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流れる星は生きている (中公文庫BIBLIO20世紀)

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流れる星は生きている (中公文庫BIBLIO20世紀)

藤原 てい 
流れる星は生きている (中公文庫BIBLIO20世紀)
定価:¥ 720
新品最安価格:¥ 720
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クチコミ情報

多くの人に知ってほしい

3人の子供を連れて満州から故郷へ引き上げるまでの壮絶な体験が記録されています。
具体的なエピソードや心情描写が素晴らしく、
著者がこのような作品を残してくださったことがとてもありがたく思いました。

過去、こんなに劣悪な環境で生き抜いた日本人がいたのか、ということに衝撃を受けました。

また、自分が生きるか死ぬかの極限の場面では、人はここまで利己的になるのか、
母の子を想う心とはこんなに強いものなのか、
などいろいろ心に迫るものがありました。

歴史の闇に葬ってはいけない事実がこの本にあります。
ぜひ多くの人にこの作品を知っていただきたいです。


極限状況でなを失わない希望とは…

*****
ソビエト軍の満州侵攻に際して、関東軍と政府関係者は満州の民間人を
見捨てて(むしろ民間人を盾にして)自分たちだけがさっさと日本に逃げた。
日本国は消滅し、満州には混乱だけが残された。

ソ連が占領した満州・樺太・千島には軍民あわせ272万6000人の日本人がいた。
このうち107万人がシベリアに送られ、過酷な環境のもとで強制労働を課せられて、
37万人が日本に戻ることなく非業の死を遂げた。(数については諸説ある)。

この本は幼い子どもたちと共に満州に置き去りにされた母子の脱出のドキュメントである。
「母性愛」などという甘ったるい言葉はこの本には似合わない。「壮絶」としか
形容できない驚愕の書である。

この本は戦争の記録としてだけでなく、極限状況に置かれた人間の行動心理として
読んでも大変興味深い。この本を読みながら何度もフランクルの『夜と霧』を思い出した。



この親にして あの子

先日発売になった「決定版 この国のけじめ」藤原正彦著を読んでいる最中、この母親の本を読んでみたくなった。併読しているうちに面白さが逆転し、この母親本が、ランナー追い越しのランニング・ホームランとなった。

「藤原正彦の面白さの原点はここにあったのだ」と思い知った。
「この母にして、この子」と言うべきか、「この子にして、やっぱりこの母」といった感じで、ものすごい。寝る暇を惜しんで一気に読んだ。
「壮絶!」「凄い!」、もうこの一言に尽きる。
男では到底できない母の強さがここに記されている。

1945年の敗戦後、こんな凄いことが中国、北朝鮮で実際にあったのですね。このような記録がないと私たちの代で消え去ってしまう過去の事実。無知の私なんぞは、敗戦、即、解放、淡々と引き上げされたのだと思っていましたが、敗戦後もこんなに凄まじい、死ぬ思いで引き上げてきたなどとは全く知りませんでした(この本から、大半の人は亡くなっているのですが)。

こういう本を読むと、どうして日本はこの事実を代々伝えていかないのであろうか、どうして消し去ろうとするのだろうか?と、日本の教育方針を疑ってしまう。まさしく、小学校では英語教育なんて必要ない!まず自国の勉強が必要である!
しかも、通常こういう「戦争体験記」は、男性側からのもの。女性の体験記は非常に貴重である。

しかし、こんな凄い体験記のなかでも、「藤原正彦の母」が垣間見られる。
その表現の仕方が似ているのである、息子と。またウイットが非常に利いているのである。こんな壮絶な内容にも拘らず「面白い」のだ(非常にはしたなく申し訳ないが)。

しかし、やぱり親子だなー、こういう親でないとこういう子は育たないよなー
でも、親子5人生きて還れてほんとに良かった。

■お薦め度:★★★★★(超お薦め!、実に面白いしためになる)


想像を絶する実話

本書は壮絶な満州からの引き揚げ体験を綴ったものだ。長男正広6歳、正彦3歳、生まれて間もない咲子を連れての日本への帰国は過酷なものだった。

特に飢餓や病気による死者が多発する中で、子供たちの健康を守ることは想像を絶するほどのものだ。夫と引き裂かれての心細さも当然あったことだろう。そんな中、ていさんにとって唯一頼りにしていたのが、長男の正広である。

「正広が一番私に叱られて、そして私のただ一人の信頼できる人間であった。こうしてここに立っている七歳の吾子に私は一年の間の謝罪を手をついてやりたいほど悲しかった」
と記している。

十分な食糧の確保ができなかった時は、かじりかけの芋を「お母さん、僕のをあげるよ、お母さんお腹がすいておっぱいがでないんでしょう」と言って渡した。

また正彦がひどく衰弱している様子を見て、
「その正広自身もぶるぶる震えていたが、正彦をこうさせたのが兄としての責任でもあるかのごとく、私にいっているのであった」
と幼いながら兄弟を死なせてはなるまい、という重い責任感が感じられる。

食糧の確保がいかに困難で、藤原一家が弱りきっていたかがわかる記述がある。
「一日おきにコンビーフと野菜サラダの缶詰が一ポンドずつ配給された。…ぺろりと食べて、空き缶を眺めていると、胃の中が妙にむかむかとして来て、便所にまで行かないうちにほとんど吐瀉してしまった。…私たちの胃のにはこの過ぎた栄養分を吸収するだけの力がなかったのである」

なお、当初本書はこどもたちへの遺書、遺産として書くつもりだったそうだ。ていさんの両親に再会してこどもたちの無事を確認した時に出た「これでいいんだ、もう死んでもいいんだ」「もうこれ以上は生きられない」という言葉は印象的だった。
どれほど言葉を尽くしても、本書の壮絶さの実感がわかないだろう。それほど私たちの想像の範疇を超える体験記なのである。


多くの人に読んで欲しい。

「諏訪の湯と書いてある大きな鏡に写った私の姿は自分で見てさえ恐ろしいほどのものであった。〜そして今見た私は墓場から抜け出して来た、幽霊そのままの姿であった。」墓場とは此の世であり、幽霊は我々皆。醜悪な世の中で、親が子を思い子が親を思う心、夫が妻を思い妻が夫を思う心、その心だけが生きる縁。生きることは辛く苦しい故、何か理由が欲しくなる。子供のため、夫や妻のため。それ以外は集団の中でじっと耐えるしかない。「智に働けば角が立つ。情に棹差せば流される。とかく此の世は住みにくい。」(草枕)


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