冷静沈着な筆致によって、政治的意志を排除したあくまで客観的視線を読者に提供する。

しかし、戦争によって、引き裂かれた主人公のアイデンテティの激しい揺らぎと、それを多角的にとらえる筆者の深い洞察は、現代の一大悲劇を確立したかのようである。

難しいテーマのように見えるが、人間の根本的な不安に多くの人が共鳴すると思う。



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リスとお月さま

松永 美穂 
リスとお月さま
定価:¥ 1,680
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お、お月さま!

手持ち絵本の中で私が一番好きです(子どもはまだ理解できる年齢ではないので)。全体的に文章は短く(「ぐりとぐら」より少なく「いないいないばあ」より多い)実写的な、ラフだけれど質感までわかる鉛筆描きに色鉛筆の彩色。こんなに立派の本格的な絵にあんな笑いの落とし穴がっ!私は思わず子どもへの読書を中断し自分のために読んでしまいました。タイトルからしてもう騙されてます。
個人的なんですが勝手に効果音をつける楽しみがあります。ですので普段から子どもに読書をする際に好き勝手やってるママが楽しめる本でもあります(それ専用ではないです…)。
知識不足は承知ですが似たような物語や展開を知りません。このドイツ人の作家さんの他作品を読みたくなりますよ〜。



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幽霊コレクター

松永 美穂 
幽霊コレクター
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車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

松永 美穂 
車輪の下で (光文社古典新訳文庫)
定価:¥ 600
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ハンス・ギーベンラートへのパッサカリア

ハンス少年は家族と地域社会からの期待を負いエリート・コースを歩みます。
当初は他の子供たちとの差異をこの期待に見出していました。
しかし、次第に神学校やある女性とのやりとりの中で
芽吹きつつある自分の本心が周囲の期待と合致しなくなり、
ハンス少年はよろめき斃れます。
“夢”を見させる余裕を与えず、“健全な大人になるためのマニュアル”に
従わされた少年の悲劇です。
ハンス少年の短い生は、ヴェーベルン「管弦楽のためのパッサカリア」の
枠を突き破ろうとするも果たせない音とどこか似ていると思いました。


人生観が変わります。表現もすばらしく,世界に浸っていたいもの。

昔の作品ですが,現代の人が読んでも,共感できる内容のものです。
少年時代のかけがえのない日の大切さ。それを犠牲にさせてしまう受験経験。本当に大切な経験をできなかった後悔の思い。そして,回りの世界に取り残されていってしまう抜け殻になったような存在。
心にメッセージがしっかりと届いて,感動をいただきました。人生観が変わるような作品でした。
また,この作品はとても風景描写がすばらしかったというのも,心に残りました。その表現を味わうため,他の本を読むよりは時間が掛かりました。つい少し前だけど,もう再び返ることができない少年時代に返らせてくれまして,いつまでもこの世界に浸っていたいとも感じてしまいました。
中学時代には旧訳版を読むのを断念した経験があるので,この古典新訳かどうかはわかりませんが,何十年後かに再び読んでみたい作品でした。


相田かずき君は浪六の大ファン

ヘッセの研究家にとっては重要な作品かもしれないが一般の読者には勧められない。特に3章からは叙述が抽象的で空虚なものになっている。それを補うつもりか建物や自然の描写が挿入されているが、登場人物の心情と無関係(後の章ではメタファーになっている箇所もわずかにみられる)である為、独りよがりな写実文に終わっている。さらに力点の位置が(日本人の感覚からすると)おかしな所にあり、物語の途中が退屈で、終わりがあっけない。つまり全体のまとまりが非常に悪い。同じ青春文学でも、たとえば高樹のぶ子の『光抱く友よ』は完成度がずっと高く思える。

自然の描写がすばらしいという。だが日本人は昔から自然への観入ということをごく普通に行っており、国語の授業でも夏目漱石や長塚節らの立派な写生文を読んでいる。故に、この程度の描写では正直物足りないのであるが、巷に溢れる作品よりは数段よい。

訳者解説にある「教育制度に対する批判」は文学の主題としては弱すぎるし、その様な切り口による評価は無理がある。実際、教育のあり方に触れている箇所の訳文は周囲と調和しておらず、むしろ奇妙でちぐはぐな印象を受ける。日本で多く読まれている理由は、この物語が遠い国での話で距離を持って接することができ、身近にある現実的な問題から目をそらすことができる為であって、作品の出来とは関係がなかろう。

本の仕上がりは中の下。「ガラス糸」=>「グラスファイバー」「栓が盤にはめ込まれ」=>「材料が固定され」その他「ハンスはレバーの先に女の肉体を感じて戸惑った」のではないのか。


まずタイトルがすばらしい。

主人公ハンスの声を少年の言葉として取り返してくれた訳者の努力にまず感謝したい。
訳文は平易でみずみずしく、ヘッセの美しい自然描写の文章を格調高く訳しきっている。
私はヘッセと直接の交流もあった高橋氏の訳を翻訳文学の最高峰だと考えており、今もその思いにいささかの揺るぎもない。
しかし、今日、多くの人にもう一度ヘッセの作品に親しんでもらおうと考えると今回の翻訳は画期的なものであったと思う。
ヘッセの作品にはみずみずしい自然描写と青春へのやや感傷的とも感じさせる思い入れが表出されており、多くの日本人の作家に影響を与えてきた。漫画家でも、永島慎二、坂口尚等、ヘッセの作品なしではその作風が存在しなかった作家が容易に見つかる。
私にとってもヘッセは最高の作家だ。少し内向的で、夢見がちな主人公ハンスは他の作品と同じで、ヘッセの分身だが、ヘッセの作品の主人公ほど共感を持てる主人公を私は他に知らない。主人公ハンスが体験し、感じる、喜びや戸惑いは、思春期を過ごした多くの人が共感できるものであろう。主人公の心のうちに沸き起こる微細な変化をヘッセは丁寧に表現しており、今、思春期を生きるヒトには強い共感を感じさせ、やや年をとった人にはこのように繊細に心が反応していた時の事を懐かしく思い出させられるだろう。
また、詩人ヘッセならではの、丁寧で美しい自然描写には、何度、彼の作品の読んでも心が打ち震えてくるのである。ヘッセ以外の作品で味わう事のできない感動だと思う。
ヘッセの作品では、人が本来の自分自身らしく生きようとすることの難しさと、その勇気を持つものの姿を描いているものが多数あるが、ヘッセが20代で書いた、車輪の下での主人公は自分自身らしく生きられずに破滅にいたってしまう。
後年の作品のデーミアンやゲルトルートでは主人公は破滅せずに自分の道を歩んでいき、ヘッセそのものの人生にoverlapする。
自分らしく生きたいと切望する若い人にこそ、是非、ヘッセの作品を読んでもらいたい。

最後に、松永氏の翻訳で是非デーミアンを読みたいと切望しております。


こんなに若々しく瑞々しい“青春小説”だったとは…

 教科書などには大体、「優等生の少年が、周囲の過剰な期待や無理解のため、破滅する話」…とか書いてある訳で、こう書かれると「暗い、重い、難しい、読みたくない」と多くの人が思うはず。私自身がまさにそうで、今まで“読まず嫌い”で来てしまった。
 今回、初めて読んでみて驚いた!ストーリーを要約すれば、確かに“その通り”の内容なのだが、しかし…この作品が、実に活き活きとして瑞々しく、そして激しい思いに満ちた、若々しい“青春小説”であることに!
 (作者の故郷でもある)シュヴァルツヴァルト(黒い森)地方の自然や、その中での人びとの営みの描写の美しさ…(特に川遊びや釣りの描写は秀逸!)。どこか同性愛的なものも感じさせる思春期の友情や、初恋の描写の繊細さ、甘美さ…。そして、大人たち、特に教師や聖職者、学校へ向けられる、辛辣で、“憎悪”とさえ呼びたくなるような強い批判…。
 後書きで知ったのだが、この作品は作者が25歳時に、自らの少年時代の経験を強く反映させる形で書いたという。作品には確かに、それに相応しい“若さ”“激しさ”そして“生々しさ”が表れている。それを、余す所なく訳出した、訳者も見事!



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夜の語り部

Rafik Schami 松永 美穂 
夜の語り部
定価:¥ 1,835
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現代版アラビアンナイト

ダマスカスの夜の熱気や風の爽やかさが、読む側にも伝わってくるような話です。
声の出なくなってしまったサリムのために、友人たちが話して聞かせるのは、自分の過去の物語であったり、遠いおとぎ話のような物語であったりする。
一晩にひとりずつ、話を聞いているうちに入れ子の様な「小説の中の物語」にまで引き込まれていることに気づかされます。

この日常が今もどこかで続いている、そう思わせる読後感がとてもすばらしい。


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遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)

松永 美穂 
遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)
定価:¥ 1,890
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小説の舞台は面白いのだけれど

翻訳小説を読んでいて、こんなに外国との隔絶感を抱いたことはなかった。主人公である24歳の青年の言動を目の当たりにするたびに、その常識感覚、倫理観みたいなものを疑い、あまつさえ苛立ちさえこみ上げてくる。同僚たちも呆れることは呆れるのだが、次第に「天真爛漫」「無垢」みたいな幻想を作り上げて大団円を迎えるがごとく彼を認めて受け入れていくのも違和感を禁じえない。題名にもなっている鉄道駅の「遺失物管理所」でのドラマが中心に据えられていくのかなと思っていたら、そういうわけでもない。遺失物にまつわるドラマも尻切れトンボな展開のものが多く、ほかのエピソードも「えっ。それで終わっちゃうの」という素っ気なさがある。ロシアから訪れる若き博士が思いのほか本篇に出張ってくるために、物語の本筋が明後日の方向に迷走している気がしてならない。あまりおすすめできないと思う。

何かあるようで何もない

タイトルから、遺失物から広がる人情物語のような気がしたが、そうではなかった。
主人公を含めてなかなか魅力的な人物が登場し、楽しみな要素もいろいろ出てくる。
のに、結局色々な出来事が起こりそうでいて、ほとんど何もおこらないまま物語が終わる。
物語が始まるようではじまらないまま終了してしまったような印象。
文体は悪くないと思うんだけど・・・・。


自分を遺失物だと思ってる人も、誰かが拾って届けてくれてる場所があるかもしれない

 タイトルと各種書評に目を通すと、“物にまつわる人間ドラマ”といったステレオタイプなストーリーを思い浮かべるかもしれない。それも一面では当たっているけれど、この小説の魅力は主人公のヘンリーにある。
 物語は24歳の青年ヘンリーが遺失物管理所に着任するところからはじまる。これまでの人生でうまく居所を見つけられなかったヘンリーはこの職場をすっかり気に入ってしまう。曰く、“遺失物管理所ほど気持ちのいい職場はないし、楽しいし、おまけに想像力も刺激されます”。
 育ちが良く、一見オプティミストに見えるヘンリーは、周りから「いつも思いつきに従って行動してる」「あなたは何でもお手軽すぎる」「ずいぶん自分が偉くて啓蒙的だと思っている」と揶揄されることもあるが、明るく人懐こくて、みんなの人気者である。そして実際のところ表面的な仕草とは裏腹に、結構深く物を考える“想像力”を持った奴なのだ。
 辺境出身ということだけで差別される同年代の数学者や、思い出にすがって生きる同僚の老父、自らの存在感を轟音と暴力にしか見い出せない街の暴走族...そうした弱者への眼差し、シンパシー、一方で権威や出世にまったく興味を示さないって辺りもヘンリーの魅力である。
 ヘンリーは世間に収まりの悪い自らを“遺失物”になぞらえるくだりがあるが、ヘンリーの一見能天気でピュアな心情も、多くの人々が失ってしまった“遺失物”なのかもしれない。
 全編を通して軽妙洒脱な会話が登場し、いつまでも読んでいたくなるような居心地の良い小説である。遺失物の持ち主であることを証明してもらうための“お約束シーン”(芸人にナイフ投げをさせたり、子どもに笛を演奏させたり...)も楽しい。


失くしたものよりも、

遺失物管理所という狭い空間から紡ぎ出されるさまざまな人間模様も面白いのだが、
読みながら自分が失くしたもののことを考えてしまう。
そのものにまつわる時間や出来事に、思いを馳せてしまう。
読み終えて、いま、わたしは取り替えのきかない全てのことを、
とても、とても大切にしたくなっている。


飄々とした青年の物語

 北ドイツの大きな駅とおぼしき場所の遺失物管理所。そこへ24歳のヘンリー・ネフが職を得たところから物語は始まる。
 ヘンリーは鞄を無くしたバシュキール人のラグーティンと知り合いになるが、彼との親交を通じて見えてくるのは、異邦人に対して不寛容な現代ドイツの姿だった…。

 ドイツ連邦鉄道でこの遺失物管理所というのは決して花形職場ではありません。そこへ伯父のコネで就職したヘンリーは野心があるでもなく、どこか飄々とした感じで日々を過ごしています。とりあえず食うために職に就いたという程度の無気力な青年かという色眼鏡を通して読み進めていたのですが、これが意外と芯が強く、寛容の精神に富み、そして義理人情に篤い青年だということが見えてきます。
 出世欲は相変わらずないにも関わらず、やがてヘンリーは自身の仕事に当初に比べれば熱意をもってのぞむかのような姿勢を見せ始めるところで物語は幕を閉じます。

 物語展開に激しい起伏は見られません。職場の同僚である人妻パウラとヘンリーとの仲も、最初に予感させるほどの波風が立つことはありません。ヘンリーの飄々ぶり同様、物語も静かに進行するといってよいでしょう。
 その点に物足りなさを感じないでもありませんでした。

 翻訳にはもうひと踏ん張りほしかったところです。ドイツ語原文の過去形を日本語でも律儀にすべて過去形で表記したために、「~た」で終わる文章が延々と連なる結果となっています。リズムが単調になり、読んでいて味気ないという思いをしました。
 「~ではないかと思った」とやらずに「~ではないか?」で切ってみたり、適度に体言止めを用いたり、思い切って現在形を混ぜてみたりという工夫をすれば、もっとテンポある翻訳文になったことでしょう。



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リスとはじめての雪

Sebastian Meschenmoser 松永 美穂 
リスとはじめての雪
定価:¥ 1,890
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「ふゆは どんなにきれいだろう……」

鉛筆によるデッサン画が、ナチュラルでありがらインパクトがある。
色鉛筆(?)、水彩で色を乗せた印象的な絵もある。
ストーリーがかわいらしくて、必要最小限のことばに代えて絵が語る。

雪を見たことのないリス、ハリネズミ、クマが、なんとか雪を見ようと
がんばる姿がかわいくて、ちょっとナンセンスで、
いいようのないおかしみがこみあげてくる。

デッサン力でぐいぐい引っぱる路線としては、バンサンなんかと
同じなのだけれど、バンサンよりはユーモアが効いている。

想像を逞しくし、待ちあぐねる三匹に訪れたものは……。
このクライマックスの始まり方が絶妙だ。
ほんとうに、空から雪が落ちてくる、その最初のひと片の再現。
息をのむような、音が一瞬なくなるような、あの感じ。
そして、それからのこと。
語りたいけど語りません。三匹の寝顔がすべて。
ラスト、裏表紙側の見開きページが最高!!。
緩急自在。楽しませてくれる本だ。




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誘惑。 (女の創造力)

Marlene Streeruwitz 松永 美穂 
誘惑。 (女の創造力)
定価:¥ 2,310
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朗読者 (新潮クレスト・ブックス)

Bernhard Schlink 松永 美穂 
朗読者 (新潮クレスト・ブックス)
定価:¥ 1,890
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商品の紹介
スイスで出版された原書を、キャロル・ブラウン・ジェンウェイが格調高い英語に翻訳。セックス、愛、朗読、戦後ドイツの不名誉についての、短くも豊かな物語。15歳の少年ミヒャエル・バーグは、謎めいた年上の女性ハンナとの激しい恋の虜になる。だが彼女の身の上についてはほとんど知らないうちに、ある日ハンナはミヒャエルの前から姿を消してしまう。…二度と彼女に会うことはないと思っていた彼だったが、戦慄(せんりつ)の再会が実現する。ナチスの過去を裁く法廷の被告席に、ハンナがいたのだ。彼女が筆舌に尽くせぬ重罪を犯していたことが明らかにされていく、その裁判の進行を追いつつ、ミヒャエルはとてつもなく大きな難問に取り組みはじめる。ホロコーストを知った自分たちの世代は、どう対処するべきか?「理解に苦しむものを理解できると思ってはいけないし、比較にならないものを比較してはいけない…。ぼくたちは、嫌悪と恥辱と罪の意識を抱えたまま、ただ黙っているべきなのだろうか?何のために?」
本書はボストン・ブックレビュー誌のフィスク・フィクション賞を獲得した。たぐいまれな明快な文章で、少ないページ数のなかで多くの悪の精神の問題に挑んでいる。世界がかつて知り得たなかで最悪といえる残虐行為に加担したのが親や祖父母、あるいは恋人であった場合、彼らを愛するという行為はどういったことなのか?文学を通しての贖罪(しょくざい)は可能か?シュリンクの文体は簡潔であり、比喩表現、会話といった文章の属性を問わず、余分なものはことごとくそぎ落とされている。その結果生まれたのが、ドイツの戦前と戦後の世代、有罪と無罪、言葉と沈黙の間に横たわる溝を浮き彫りにした、厳粛なまでに美しい本作なのである。


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あんまり現代小説を読まない者の感想です。

 刑務所のなかのハンナに向けてテープを送り、主人公が演じ続けた「朗読する坊や」の役割が、かつて彼女自身がおこなった「おきにいり」の少女たちに課した朗読と重ねられ、それからの解放が同じく死の宣告となるといふ結末の符合。囚人を朗読者として看守生活の“隙き間”に入れてゐたのが、今度は反対に囚人として、朗読者の生活の“隙き間”に入れられる破目になったことが、主人公自身によって語られてゐるのが、実に皮肉に感じられました。朗読だけを聴き続けるといふ、思惑を超えて主人公から与へられることになってしまったともいふべき、その「罰」の内実が、しかし苦しみとしてではなく、言葉を覚える喜びとして、反省の学びへと真摯な彼女を向かはせる。しかも「罰」は「罰」として顕れ、彼女を最後に自殺に追ひやることになってしまふ訳ですね。この小説の苦味の背景にあるのは、戦争と貧困の問題といふより、時代に翻弄される人間のどうしようもない運命のやうな感じがします。思ふに、文盲であることを隠す生き方を貫くことは、実はハンナ一人が選んだといふより、その事実を暴露しなかった主人公とともに選んだ誤りとも云ふべきで、二人の責任です。ですが、そのせゐで、刑務所といふ閉じた環境に守られた彼女にとって、主人公といふのは「ただの朗読者」であり続ける限り、依然自らが優位に立つ思ひ出の中の「坊や」のままであり続けることができ、(さう思ふのは彼女の自由なのですが)、主人公の側もまた「坊や」からの成長を見せず、そのやうに演じ続けなくてはならないと思ひ込んでしまったところに、二つ目の誤りがあります。もっともそれは彼の「罪」ではないのですが、刑務所の女所長さんが「どうして手紙を書かなかったのか」と非難したときに、一番こみあがるものがありましたね。その次のカタルシスはもちろんハンナが裁判長に詰め寄るシーンでした。

物悲しいラブストーリー

一気に読みました。戦争の理不尽さに翻弄された男女の物悲しいラブストーリーに感じました。映画ではどのように描かれるのでしょうか。

人間の記憶って・・

物語は、「ぼく」がハンナと過ごした日々を回想するところから始まる。物語の中核となるべき大恋愛なのに、「ぼく」は記憶があいまいで、すべてを明確には覚えていない。
大恋愛だったのなら、なぜしかっり覚えてないのだろう?その程度の恋愛だったのか?

読み進めていくと、ハッキリ覚えていないことがむしろ自然に感じた。純愛ものにありがちな、あの大恋愛だけは明白に覚えている、忘れられないんだ、という世界観が崩れていった。

読んでよかった。また、何年か後に読みたい。


読みやすい英語。

英語勉強用の小説としてわかりやすい、読みやすい 200ページの分量も努力すればいける。 もとはドイツ語で書かれたものを英語翻訳しているので、英語の癖がなく、勉強用の小説として薦められる。TOEIC800点レベルの人が900点を目指すために読むという感じ。

散漫すぎる

女性がハンナでならなかった理由、
他の女性や囚人や他人の過去とは違う理由、
時代の移り変わり・・・

それらが全く読めず、ただ主人公の男性が思い出にすがって
自己中心的な思考を前後左右にめぐらしているだけ。

この作品の中では『生』も『死』も重みが無い。

ハンナが隠した秘密はあまりにも決定的な根拠に欠け
時代背景や過去にさかのぼる犯罪と繋げるのは難しい。



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