スノーボードのたのしみをみんなが知るにいたって、スキー場の文化はいまではすっかり変わってしまいました。そのおかげで、この映画に描かれる世界は、とてもノスタルジックなものになってしまいました。けれども、文化の盛衰とは関係なく、この映画は、とてもみずみずしい輝きをいまも放っています。それは、『私をスキーに連れてって』が「仲間たちのつくった映画」だからなのだとわたしは思うのです。
「ホイチョイ」「見栄講座」などなど、バブル期を演出したビッグネームに隠れてみえなくなっている事実ですが、この映画は、「フジテレビ・アソシエイツ」としてささやかにクレジットされている、4人の若手フジテレビ社員が、放課後の有志のあつまりとして始めた企画なのです。
その輝きは、映画!狡の人ならば、アニエス・ヴァルダ『5時から7時までのクレオ』やエリック・ロメール『獅子座』の夏のパリの光のような、といえばわかってもらえのではないかと思います。つまりはヌーヴェル・ヴァーグのようなもの、戦前の京都の鳴滝組(小津安二郎や山中貞雄、稲垣浩らがいた会社組織を越えた脚本家集団)のようなもの。
それが結果的に、『南極物語』『竹取物語』など大作しか手がけていなかった当時のフジテレビの映画事業にあたらしい道を切り開いた。90年代のトレンディ・ドラマの爆発的な繁栄も、このちいさな映画がきっかけになったのだとわたしは見ています。
もちろん、この映画の生まれる瞬間には、きっとだれも、そんなことを思ってはいません。だからこそ、純粋で無邪気な、たのしくて切ない映画なのでしょう。馬場康夫監督の演出も、シニカルさが身上のホイチョイ・テイストからは遠く離れて、映画のなかのスキー仲間たちのたのしさを、不思議なくらい生き生きとストレートに描いています。
わたしは発売と同時に、DVDを買いました。この映画はわたしの宝物です。