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水田 洋

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道徳感情論〈上〉 (岩波文庫)

アダム スミス Adam Smith 水田 洋 
道徳感情論〈上〉 (岩波文庫)
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次は「国富論」に行ってみるかな

 「感情」についての突き詰め様には、いささか圧倒されました。これだけグリグリ考えて、こんな分量の書を物したところを見ると、本当に書く必要があって書かれたものなんだなあと実感した。出版物の絶対量からしても、当時のものはみなそうなんでしょうね。

 上巻では、私たちがそこ・ここで行動するにあたって、相応しい・正義にかなう・価値がある・・のか否か等について、思うところはどのように形成されるのか。個人の内面と所与社会とのいわば交感・交換として、あるいは内面に形成された第三者的自己の果たす役割、などで説明しています。 下巻では、行為の領域をさらに広くとり、普遍的なものにまで及ぼして考察してあります。

 要するに社会のありようを感情に由来させる論で、その体系はそう小さくはないのですが、使用されている語(≒訳語)の意を文中のものとしてちゃんと汲み分けて読めば、常識的な現代人であろう自分にも解りました(と思います。誤解かな?)。 ピンと来なかったり、「違うだろう」というのがあるのは、時代、国を異にする外、自分が無宗教だからでしょう。
 何にせよ、この他A・スミスさんの発した経済、法等についての社会考察の基盤に違いありませんから、避けて通れない書です。

 訳文は、原文に忠実であることを重んじた訳者の誠意を推察させるものでした。 とり方、評価はひとさまざまですね。 原文にあたる時間も能力もありませんが、長文なのはそちらじゃないか知らん。 ただ、読点が脅迫的に多いのには、やや閉口しましたが。
 まあ、解りやすさを第一に重んじるのなら、解説書の類の方がいいでしょうし、それで十分なのでは?
  
 いずれにせよ、生きるのにもいろいろと大変な時代だったに違いない、というのと、人間むかしも今も、あっちでもこっちでも大して変わらんらしい、と実感させられたことでした。


みんなの意見は案外正しい?

 同感/共感sympathyとはなんぞや。
 私がもしAさんの境遇にあったと想像してみたときに、そのAさんと私が全く同じように
感じるか、否か、まさに共感できるか、できないか、に従って測られるべきもの?
 アダム・スミスの用語法に従えば、それは半分正しく、半分間違えている。すなわち、
「公正な観察者」の視点から見て、その状況にあったときに、いかなる感情が引き出される
だろうか、との思考に基づいて導き出されるべきものがスミスの「共感」なのだから。
 この発想、ルソーの一般意志・全体意志の議論と比較して読んでみると面白いかも
しれない。挑戦なさりたい方はぜひ。

 そう、端的な例を語ろう。電車の中で財布を盗まれ苛立ったAさんがその盗人の死刑を
求め、私もまた想像の上において同様の怒りを抱いたとして、私とAさんの間に果たして
共感はあるといえるのだろうか。
 一般の用語法に従えばある。けれども、スミスに言わせればたぶんない。いくらなんでも
フツーに考えてやりすぎだ。
 逆に、同じシチュエーションに置かれたBさんは徹底的な無抵抗主義者で、その盗人への
許しを与え、そんな高邁さに感動した私も許しを訴えたとする。このときに共感は果たして?
 やはり一般的な用語法に従えばある。けれども、スミスに言わせればたぶんない。やはり
フツーに考えて、怒りの一つもぶつけたくなるのが人間というものではなかろうか。
「フツー」の人間は、恩に対して感謝の言葉の一つも返さずにはいられないように、自らを
傷つけた相手に対して何らかの報いを要求するものだ、死刑はやりすぎだとしても。
 そんな「フツー」について語った一冊がこの『道徳感情論』。

 そして、例えば「被害者感情」との美名のもと、しばしばこの「フツー」をあからさまに
逸脱しているのが、今日のこの国の風景だったりもする。

 翻訳についてはややもすると硬すぎるような気もする。幸い、スミスの英語は比較的
読み易いものなので、原典に直接当たるのもひとつの手かもしれない。

 スミスといえばなんといっても、『国富論』の書き手として知られる人。ところで、その
中に登場するあの「神の見えざる手」とて、この「共感」を知らずしては理解できまい。
 そんな点から見ても必読の一冊。


人間精神論の模範

 英国経験論にロック「人間本性論」、スミス「道徳感情論」、ヒューム「人間知性論」、バークリ「人知原理論」等々の精神理論が生まれたのはなぜだろうか?これらは岩波文庫と中公バックスの世界の名著で読める。歴史主義を本来とするかの思想潮流に、なぜ精神に関する「理論」が展開されねばならなかったのか。フランスが革命によって神をも打倒する勢いで政治権力を破壊しようとしてナポレオンの時代を招来したのに対し、英国はこの時とばかりにバークの『省察』を得ることになった。それは当時は反動であったが今や保守主義の聖典とされる。これほどに英国は歴史を重視するのであり、いわば歴史の芳香の中にどっぷりと浸かって味わい尽くした上でそれは意識して理解するというより当たり前の知的環境であると言っていいようなものだろう。そうした歴史主義を前提にした上でこれら経験論の精神論は書かれている。物心二元論を前提にした学問が心を問題にするとすれば、今の脳科学のように情報理論と神経の物理学を綯い交ぜにしたような方法で個々の検証を積み上げていっていつかそれが包括的理論に修練していくことを期待するしかないが、それ(脳科学の統合)は私の見るところまだまだ遠い道のりだ(だからこそ面白いことが残されている)。経験論の精神論は、確かにエッセイに過ぎない、悪く言えば哲学者の与太話かも知れないが、歴史主義の下に科学を忌避するのでも信仰するのでもなく、単に思想の言葉で、精神について考えた論考なのだと思う。それらは十八世紀における準備運動なのではなく、脳科学を手段とした心の探究が今後とるべき模範的形式なのではないだろうか。簡単な日常言語で精神や意識を説明してみること、それを整備されつつある脳科学の新しい知見に基づいて考え抜くという姿勢で展開する必要がある。それが超自然の実在を解明する必要条件でもある。

時代遅れの訳本

これを20年前に出していたならば、訳の巧拙をどうこう言われることもなく、
岩波文化人の方々から幅広い絶賛を受けていたであろう。
だが、今時分このような難解な訳文でもって子訳本を出しても、
ただ読者をより混乱させるだけ。

はっきり言って、中学生レベルの逐語訳。

冒頭言ったとおり、一昔前はこのスタイルが当たり前だったので
誰も文句は言わなかったのだが、いまやわかりやすくてなんぼの時代。
下手なプライドが敷居を低くすることを拒んでしまったのか。

これを買うよりは未来社から出ている『道徳情操論』を
図書館や古本屋で探して読むことをお奨めします。


アダム・スミスおたく向け

古典の内容についていまさらとやかく論評できるような立場でもありませんし、技量も持ち合わせていませんので、翻訳についてレヴューします。

まず、対象となる読者層がかなり限られる翻訳と構成になっています。学術的興味からではなく一般的読者としてこの文庫に接するのはかなりきついといえるでしょう。初版の再現を目指しているのか、完全版を目指しているのかも良く分かりません。付録の挿入の仕方などに関してもかなり疑問が残ります。

訳語は典型的な逐語訳になっており非常に読みにくくなっていますが、一昔前の学術書といえば大抵こんな感じだったかと思います。原書の版の違いによる関係代名詞の変更にも言及するあたりも専門家向けといえるでしょう。

現代社会の諸問題を改めて考えるため㡊??社会科学の原点であるアダム・スミスを一度読み直してみようか、なんて気持ちからこの文庫を手にすると後悔するのはまず間違いありません。心してかかりましょう。


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道徳感情論〈下〉 岩波文庫 白 105-7

アダム スミス Adam Smith 水田 洋 
道徳感情論〈下〉 岩波文庫 白 105-7
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翻訳が悪い?

何を言っているのかさっぱり。学術的に究めるには、これがいいんでしょうか??
後で、未来社から出ている『道徳情操論』を見つけました。こちらの方が一般人には格段に理解しやすいのではないかと思います・・・。



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リヴァイアサン〈2〉 (岩波文庫)

T ホッブズ Thomas Hobbes 水田 洋 
リヴァイアサン〈2〉 (岩波文庫)
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ここまででホッブズの有名な議論は終わり

 (第1部からのつづき)

 「あの悲惨な戦争状態(自然状態)から、かれら(人間)自身を解放することについての洞察」(p.27)から自然法が導き出されるわけだが、自然法に則った平和を実現するためには、「かれらすべての権力と強さとを、ひとりの人間に与え、または、多数意見によってすべての意志をひとつの意志とすることができるような、人びとのひとつの合議体に与えること」(p.33)が必要である。

 つまり、すべての人が服従する絶大で強力な「主権」が打ち立てられなければ、自然法のルールが実行されえないというわけである。
 そして、この共通権力(「リヴァイアサン」)によって「一人格に統一された群衆」(p.33)が、「コモンウェルス」つまり国家である。

 第2部は、コモンウェルスがいかにして生まれ、いかにして運営され、いかにして解体されうるかについての詳論である。
 主権者の権力が絶対的でなければならないということ、コモンウェルスは臣民の自然権を抑制して秩序立てるものとしての「市民法」を制定する必要があるということなどについての、妙にこまごまとした議論が続く。
 とにかく「国家」について思いついたことをすべて書き込んでみた、といった調子で書かれているから、多くの内容が読者にとっては煩わしく思える。しかし、自然状態における「(自己保存の)自然権」の絶対性や、自然法を実現すべく打ち立てられたコモンウェルスにおける「主権」の絶対性などの、単純な原理原則からの徹底した演繹になっているから、理解するのは簡単だ。

 ちなみに、第17〜21章あたりに、一般に知られている意味で「ホッブズ」らしい社会契約の原理論がまとめて書かれてあるので、ほかの部分は読まなくても、ホッブズの政治思想の大意をつかみ損ねることはないと思う。

 ところで、第2部のなかで第31章だけは、第3、4部のテーマを予告するかのようにして「神学」にあてられている。そもそもホッブズの政治思想を支える土台は「理性と聖書」(p.82)の二本立てになっていて、第30章までの論述にあたっても聖書はたびたび引用されて来た。いまや本格的に、その土台の半面つまりキリスト教神学による、ホッブズ的社会契約説の根拠付けへと移っていくわけだ。

 第31章のなかで個人的に興味深いと思ったのは、ホッブズが「神」の本性について実体的なイメージを持つことを禁じ、徹底して「神」を抽象化し、形式化しているところである。「語りえぬものについては、我々は沈黙しなければならない」と言ったL.ウィトゲンシュタインの宗教観に似ていなくもない。

 何はともあれ、現代の政治論争にまで影響力を残すものとしてのホッブズの政治理論は、第2部まででおおよそ片が付いていると言っていい。ちなみに、私が大学で受講した「西洋政治思想史」という特別講義でも、ホッブズについての課題図書は『リヴァイアサン』の第1・2部だった。
 が、ホッブズの神学論争にまで関心を抱く読者は、たしか新品ではすでに手に入らないはずの第3・4部──私は古本で購入──へと進まなければならない。く……

 (第3部へつづく)


国家とは何かを論じた古典。

国家とは何かを論じた古典。内容は概略以下のようになる。
 先ず、人間は生存する権利(自然法の基本)を持っている。そして自然状態では互いの闘争で死滅する。生存を可能とする社会的方法は、自身の生存を保証出来る誰か(主権)に自分が生存する権利を委ねる代わりに、主権が作る法に従う契約を結ぶことである。国家(リヴァイアサン)とは、このような契約を結んだ多数の人間と主権とが作る社会的仕組みであると論じている。因みに国家の形態は、君主制、貴族制、民主制の三つに分類されているが、前述のことは共通に成り立つ。
 読んでいる途中で次のことに気がついた。それは、(1)社会科学の古典を理解するには、当時の社会を知る必要があること、(2)古典の中に現代社会を理解するための要素が含まれていること、(3)古典の読み方は、現代が抱えている社会問題の回答を求めるのではなく、より確からしい原因と、より良さそうな方策を見つけるために、批判的に読むこと、(4)だから、何回も読むことになるということ。岩波文庫では全部で4冊になってますが、まとめて記しました。


政治学、社会学など人文科学を学ぶ人の必読書

世界史でお馴染みの名前、ホッブズは耳に懐かしい響きです。16~17世紀の、イギリスの政治哲学の雄、ホッブズは、人類は「闘争状態」こそ、自然なありかたであると定義づけました。そして、国家とは,平和を維持するために絶対主権をもって君臨すべくつくりだされた装置であるという主張を行いました。聖書に由来する、巨大な翼を拡げる怪獣の名に、書名を求めた本書は、中世政治学の要とも言える書です。

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