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朗読者 (新潮文庫)

ベルンハルト シュリンク Bernhard Schlink 松永 美穂 
朗読者 (新潮文庫)
定価:¥ 540
新品最安価格:¥ 540
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商品の紹介
スイスで出版された原書を、キャロル・ブラウン・ジェンウェイが格調高い英語に翻訳。セックス、愛、朗読、戦後ドイツの不名誉についての、短くも豊かな物語。15歳の少年ミヒャエル・バーグは、謎めいた年上の女性ハンナとの激しい恋の虜になる。だが彼女の身の上についてはほとんど知らないうちに、ある日ハンナはミヒャエルの前から姿を消してしまう。…二度と彼女に会うことはないと思っていた彼だったが、戦慄(せんりつ)の再会が実現する。ナチスの過去を裁く法廷の被告席に、ハンナがいたのだ。彼女が筆舌に尽くせぬ重罪を犯していたことが明らかにされていく、その裁判の進行を追いつつ、ミヒャエルはとてつもなく大きな難問に取り組みはじめる。ホロコーストを知った自分たちの世代は、どう対処するべきか?「理解に苦しむものを理解できると思ってはいけないし、比較にならないものを比較してはいけない…。ぼくたちは、嫌悪と恥辱と罪の意識を抱えたまま、ただ黙っているべきなのだろうか?何のために?」
本書はボストン・ブックレビュー誌のフィスク・フィクション賞を獲得した。たぐいまれな明快な文章で、少ないページ数のなかで多くの悪の精神の問題に挑んでいる。世界がかつて知り得たなかで最悪といえる残虐行為に加担したのが親や祖父母、あるいは恋人であった場合、彼らを愛するという行為はどういったことなのか?文学を通しての贖罪(しょくざい)は可能か?シュリンクの文体は簡潔であり、比喩表現、会話といった文章の属性を問わず、余分なものはことごとくそぎ落とされている。その結果生まれたのが、ドイツの戦前と戦後の世代、有罪と無罪、言葉と沈黙の間に横たわる溝を浮き彫りにした、厳粛なまでに美しい本作なのである。


クチコミ情報

あんまり現代小説を読まない者の感想です。

 刑務所のなかのハンナに向けてテープを送り、主人公が演じ続けた「朗読する坊や」の役割が、かつて彼女自身がおこなった「おきにいり」の少女たちに課した朗読と重ねられ、それからの解放が同じく死の宣告となるといふ結末の符合。囚人を朗読者として看守生活の“隙き間”に入れてゐたのが、今度は反対に囚人として、朗読者の生活の“隙き間”に入れられる破目になったことが、主人公自身によって語られてゐるのが、実に皮肉に感じられました。朗読だけを聴き続けるといふ、思惑を超えて主人公から与へられることになってしまったともいふべき、その「罰」の内実が、しかし苦しみとしてではなく、言葉を覚える喜びとして、反省の学びへと真摯な彼女を向かはせる。しかも「罰」は「罰」として顕れ、彼女を最後に自殺に追ひやることになってしまふ訳ですね。この小説の苦味の背景にあるのは、戦争と貧困の問題といふより、時代に翻弄される人間のどうしようもない運命のやうな感じがします。思ふに、文盲であることを隠す生き方を貫くことは、実はハンナ一人が選んだといふより、その事実を暴露しなかった主人公とともに選んだ誤りとも云ふべきで、二人の責任です。ですが、そのせゐで、刑務所といふ閉じた環境に守られた彼女にとって、主人公といふのは「ただの朗読者」であり続ける限り、依然自らが優位に立つ思ひ出の中の「坊や」のままであり続けることができ、(さう思ふのは彼女の自由なのですが)、主人公の側もまた「坊や」からの成長を見せず、そのやうに演じ続けなくてはならないと思ひ込んでしまったところに、二つ目の誤りがあります。もっともそれは彼の「罪」ではないのですが、刑務所の女所長さんが「どうして手紙を書かなかったのか」と非難したときに、一番こみあがるものがありましたね。その次のカタルシスはもちろんハンナが裁判長に詰め寄るシーンでした。

物悲しいラブストーリー

一気に読みました。戦争の理不尽さに翻弄された男女の物悲しいラブストーリーに感じました。映画ではどのように描かれるのでしょうか。

人間の記憶って・・

物語は、「ぼく」がハンナと過ごした日々を回想するところから始まる。物語の中核となるべき大恋愛なのに、「ぼく」は記憶があいまいで、すべてを明確には覚えていない。
大恋愛だったのなら、なぜしかっり覚えてないのだろう?その程度の恋愛だったのか?

読み進めていくと、ハッキリ覚えていないことがむしろ自然に感じた。純愛ものにありがちな、あの大恋愛だけは明白に覚えている、忘れられないんだ、という世界観が崩れていった。

読んでよかった。また、何年か後に読みたい。


読みやすい英語。

英語勉強用の小説としてわかりやすい、読みやすい 200ページの分量も努力すればいける。 もとはドイツ語で書かれたものを英語翻訳しているので、英語の癖がなく、勉強用の小説として薦められる。TOEIC800点レベルの人が900点を目指すために読むという感じ。

散漫すぎる

女性がハンナでならなかった理由、
他の女性や囚人や他人の過去とは違う理由、
時代の移り変わり・・・

それらが全く読めず、ただ主人公の男性が思い出にすがって
自己中心的な思考を前後左右にめぐらしているだけ。

この作品の中では『生』も『死』も重みが無い。

ハンナが隠した秘密はあまりにも決定的な根拠に欠け
時代背景や過去にさかのぼる犯罪と繋げるのは難しい。



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帰郷者 (新潮クレスト・ブックス)

ベルンハルト シュリンク Bernhard Schlink 松永 美穂 
帰郷者 (新潮クレスト・ブックス)
定価:¥ 2,310
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死んだとされていた父捜しの話。

読み進んでいくうち、何が真実なのかわからなくなってくる。母の話、自分の昔の記憶、祖父母と思っていた老人たちはいったい誰?サスペンス仕立てで読ませる!後半のその結末が・・・いまいち。
父とされていた人物がそうではなく、自分の過去の行動を誰でもその状況にあればとる行動として理解させようとするが、その設定自体に無理がありはたして、それほどの人物がそんな自己弁護をはたしてしようとするのか?”朗読者”の読後感の残像を引きずる読者はちょっと幻滅するかもしれない。


自らの過去のアイデンテティ探しがそれほど重要であれば現在はどうなるのだろう

主人公は父を第二次世界大戦時に失い、母と祖父母に育てられたという過去をもつ。しかし、祖父母が現役後の活動として行っていた雑誌に編集された作品のなかにある戦争帰還者の話を見つける。家に帰った帰還者は、妻の横に見知らぬ男と子供を目にする。

やがて、この小説が、実際の話に基づいている事、しかも死んだと思っていた自分の父の物語なのではという考えにたどり着き,それから事実をつきとめるため、過去の記録をたどり、国をまたいだ真実を求める旅へと主人公はかき立てられる。

皮肉な事に、彼にとっても、その旅は、愛するものを去るのか、愛する人は自分を待つのか、関係が破滅するのかという、同じ岐路を再現するかのようになる。

戦争やまた別の理由で自分の前からいなくなった人を残された人は待つのか、あきらめるのか、また、帰ってきたものは、受け入れられるのか、受け入れられようとするのか、受け入れられないのか、また万一そこに第三者がいれば、対峙するのか、あきらめるのか。

また、法学者であり、古典に通じた作者は、この永遠ともいえるテーマを法の原理とオデュッセイアの物語に重ねてさらに深く主人公に考えさせることによって、同じテーマを、筆者は、時代、場所をうつして様々に洞察しようとする。またこの物語の懐古時の時代設定が、ドイツナチ政権時代を含むものであり、ともすれば極めてリスクの大きい題材であるのだが、筆者独特の冷静沈着な筆致によって、政治的意志を排除したあくまで客観的視線を読者に提供する。

しかし、戦争によって、引き裂かれた主人公のアイデンテティの激しい揺らぎと、それを多角的にとらえる筆者の深い洞察は、現代の一大悲劇を確立したかのようである。

難しいテーマのように見えるが、人間の根本的な不安に多くの人が共鳴すると思う。



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逃げてゆく愛 (新潮文庫)

ベルンハルト シュリンク Bernhard Schlink 松永 美穂 
逃げてゆく愛 (新潮文庫)
定価:¥ 700
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悲惨な歴史の果てに

一筋縄にはいかない人生があって、愛があって、個人や家族や民族や国のヒストリーがあって、仲間や友人や恋人がいて、でも結局、人間は孤独。そんな事実を改めて感じさせられる作品だが、だからと言って未来が暗い訳ではないことも、伝わってくる。

シュリンクの作品に一貫している、「歴史」に関する考察。
敗戦国、侵略国としての歴史を共通に持つドイツと日本。

戦争を体験していない世代が、自国の歴史にどこまで責任があるのだろう。個人的には責任はないと思うが、「割礼」の恋人たちと同様に、歴史に関して何らかの見識を持っていて、その見識が互いに一致しない時、ほんとうの意味で理解し合った関係はありえないと、感じた。もちろん、それはシュリンクの意図する結論ではないが。

とにかく、いい作品。
戦争を知っている世代の方の感想を伺ってみたい。


バイオリニストの妻を亡くした男の話が面白かった

まぁ、面白かった。
欧州の人の心情をよく表しているということで読み始めた本。
ドイツ人の話。
短編集。バイオリニストの妻を亡くした男の話が面白かった。彼の心情は理解できないこともなかった。

小説は小説として、市井の人との乖離はどの程度なのだろう。日本の小説の記述と日本の市井の人々との距離感から類推すると、ダイブ違うのだろうなとわかる。ただ、どこが突飛な部分として小説に記されているのかは、まだ理解できていない。


愛とは

 
 作者の「愛」の感覚なのだろうか、
それぞれの短編の中に出てくる愛はとても個人的だ。

 求めてもすり抜けてゆき、手元には愛の残滓だけが残る。
そんな短編集。

 しかし実は愛とはそういう物ではないだろうか?
愛し合うもの同士の間にあるようで居て、
その実、ある瞬間に一方の中にだけしか存在しない。
おとぎ話ではない愛、少し考えるにはいいだろう。

 もう一つの特徴は、東西ドイツに関わる問題を背景にしているところ。
この雰囲気は独特で、味わうに値する。

 僕が中学生の頃はまだ東ドイツがあって、ベルリンも東西にわかれていた。
そのころ東ベルリンに引っ越して行った子と文通していた事を思い出した。
外国人である彼女は西ベルリンに行く事ができて、
東の友達にお菓子をねだられるのだと言っていた。
僕らの知らない東西間の話は子供ながら面白く記憶にある。
そのころの東西間にあったもつれは、きっと今もあるのだろう。


スローな短編集

 結末を強制しない短編集。全7編、ドイツの過去とユダヤ人、個人のアイデンティティーと最も近い存在のはずの妻とは何か、東西ドイツ統一の功罪と、いろいろ趣向が楽しめる短編集。
 ゆるい短編集で好き嫌いが分かれる。起承転結でバシッとオチるのが好きな人は読まないほうが無難。
 個人的には全7編中、最後の『ガソリンスタンドの女』が秀逸。男なら、この気持ち分かる!?



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Der Vorleser: Roman (Diogenes Taschenbuch, 22953)

Bernhard Schlink 
Der Vorleser: Roman (Diogenes Taschenbuch, 22953)
定価:¥ 1,164
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映画「愛を読むひと」の原作

いわゆる「ひと夏の恋」って奴ですが、原作は良かったです。ちょっと男の視線で女性を美化して、女性が見るとまた別の感想が湧くかとも思いますが。


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ゼルプの欺瞞 (SHOGAKUKAN MYSTERY)

ベルンハルト シュリンク Bernhard Schlink 平野 卿子 
ゼルプの欺瞞 (SHOGAKUKAN MYSTERY)
定価:¥ 1,995
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『朗読者』の作者による、ドイツらしさを堪能できるミステリー

『朗読者』で有名になったベルンハルト・シュリンクによるミステリー。
ナチス政権下で検事を務め、今は私立探偵となっている60代後半の
ゲーアハルト・ゼルプが主人公。

物語は、ゼルプが良家の子女である女子大生の失踪の調査を
引き受けるところから始まるが、やがてこの失踪事件に
思いもよらぬ政治的なテロや陰謀がからんでくる、という展開。

ナチス政権下で検事という経歴を持つ高齢の探偵というだけでも
面白いが、ゼルプを取り巻く恋人・友人がいきいきと描かれ、
ドイツ料理やワイン、美しい田園風景の描写も楽しめます。

戦後奇跡の復興を遂げたドイツの陰の部分(70年代の過激派の活動など)も
物語に織り込まれ、英米のミステリーしか読んでこなかった私には
極めて新鮮でした。ほかのゼルプ・シリーズも読んでみたいです。



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巡礼者たち (新潮クレスト・ブックス)

エリザベス ギルバート Elizabeth Gilbert 岩本 正恵 
巡礼者たち (新潮クレスト・ブックス)
定価:¥ 2,100
新品最安価格:¥ 2,100
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買いです。

翻訳者による「あとがき」を読んでいて、大学の創作コースにはあえて属さず、お金を貯めてはいろいろなところに足を運び、様々なひとたちとの出会いを繰り返すという作者の姿勢こそが、敬虔さと祝祭性とを併せ持った「巡礼」ではないのかと思いました。どの短編も、描かれてある出来事や人物の輪郭よりも、描かれていない細部や事情のほうに気が向かい、それによって作品に奥行きとコクが生まれるといった巧みさでした。

ひとつひとつが愛しくて。

初めて読んだのは高校生のとき図書館で。あまりにも面白くて、
ページを捲る手が止まらなくて、ひとつひとつの愛しい短篇た
ちを読み終えるのがもったいなく感じたほどでした。
読み終わったとき、ひとつの長編小説を読んだあとのような満
足感を覚えました。そして、頭の中に甦ってくるのは美しい波
のような光景。

この短篇集は、まぎれもなく、「物語を感じる」ことのできる
一冊です。


文句なし。

力強い作品だった。
よい短編というのは、もう少し読みたいと読者に思わすことができるものだが、この本に納められているほとんどがそんな話ばかりだった。
どれだけ上手い作家にしたって、ほぼ全ての作品でそんな風に思わせる短編集なんかかけやしない。
スティーブン・キングはストーリーテラーだし、ジョン・アーヴィングは長編巧者だ。
トルーマン・カポーティならいけたかもしれない。
ティム・オブライエンもいい線行っている。
だがその誰もが、処女作品として、そんなクオリティーの高いものを出版できていない。
エリザベス・ギルバートはそこがすごい。
実に稀有な短編集だ。
文句なし。

アメリカではエリザベス・義ルバートの三作目が既に出版されているようだ。
二作目は「スタン・マン」というタイトルの長編だ。
ぜひ早期翻訳・出版してほしい。


水の中の石のよう

以前、短編集というのはなぜか苦手で読むことをさけていました。
ジュンパ・ラヒリで短編の魅力に気づいたのですが、この短編集もとても魅力のあるお話の数々です。

誰もが人生を「こんなもんさ」って思っている部分と、諦めるのは嫌だと自分なりに努力していると思うのですが、その努力が他人からみると的外れでこっけいですらあることがあると思うのです。この小説にはたくさんのそういう「普通が可笑しい人」が描かれています。

私が気に入ったのは「デニー・ブラウン(15歳)の知らなかったこと」というお話です。

自分では自分の欠点がわかっていて「あ、また言っちゃった」とくよくよ悩んでいたとしても、他人からは気にしているようには思われず、人知れず悩んでるってよくありますよね。
人は他の人を「こんな人だ」とわかっているつもりでいたり、自分のことをわかっているつもりだったりするのですが、本当にそうなのかな?なんて考えさせられる作品たちです。

ひとつひとつが私の心という水の底に静かに沈んでいて、静かにその存在を主張している・・・そんな印象が残りました。

気持ちのいい読後感

ふわーっとした、あたたかい短編集。気持ちよく読んで、読んだあとも気持ちよかった。エリザベスって、いい作家だね。

ぼくは、いちばん最後の、いちばん短い話がすごく好きです。これは、ほんとに、ほのぼのといい話。短い話なので、ここで粗筋を紹介するわけにはいかないけど、ある女性に、この物語を語って聞かせたら、よろこんでくれました。そして話が終わった後、二人でニコニコ。


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ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)

リュドミラ ウリツカヤ 沼野 恭子 
ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)
定価:¥ 1,680
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不思議に読後感のいい小説

現代ロシアの女性作家の小説。

ソーネチカという女性の一生を淡々と描く。夫が自分の娘の友人とできてしまうのを受け入れてしまう彼女の生き方は、普通なら違和感を覚えるところだけど、彼女の筆力か、自然に読めてしまう。

不思議に読後感のいい作品。


人生は宝石のよう

ソーネチカは人間というもの、男というもの、女というものについて、またひとの一生について「そういうことがあるものかも」と、客観的視点にたって見ることが出来、その上で自分の人生途上に起こるさまざまな出来事を大きな財産にしてしまう稀有な女性。
このような女性を生み出したのはやはり、幼い頃からの読書ではないだろうか。読書はまさに精神の食べ物なのだと感じた。
そして、ソーネチカのような女性は今のせちがらい世の中でもいるだろうと思った。この作品が数々の賞を受賞していることはうなずける。
ウリツカヤ史の別の本も手にしてみたくなった。


買いです。

読後の印象が、いわゆる「名作」で、登場人物の名前からしてトルストイやツルゲーネフ、あらすじがゾラやモーパッサンを彷彿とさせます。レヴューにあらすじはネタばらしの反則のような気がするので割愛しますが、やれエンタメだ、やれホラーだ、やれメタフィクションだ(はないかもしれませんが)の昨今の趨勢をお嘆きの諸兄には、昔、読み耽った「名作」の現代仕様として(昔、読んだ「名作」ほどこってりはしていないので)楽しめること請け合いです。

ある女性の生に寄り添う作家の眼差し

リュドミラ・ウリツカヤのこの作品が、後世においても高い評価を受け、文学において高い位置を与えられることはないかもしれません。しかし、この作品を読み終えた読者の心の内には、静かではありながらも絶えることのない余韻が残ることでしょう。
貧しいソーネチカは、図書館に勤めていた際に知り合ったロベルトと結婚します。夫は芸術家で反体制活動家であるため、家族はソヴィエト国内を転々とし、貧しい生活を強いられます。しかしソーネチカは、書物、夫、娘に囲まれたその生活に幸福を見出します。いえ、「見出した」というのは正確な表現ではないでしょう。彼女の送る生活に、或いは彼女が送った可能性のある生活に、彼女は決して不幸という感情を抱くことはないでしょうから。
女性が何らかの権力によって蒙る受難がこの作品のテーマであると捕らえることは、不適切ではないでしょうか。貧困、夫の不実、ソヴィエトによる圧制、こういった要素が、彼女の感情に大きな影を落とすことも、彼女の感情を引き裂くこともありません。ソーネチカの沈黙を、彼女の人生に対する服従を非難することができるかもしれませんが、それはこの作品の描くところを曲解することではないでしょうか。作家はソーネチカの傍に寄り添って歩みを共にしており、読者はその少し後ろから彼女達を眺めやるのみです。
翻訳家の柴田元幸氏の書評が、この作品の魅力を的確に述べています。「・・・・・・とにかくそういう人(ソーネチカ)が作者の頭から生まれてしまったのであり、そうやって生れた人を、作者はただそういう人として描いた。人間を祝福する上で、これ以上正しいやり方があるだろうか」。


他人からどう思われようとソーネチカは幸せ?

本が大好きなソーネチカの一生の物語。
ソーネチカは、すごく幸せな事があればその現実を
「なんて幸せなんでしょう」と感謝して、
他人から見れば不幸な事がおきても
「こんな自分だから仕方ない」と納得してしまう。
誰かを何かを悪く言う事はない。ある意味自分を良くわかっている?
なかなか出来る事ではない。強い強い信念を持った女性なのかも。

普通なら不幸だと思えるエピソードは、普通の作家が書いたら
そこを突き詰めてしまいそうだけど、この作者はあっさり流して
しまっていて、 それがソーネチカその人の性格なんだろうなぁと
読んでいるこちら側もたんたんとその出来事を消化してしまう。

物語に入り込むというよりも、ソーネチカの家の窓から
ソーネチカの一生を垣間見たような気分にさせる物語。

文章も綺麗、物語の中の描写も綺麗なので星5つ。



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奇跡も語る者がいなければ (新潮クレスト・ブックス)

ジョン・マグレガー 真野 泰 
奇跡も語る者がいなければ (新潮クレスト・ブックス)
定価:¥ 2,310
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作者は人を愛してるんだろうな・・・ 

目を閉じてみて、どれだけ見えていたものを思い出せるだろう。想像できるだろう。
雑な捉え方に目が慣れてしまっているのだ。そんな中、この物語は、丁寧で、細やかで、美しい。
こんなにたくさんの人の、小さな感情の揺れや、不安や、優しさや、衝撃や、が書かれているのに、
不必要な描写がなにもないと思える。

長いけど、必読です!


本を愛している人へ

『小説を読むこと』と『映画を観ること』の違いということを良く思うんですが、
やはり小説には、小説の良さが、映画には映画の良さがあると思います。
読んでいて、映画にした方が良いと思える本は、あまり良い本ではないと思っていて、
物語の展開だけに、感動できるならば、映画で観たい。
小説には、それ以上の何かがないと、私は、とてもがっかりしてしまいます。

『奇跡も語るものがいなければ』
表紙と製本に惹かれて、パラパラとめくって目に付いた文が
独特で可愛かったので、購入しましたが、物語も、本当に素敵でした。

一文一文が、大切に創られたということが感じられるような、
その状況が分からなくても、解ってしまいたくなるような
きっとその表現は正しくて、私もそう思うんだろう、というような
説得力のような魅力があります。

あらすじでは、この本の魅力は伝わってこないし、
内容には少し省いても良い文があるんじゃないかと思ったり、
始めの数ページは、とにかく慣れるよう頑張って読まないといけないのかもしれませんが、
一人称で語られる場面がやはり好きで、彼女の内面と、恋愛には、すごく心を打たれました。

きっと、いろいろな思いを乗り越えた人だからこそ
書ける小説だと思う。

私はそうゆう人に魅力を感じる。

最後の方は、息が止まるほど、一瞬の重みを感じる。
そして、読み終えた後に、これまで語られてきた日常が、
すごいちからで生きてくる。

小説として、読む価値のある本だと私は思います。
本を愛している人なら、ずっと大切にしておきたい本になるんではないでしょうか。


ある瞬間のきっかけを拾い集めて

1枚の写真に映った景色は、その中だけに存在するのではない。
フレームからはみ出した部分にも物語は存在する。
ダイアナ元妃がなくなったあの日、
ある通りにはもうひとつの瞬間がおとずれていた。
その瞬間を思いがけず見てしまった人々と、
その瞬間の音を思いがけず耳にしてしまった人々にも、
やはり同じように、ある、進行する物語があった。
通りにすむ幾人もの人と、いくつもの出来事を主に結びつけるのは
ひとりの女の子。
新しい生命を宿している彼女は、その命の継続を、ようやく
決心したところだ。そして決意のきっかけになる人は
実は「彼女の過去」という写真にさりげなく登場していたのだが…。
ある出来事と出来事、ある人と人。
ひとつの結末に収束していく様々なものを、
もう一度ときほぐすかのように語られる物語。
写真の外にはみだした景色を、また映す人がいて
すべてをつなぎ合わせたように、これは、語られた物語。


優しくあたたかな天使の文体

最初は映画のようだと思った。夜の街をカメラが映している。細部から細部へととびながら、すべてを拾い上げようとするように。それから、これはカメラではなくて天使の目線なのだと思った。

人は、どの人物が中心で、どんな行動が重要か、という枠組みを決めて物語を語る。焦点があり、関心の集中と、周辺の切り捨て、編集された抑揚がある。

でも、天使の目は、すべての人のすべての動き、鳥の影や空の色、車の音、街の響き、人がいない部屋の静けさ、無音のままにそこに息づく生活の気配にも、同じように注がれる。何の重みづけもせず、やさしく、淡々と。

読み進むうち、その文体にふんわりと自分の波長が合って、すばらしい視界が広がる。あらゆるものが豊かな意味を持ち、あふれるように存在しているこの世界の、小さな一角の、わずかな時間の、無限の広がりが。

他の人に一生懸命読むことを勧めるような本ではない気がする。
ただ、自分が感じたあたたかな浮遊感を、忘れないようにしたい。
・・・と思っちゃう一冊。


羽毛のような肌触りのやさしくてかなしい小説

一人称、三人称を多用した文体。詩のような描写、文末表現。最初は読みにくいかもしれないけれど、知らず知らずのうちにしっとりとしっくりと心に波紋が広がっていくよう。1997年8月31日(ダイアナ元皇太子妃が交通事故で亡くなった日。作品との関連性はないけれど)のイギリスのある町のある通りに住む人々の生活が綴られる章と、そこの住人だったひとりの女の子の3年後の日々が交互に語られる構成となっている。本書にはささやかだけれど確かな奇跡がいくつか姿を見せる。登場人物のひとりが自分の娘に話しているのだが、奇跡はいたるところで芽生えている。ただそれを伝える者がいなければそれは奇跡とは言えないのだ、と。耳をすませてみてほしい。ほら。あなたの近くで奇跡の胎動が聞こえてきませんか。


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冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

アリステア・マクラウド 中野 恵津子 
冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)
定価:¥ 1,995
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素晴らしい短編

アリステスさんはかなりの寡作な方で31年で16篇の短編と1つの長編を出しているだけだそうです。

短編の舞台はほとんどどれも、カナダにある小さな島を舞台にしています。そしてそこに息づく自然と人間と動物、そして起源である先祖のハイランダー、スコットランドについてと、その言葉であるゲール語に重みを置いた小説です。「島」はアリステスさんの中でも完成度が高い短編だと思いますし、好きな話しです。北国の寒い環境と人間の業のようなものと歴史と起源などを織り交ぜた静かだけれど激しい(矛盾した表現なのですが、私にとってはまさに静かだけれど激しいとしか表現しようのない)素晴らしい小説でした。 何故か私にはガルシア=マルケスが思い出されるほどスケールが大きく(もちろん良い意味で)、それでいて小さなささやかなものにも温かみのあるまなざしを向けられているレイモンド・カーヴァーのような(もちろん良い意味です)愛着も感じられるのです。そして人間ではない生き物がどの短編にも重要な役割を与えられていて、動物好きな方にもオススメです。短編好きな方には是非。


好きな作品は表題作子供の頃の犬との思い出がよみがえる「冬の犬」、男と大きな灰色の犬をめぐる伝説「鳥が太陽を運んでくるように」、子供の頃に聞いた話しが不思議な重なりと光を当てられる「幻影」、燈台守としての一生を送ることの物語「島」です。


しかし中でも私個人が最も気になった、皮膚的にショックな作品は「完璧なる調和」です。無骨で不器用な男の孤独、それも手に入れた幸せを失ってからの孤独と、伝統と詩と歌声、それに関わる親戚とささやかな喜び。どの短編も非常に上手いですし、綺麗でスタイルもありますが、私にとってのこの「完全なる調和」は他のどの作品よりもずば抜けてよかったです。他の人がどう感じるかは分かりませんが、とてもショッキングな、忘れられない短編でした。



短編小説が好きな方、動物が出てくる物語が好き方に、オススメ致します。


息づかいが聞こえてきそう

8月の東京で冷房もない自分の部屋で読んでいたのですが、読んでいる間はうだる暑さを忘れました。本のタイトルになっている『冬の犬』なんて、まるっきり厳寒の中でのお話で、背筋が寒くなります。

短編集で犬をはじめ、羊、牛、馬といろいろな動物が出てくるのですが、まるでにおいをかげるほど近くにいるような感覚にとらわれるくらい、著者は彼らの生態を絶妙に描き出しています。

人の行動も含めて描写が生々しいのですが、読み終えると何かおとぎ話を読んだ後のようで、とても不思議な印象を持っています。

生き生きと、みずみずしい、けれど厳しい自然と現実

「赤毛のアンブーム」で観光客が増える前の、カナダ沿岸部。
生き生きとして、みずみずしい描写だけれど、
単なる、美しい自然への礼賛ではなくて、
そこに暮らす人々に試練を与える過酷な環境。
その厳しい寒さや孤独を舞台の上でリアルに描かれる、
人間と、動物たちの生と性。
大人も子供も、当たり前のように命と向かいあって生きている、
と紹介すると、文体やストーリーは無骨なイメージを
持たれるかもしれませんが、実に洗練された、趣味のよい世界です。


宝物のような作品集。

前作に続いて今回も良かった。ってこの作者の書くものを悪く言う人はいませんから、あらためて言うことでもないんですけどね。しかし、いい!マクラウドの描く世界は哀切に満ちて、叙情にあふれている。自然の厳しさ、家族の温かさ、時代の移り変わり、そして故郷を追われた流浪の民としての悲哀。ただ、そこで暮らしている人達を描いただけなのになぜこれほどドラマティックなんだろうと歯噛みしてしまいます。
朴訥で、頑固で、しかし情にあつく毎日を必死で生きている人達。我々が知ることのないもうひとつの世界。すぐそこにあるのに、あまりにも遠いその世界が厳しさを押しのけて、とてもうらやましく思えてきます。得がたい本ですね。ほんと宝物だ。


静かで激しい作品

とても静かなんですが、その静けさの中に激しい真実が垣間見えるっていうのかなぁ、なんかつくづくぼくは心配の少ない平穏な日常に埋没してるなぁと感じました。地球上には色んな場所があり、おんなじ家族を描くにしてもこれほどの隔たりがあるのかと。

生と死のイメージがあまりにも頻繁にあらわれ、だからこそ生命への力強いメッセージがびんびん伝わってきました。いつも灰色の雲に覆われて、ことあるごとに風雨にさらされている情景は、陰鬱で冷たい世界を象徴しています。でも、その中で毎日を真剣に生きている真っ当な人々のあまりにも厳しい生活が浮きぼりにされ、力強い生命力が強調されてるんですよね。
 この作品で描かれる家族は、ほとんどが子の目を通して見る親や祖父母の姿なんですよね。そういったものは、世界共通だからとても身近で一種の郷愁にも似たせつなさを呼び起こします。普遍的だといわれる所以でしょう。余韻が残るのはそのせいでしょうね。

 でも生活や風習はまったく違う。ぼくはこの本を読んでラテンアメリカに通じるマジックリアリズムの匂いも感じました。独自の文化が目新しく、そういった意味でもとても魅力的です。

 あまりにも身近な自然の脅威。その中で身につけて代々伝えられてきた風習、独自の文化。こういった世界が今生活している我々とはあまりにもかけ離れているため、新鮮な驚きを感じます


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ユーモアに満ちた小説

憂鬱症のペンギンと暮らす売れない短編小説家が、ひょんなことからまだ死んでない人の死亡記事を書きだしたことから、いろいろな出来事に巻き込まれていく話。

いくらロシアといってもペンギンをペットとして飼えるとは思わないが、そんなことが全然気にならないぐらい、不思議な物語。

淡々としていて、それでいて味のあるいい話。ロシアの話だから暗い話かと思ったら、むしろユーモアに満ちている。友人の死なんていう悲しい出来事も、あっさりと書かれている。でも主人公の心情がよく伝わってくる。とてもよかった。


南極の氷山のような世界

私たちの生活は、たとえば南極の氷山のようなものらしい。
水面に出ている一角だけでは、水面下の様子はわからない。

冴えない小説家ヴィクトルの生活は、ペンギンの訪れが直接の原因ではないにしろ、なにかしらの引き金となって、気がつけばものの価値やら感覚やらがどうしようもないほどに変わってしまう。
別に急に世界が変わってしまったわけではなくて、水面下にはいつもあった知らない世界が、自分の日常に侵食してくるのだ。

家の鍵は破られる、大金と少女が置いていかれる、発砲事件が相次ぐ・・・
まるでへたくそな冗談のような世界が、つつましくも平穏だった日常をのっとっていく。
そこにまた、閑話休題といったようにペンギンの描写が入ってきて、いい感じに話の腰を折る。

なぜペンギンなのか。こればっかりはわからない。
緊迫した場面で、ペンギンがぺたぺたと歩いている光景を想像すると、なんだか気が抜けてがっくりとなる。

もろい世界の上に生活するのは、人間もペンギンも同じらしい。
温暖化の影響が出ないことを、切に祈る。


著者はペンギンを飼っていません。

ソ連崩壊後のウクライナの首都キエフでのお話。憂鬱症のペンギンと暮らす売れない小説家が、政財界の大物が死ぬ前に、「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を依頼される。ホンワカした雰囲気ながら、不条理に満ちた長編小説です。「大統領の最後の恋」もお勧めです。

なんてったってミーシャが可愛い!

 皇帝ペンギンのミーシャとふたり(?)で暮らしている売れない短編作家ヴィクトルの奇妙な半年間の体験。ミステリーのようでもあるしユーモア小説のようでもあり、とても不思議な味わい。全世界で大ヒットしたのだそうで、さもありなんと思わせる内容です。

 ソ連崩壊後のマフィアが暗躍し政治も不透明な時代のウクライナが舞台で、普通だったら暗鬱な話になりそうなものですが、なぜか全体に飄々とした空気が流れています。凍った湖でペンギンとピクニックする冬、長雨の続く早春、マロニエの花が咲く春といったキエフの四季の移り変わりもいきいきと描かれていて映画を見ているような気分になってきました。


キエフとペンギンはよく似合う?

「売れない小説家とペンギン」
こんな取り合わせ自体が、ある意味反則。
とにかく冒頭からラストまで、魅力にあふれる小説だ。

主人公は、なんのためだかわからない原稿書きを依頼され、あまりよく知りもしない人の娘を預かり、そのベビーシッターに雇った女の子と、それとペンギンとの不思議な共同生活を送る。
その生活の描写は魅力的で、特にペンギンと女の子とのやりとりはほほえましい。

これだけでもこの小説の価値は十分じゃないかと思うのだが、その一方で主人公の知らないところで(読者にもよくわからない)奇妙な出来事が同時進行していく。
だが、ミステリアスではあるが、重苦しさはない。
従来のロシア文学のイメージとは、だいぶ違う。

ソ連崩壊後の先行き不透明な雰囲気の立ち込めるキエフと、無言で廊下をぺたぺたと徘徊するペンギンの取り合わせが、妙に印象的だ。



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