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商品の紹介 妻の死後、彼女のかつての浮気相手と思われる男から彼女あての手紙が届く。彼への嫉妬と生前の妻への不信感から、夫は復讐をしようとひそかに男に近づくが…。妻を亡くしたある男の心情を切々と描いた「もう一人の男」をはじめ、過去の悲劇や宗教問題のために、愛しあいながらもいさかいが絶えないドイツ人とユダヤ人のカップルを描いた「割礼」など、短篇7篇を収録。 本作品は、空前の大ベストセラーとなった『朗読者』(英訳『The Reader』)に続く、著者ベルンハルト・シュリンク初の短篇小説集。この作品の中で彼は、社会や国家の歴史やありかたに否応なく影響を受ける男女の愛をはじめ、子どもに対する父親の愛情、1枚の絵に描かれた少女への特別な感情、さらには妻のほかに2人の女性と関係を持ち、三重生活を送る男の愛など、さまざまな愛のかたちを描いている。 音楽、絵画、建築などの芸術的な要素を盛り込み、登場人物の心情の変化を細やかに描いてみせる筆力は、前作に勝るとも劣らない。いくつかの作品では、秘密を追求するというスリルあるストーリー展開で、推理小説的な要素も楽しめるなど、その魅力は多様である。また、著者はベルリン・フンボルト大学法学部教授という顔も併せ持つ。彼の研究テーマである「ユートピア」や「故郷」に関する考察が、作品の中でさまざまなかたちに具現化されている。特に「割礼」の主人公が割礼を決断、実行するくだりは、強いインパクトを持った象徴的な部分だとも言えるであろう。(石井和人)
クチコミ情報
『逃げてゆく愛』を原書で 長編『朗読者』の世界的ヒットが日本でも話題になった、ベルンハルト・シュリンクの短篇集。知的でスタイリッシュな7編が収められています。繊細な男女の愛に、現代のドイツやドイツ人の抱える問題を、さりげなくからめて語っています。たとえば最後に置かれた作品『ガソリンスタンドの女』は、シンプルでありながら深い余韻の残る佳品です。『朗読者』と同じく新潮社から翻訳も出ています。邦題は『逃げてゆく愛』。
愛の本質とは?これまで「愛」と信じていたものが、もろくも崩れ去り、自分の手の中から砂のようにこぼれ落ちていくのを、ただ見ているしかない男女。青年、成年、中年、老年にわたる様々な主人公達の、恋人への妻への子供への、そして自分への「愛」と信じていたものは、いったい何だったのか。「愛」をつきつめればつきつめるほど、また、自分の「愛」に正直になればなるほど“逃げてゆく”「愛」の不条理を、真摯に捉えた「残酷な愛」の書でもある。 ドイツ人作者ならではのドライで誠実な人間関係を堪能できる。 ☆「真剣な愛」を経験したことのある人におすすめ。
巧妙な人物設定と少し意外な結末私が最も気に入ったのは、ドイツ人男性とユダヤ人女性(そうしたければ、順番を逆にしてください)の恋愛を描いた「割礼」。テーマだけを聞くと、随分と陳腐に聞こえるかもしれないが、そこは『朗読者』のシェリングのこと。巧妙な人物設定と少し意外な結末によって、読後に忘れがたい印象を植え付け、私たちは正答のない(そして提出期限もない)宿題を課されたかのように感じることだろう。この短編では、ナレーティヴな部分は、ドイツ人男性(と語り手)の側にあるが、そのことが、「あれこれと悩む男と、あんまりは悩んでいない女」(The above disclaimer also applies here.)という印象を与えているように私は思った。ユダヤ人女性の側にナレーションをおいた場合や、「ドイツ人女性とユダヤ人男性」(ここでもディスクレーマーは必要ですか?)という設定を想像してみたら面白いと思った。
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