モノクロモノラルながら、非常に高品質。一昨年に出た「フィガロの結婚」(同じくベーム指揮の1966年ザルツブルクライブ)をお持ちなら、あれと同等の品質と思って頂ければよい。そう、あの「フィガロ」で最高のスザンナを歌っていたコロラトゥーラ・ソプラノこそ、この映像でも最高のツェルビネッタ演じている、レリ・グリストなのだ。
グリストのザルツブルクデピューは、前年の同作品「アリアドネ」。初演の日、聴衆は無名の新人だったグリストの大アリアに、完全に叩きのめされた。アリアが終わった時、とどろくような拍手と足踏みが沸き起こり、誰にもそれを止める術がなかった。やむなく演出のレンネルトが進み出て(オペラの途中なのに!!)、グリストにお辞儀るよう促すという異常な事態となった。
この1965年のライブは、その1964の奇跡の公演のリヴァイヴァル。グリストが大アリアの後、まるでイタリアオペラのように、一度退場し喝采に応え挨拶に舞い戻る(しかも3度も!!!)という不可解な演出は、あの偉大なレンネルトをしてそうせざるを得なかったほど、前年の反響がすさまじかったということであろう。
グリストのツェルビネッタは、明るく高くクリアで繊細で、それでいて力強く、とてつもなく美しい。そしてよく歌いよく踊りよく笑いよく跳ねよく回る。このツェルビネッタこそ、まさに人類の至宝というにふさわしい、奇跡の映像と言えるだろう。
ベームよ、VPOよ、レンネルトよ、ORFよ、そしてグリストよ、究極のツェルビネッタをありがとう!!!