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きりひと讃歌 (1) (小学館文庫)

手塚 治虫 
きりひと讃歌 (1) (小学館文庫)
定価:¥ 590
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人間の愛と良心と醜悪なエゴ(名誉・権力・出世欲、性欲、金欲、支配欲)を時にキリスト(教)に照らしながら描いた傑作

この第一巻で舞台はM大医学部から、徳島、イスラエル、台湾と本書の世界観と同様に広大なスケールで展開されます。各キャラクターが各々の役割を担う中で、読者に人間の良心とは愛とは何であるか、また人間が併せ持つ醜悪なエゴの問題を問いかけてきます。

主人公の医者であり身体が犬のように変形してしまう奇病モンモウ病に苦しみ抜く小山内桐人(きりひと=キリスト)が葛藤を抱えた良心の人。婚約者のいずみや徳島で知り合う「いづ」が愛の人。同僚の占部はエゴと良心で苦しむ読者を代表する存在であり、医長は権力・名誉欲に取り付かれた悪魔的な人間として登場しますが、真に優れた文学作品にも劣らない優れたアート(芸術)だと思います。


人間が故の愚かさ、もどかしさ…医学界編

本作はモンモウ病という架空の奇病を通じて人間の苦悩と希望を描いた傑作である。人間の苦悩と希望は後期の手塚治虫の大きなテーマであったに違いない。

本作は「白い巨塔」の影響がうかがえる。白い巨塔で描かれる医学界は人間の愚かさの代表的なものだろう。主人公である小山内桐人(きりひと)はこういった人間の暗い部分に翻弄され、苦しみ続ける。

主人公だけではない、ここに登場する人物は多かれ少なかれ苦しんでいる。同僚の占部や奇術師の麗花だけではなく、竜ヶ浦教授ですら。桐人は希望をもたらす事ができるか?

大好きな一作

確か、高校生の時に初めて読んだ作品です。それから、大学に入り、専門教育(法学)を受け、しばし、サラリーマン生活をして、労働を通じて実社会を覗く経験をして、読み返してみると、この作家の凄みが分かります。

数年の時を得て、読み返し、まったく別の角度から読める作品というのはあまり多くはないと思います。そういう本こそ「古典」という名前をもつにふさわしいのでしょう。
 

作者が、大阪大学医学部を卒業された医者、正統な専門教育の洗礼を受けたすぐれた自然科学者であるという面は、ストーリーにおけるリアリスティックな事実描写において現れ、その事実描写のなかで現れる登場人物を眺める視点において、何が正解で、何が間違っているのかがわからない領域に、なんらかのドグマや解答を設定しようとするセンスのある宗教家としての面が顔を出します。

日本のクリエーター一般において、日本社会について、自然科学者と宗教家の両面をもって作品を作れる人はあまりいなかったと思います。

読了後の感動は保証します!

ある年代の日本人にとって、手塚治虫から影響を受けなかったということはあり得ない。ビートルズと同じ時代に生きて「イエスタディ」を聴いたことがない、ということが不可能なように。私もまた手塚治虫には大きな影響を受けたし、感謝の意味を込めて(?)どうしても彼について何か書きたいと思った。それで私の選んだ手塚作品の一押しが、この「きりひと讃歌」。スケールは実に雄大。「火の鳥」のように時間を超えることはないが、空間的には地球上の様々な場所を舞台にし、登場人物も実に多彩。全編に手塚ヒューマニズムが溢れている。読了後の感動は保証します!

私は手塚作品をすべて読んではいないし、もしかすると代表作とされるものの中にも見落としがあるかもしれない。だから手塚のいい読者とは言えないが、もしあなたがまだこれを読んだことがないなら、是非ともオススメしたい。手塚がどこかのインタビュー記事の中でこの作品に触れ、自身かなり高い評価を与えていたと記憶している。本人にとっても会心の作だったのだと知り、妙に嬉しかったことを覚えている


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きりひと讃歌 (3) (小学館文庫)

手塚 治虫 
きりひと讃歌 (3) (小学館文庫)
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人間の愛と良心と醜悪なエゴを時にキリスト(教)に照らしながら描いた傑作の最終章(希望編)

醜悪なエゴで人に苦悩を与える存在であった、医長、台湾の闇の権力者、曲芸師の麗花、主人公桐人の同僚であり幼いころからの友人である医師占部は醜悪なまま、或は良心を取り戻したり、良心による呵責に苦しみながらその役割を終えます。

そして桐人とイスラエルの修道女だったヘレンは身体が犬に変形する奇病モンモウ病を抱えながらも従来からの人としての良心に加えて悟りの境地とも言える精神的な強さを身につけ、それぞれの新しい人生を歩み始める中、最後に桐人にはいずみという希望が、ヘレンには新たな生命という希望がその苦難の道に光明を照らしてくれます。

人間とは存在悪として戦争を行ったり、自身のエゴの為に他人を苦しめる醜悪な存在であることを手塚さんは自身の戦争体験等を通して深く知悉しがら、それでもやはり桐人(きりひと=キリスト)やヘレンが持つ人間の良心や愛を信じて希望という形でこの壮大な物語を終えられたのだと思います。多くの人に読んで頂きたい優れた古典文学にも匹敵する作品です。


典型的な手塚作品

手塚氏得意の医学をテーマとし、人物構成も「MW」「アドルフに告ぐ」に似た人物構成で、手塚劇画ファンとしては納得の作品です。
ただ私の年代では、書かれた時代背景が共感を得られない。権威をふりかざし私欲をむさぼる医学界や全共闘運動の話はまったく実感がわきませんでした。

私はこの作品では、「差別」「人間蔑視」を重要なテーマとして読みました。人種差別、病人への蔑視、人間と見られない人たちへの蔑視、それをストーリーに巧みに含んでいます。

これを受けて、巻末で「人種差別と思える表現がある」ということでお詫びが挿入されている。未だにこのような批判をする人がいるということに疑問を抱きつつ、現在未だに差別や蔑視が横行する世の中であることに悲しみを覚えます。

人間はなぜ人間か

モンモウ病という奇病にかかった人を救おうとする、青年医師。あまりにも日本的な組織が、正義を阻む。猛烈な勢いと巧みな構成力で攻める。手塚治虫の得意なジャンル医学がテーマ。


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きりひと讃歌 (2) (小学館文庫)

手塚 治虫 
きりひと讃歌 (2) (小学館文庫)
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リアルです

手塚治虫=アトム、というイメージの方にぜひ読んでいただきたい作品です。どろどろしていてリアルすぎる! 人間の描写だけで背筋が凍りつく思いがします。最高。恐怖が奇子ファンにもおすすめです。


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人間昆虫記 (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

手塚 治虫 
人間昆虫記 (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)
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こんな作品知らなかった

手塚作品にこんなのがあったとは知りませんでした。女の壮絶なサガを描いているのですが、これが後の作品「火の鳥」へ通ずるのだそうです。人間の本質に迫る一冊はいかがですか?

漫画家No1

この人は他の漫画家とは一線を画している。
量も質もすばらしい。アナーキー(あらゆる作品が生み出された当時を考えれば)な所も大好きだ。
手塚治虫の作品はほぼハズレなしなのでいいモノをあげればキリがない。これは手塚治虫中編の中では私的ベスト5に入ります。
主人公の切なさが伝わってくるいい作品だと思います。
何か人生ってちっぽけで切なくて空しいモンだな~。

他、MW、奇子、シュマリ辺りが中編ではかなりおもしろい。

火の鳥、ブラックジャック、ブッタ、ばるぼら、IL、地球を呑む、はるかなる星、アポロの歌、空気の底、クレーター、鉄の旋律、時計仕掛けのリンゴ、アラバスター・・・・・ホントにあげるとキリがない。

残酷な女心を斬る巨匠手塚の野心作!

1970、71年にプレイコミックに連載された、残酷な女の心理を描く巨匠手塚治虫の野心作の文庫版。その昆虫にも似たメタモルフォーゼで、他人を利用しあらゆる分野で成功していくヒロイン十村十枝子の残酷でしたたかな生き方、むなしさを描いている。手塚大ファンのわたしだが、この作品の読後感は満足にはほど遠いものがあった。もちろん絵は素晴らしい。キャラクターも十分魅力がある。しかし、女ヒロイン十枝子の残酷さ、裏切りがあまりに無機的で、そしてまた彼女の行動を裏付ける動機が説明されていなかったのも問題だった。とはいえ、手塚が70年代初頭という変革の時代の波にあって、いままでの勧善懲悪的キャラクターから離れた異色キャラクターを描いたというところに読む価値は十分であるのだが。


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MW(ムウ) (2) (小学館文庫)

手塚 治虫 
MW(ムウ) (2) (小学館文庫)
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流石!!!

いやーーー・・・
ラストは言葉にならないです。
本当に漫画の神様ですねえ手塚先生は。

主人公は最近の漫画で言うと
デスノートのライトみたいな人です。

なんとなくデスノートを思い出した作品でした。
ずっと前の作品ですけどww
そのくらい古さを感じさせない作品です。


二度と忘れられない

最後の最後で、ニヤリ、ですか…。しかしこれ、本当に三知夫なんでしょうか。もしこれが兄の方だったら?あんなにそっくりに描かれていて、最後の争いで撃たれ死んだのは本当に三知夫の方と断定できるのか?…と、私は思っているんですが、どうでしょう。もしあのニヤリが兄だったら…ヤバいでしょう。MWの「せいで」人格に異常を来したという点だけがマシだったのに、元来ストレートに異常な人物が最後に生きてしまう事になるから…いや?むしろ人格異常は実はMWのせいではなく遺伝で…?。…まあ、考えすぎは承知なんですが。でも私は次なる悪の登場をどうしても考えてしまうんですよ。戯れ言ですがね。 『悪魔も神さまも結局同じものなんじゃないかしら?』…そう、人間は、人間が造ります。戦争も、毒ガスも、罪も、そして愛も。善も悪も全て同じ、人間が産み出しているんです。悪魔とは?神とは?いくら偽善を装ったって、いくら悪を重ねたって、答えは同じ、人間だ、とだけ、手塚さんはここに答えてくれます。 見つめる、という事。できていますか。目を背けたい人にほど、この本がバイブルになるでしょう。

この本が手塚作品の代表作であるかどうか

手塚治虫という人が、一筋縄ではいかない人なんだと実感させられる、大人向けの代表作品であると思う。
いろんな意味で、非常に怖く、また現代的である。
手塚作品には、サイエンスフィクション的に未来を予測したものが多いが、社会・風俗という方面でも未来を見通したものが少なくない。
そして今、手塚の見通した「未来」に生きる我々は、その多くが、手塚の予測通りに実現していることを知っている。その中には、実現して欲しくない未来も含まれている。
この作品に込められた、荒廃した人間像、退廃の宗教観、好戦的な人類像など、いずれも実現して欲しくない未来だった気がする。

どうしても、人に潜む心の恐ろしさを(わかっているんだけど)、こうも赤裸々に描かれたくなく。。。多分文字ベースの小説文学なら許容できても、想像を拒む「絵」である漫画では、人の心の恐ろしさもダイレクトに描かれるようで。。。
僕はちょっとしんどかったなぁ。
しかしとにかく、すごい人だと思う。手塚治虫という人は。 


人間の存在悪を曝け出した非凡なる漫画という形のアート

現在開催中の江戸東京博物館の手塚治虫展で、その内容紹介に惹かれて購入しました。1928年生まれの手塚さんは第2次世界大戦を経験していますが、手塚治虫展の本に収められたインタビュー記事で宮崎駿さんは「空襲や戦争を経験した者は、存在の奥に黒い穴みたいなものが開いているんです。自分ではどうしようもないもの。手塚さんも持っていたはず」と語っており、その「黒い穴」が手塚さんにこの漫画を書かせたのだと思います。

優れた小説、クラシック音楽、絵画にここ数年触れてきましたが、医学部を卒業し、小説や音楽にも造詣が深かった手塚さんのこの作品は、戦争という悪から離れて生きられない人間の存在悪を、かつては無垢なる存在だった主人公の結城の悪行をもって、これでもかこれでもかと曝け出し、結城と身も心も深い関係にある神父の視点を通して我々読者がこの根源的な問題に悩む仕掛けが施されています。優れた文学作品にも劣らない、人間の根源的な問題に肉薄した非凡なるアート(芸術)だと思います。


想像よりも

読後の私見。
手塚治虫の最大の問題作なんてことを伝え聞いたので早速読んでみた。
主人公は幼少の頃微量の毒ガスの影響を受ける。
自己中心的・嘘つき・冷淡・無責任・攻撃的、
退屈しやすくいつも刺激を求める・衝動的で抑制ができない、
いわゆるサイコパスである。
その主人公の暴走を止めようとする神父。
内容は思っていたより平凡で退屈だ。
発表当時は問題作だったかもしれないが、
今の時代刺激的なニュースや事件などのリアル、
映画や小説・漫画・アニメなどのバーチャル、
その双方になれている現代人にとってはそれほど問題作とは感じなかった。
むしろ手塚さんらしさを感じた。
最後のオチもありがちな感じでした。



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MW(ムウ) (1) (小学館文庫)

手塚 治虫 
MW(ムウ) (1) (小学館文庫)
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主人公のキャラクター

主人公の結城は、手塚作品でも屈指のキャラクターです。
倒錯した色気と、強い意志を持ち、
欲望という面で、非常に人間的で素直で、男性的であり女性的。
切れ者だし、狡猾だけど、賀来に対しては幼さと表現してもよいほど愛情を抱いています。
話題性のためのホモセクシュアルではなく、
二人が男同士だからこそ成り立つストーリーだと思います。
もちろん、退廃的でけしからん作品ですが、私は大好きです。
道徳や理屈を当てはめて語るよりも、直感的に楽しんだ方が良い作品ではないでしょうか。
そういう意味で人を選ぶかもしれません。

あぁ、結城さんったら!


手塚さんは怖いなぁ。。。話題になって事をきっかけに

よく考えてみたら、手塚漫画の中で、数少ない未読の作品な気がして手に取った。まだ、上だけしか読んでいませんが。
この時点で、非常に面白いのは事実ですね。
とともに、手塚が、鉄腕アトムの表面的な娯楽性だけから、単に子供向けの漫画家と思っているのは大間違いだ、と言うことを再認識させられます。
単純に面白いとは言い難いです。むしろ、ロシア文学や中世のイギリス小説に通じる人間のドグマの宿命を感じます。あるいは安部公房の世界か。

正直、<下>のストーリと結末は知りません(ある種の予感と、予断を持って読んでいくことになりますが)。
どう転ぶにしろ、破局しか見えない中、決してうきうきした気分とは程遠い感覚で、しかし、読まねばならんな、と言うような、どこか悲壮な気分で。。。
さて、下を読むことにしましょう。


むぅ〜(@_@;)

手塚治虫最大の問題作といわれるゆえんは同性愛、戦争、政治、金、宗教、マスコミ、日米関係etc…
わりかしタブー扱いされているものをとりいれてあるところだと思う。
ただ、広く浅く感は否めない。そんな中でも会社での日常、工藤探偵事務所的なデカ、神父の葛藤、女性の想いの描写、時折出てくる美しい自然など含めるとやっぱ面白いってなる。
まあ何と言っても絶対的神は美知雄であり、悪のヒーローである。この漫画では。だから最後の結末は至極当然であるといえる。
個人的にはアドルフの方がガツンときました。
でも星五つなんだな。


最後の結末は鳥肌が立った…

色んな人のMWの感想を読んで興味が沸いたので、購入しました。
沢山の感想を読んだ後に購入したのでワクワク感は期待出来ないかな…と思っていたのですが、さすが手塚治虫。
最後まで引き込まれてしまいました。
読んでいる内はそんなに気が重くはならなかったけど、全て読み終わった後、話の重さと凄さにただただ呆然としました。
今考えてみると、P276のあの台詞…。
人数から考えても…子供達が言う訳無いし…。
背筋が凍りました。今思い出してもゾッとします。
美知夫の狂人っぷりには最後まで驚かされました。
気分は悪くなるかもですが、オススメです。
多分一生記憶に残る作品になるかと思います。


手塚版コインロッカーベイビーズ

村上龍の作品の中で自分の一番好きな「コインロッカーベイビーズ」と非常によく似た設定なのは、米軍による毒ガス隠匿事件によって、同じ戦争被害者の視点で見ていたベトナムに対して、一転して日本人が加害者となったことによる道徳的痛みを表現した結果なのだろう。その表現には性格が真反対で兄弟のような2人の男がぴったりだったということなのだろう。
こんな深刻な話を軽々とエンターテイメントに変える手塚、村上両氏の創作力にはただ圧倒されるだけだ。

大人の怪しい実験室



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鉄の旋律―The best 3 stories by Osamu Tezuka (秋田文庫)

手塚 治虫 
鉄の旋律―The best 3 stories by Osamu Tezuka (秋田文庫)
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鉄の義手、鉄の意思(憎しみ)、鉄の掟、そして鉄の潜在意識。

 人間はどうやっても自分の潜在意識に嘘をつくことは出来ない。それは鉄のように揺るぐことはない。

 留学青年エディに妹アリサを嫁がせることを承諾した青年、壇タクヤ。

ところが、エディはイタリア系マフィアの御曹司で、暗殺事件の証言をした為に、タクヤは彼と彼のファミリーに“落とし前”として腕を切断されてしまう。

拓也は偶然知り合ったバディの紹介で、ESPを研究するユダヤ人教授に能力を開花させられ、ESPで動かす義手で復讐を開始する。

 一見、完全に自分の意思でコントロールできるかに見えた義手が、寝ている間など無意識下で行動して殺人を犯し、主人公を予想外に追い詰めていく恐怖。

 一方で、イタリア系のアメリカ社会での立ち位置をエディに語らせ、日本人妻にしか虚勢を張れず(今でいう、国際離婚の原因のルーツか)、組織の堅い結束の中でしか生きられない屈折した苦悩も描かれる。

 結果的に、アリサの説得で呼び出されタクヤは撃たれ、妹も裏切り者として撃たれ、エディは自らの部下を射殺したところで日本の警察に確保される。

しかし、タクヤの精神に鼓動し、後ろから迫る義手から察するに、この後、現場にはエディの部下を除いて少なくとも3人の死体が転がっていただろう。

「俺はエディが憎い。刑事さんっあんたも憎い。何よりもこんなとこで挫折する俺が心底憎い!」

自分はタクヤの行動に大いに賛成だが、憎しみの是非は読んでご判断を。


ブッタとは対照的な作品

友人の裏切りにより両腕を失った主人公は
己の意のままに操ることができる義手を手に入れて、
復讐の狂気へとのめり込んでいく。

その狂気はやがて義手に乗り移り、
主人公の意思に関わらず、彼の復讐心、
狂気そのものとなっていく。
その矛先はやがて、
悲劇的な結末から己を憎む主人公自身にも向かう

人が誰しも持つ憎しみという負の感情
それが自分自身をも破滅に導くことを
端的に表した作品です。

だから善人になりましょうというのではなく、
人は自己破滅的な部分をどこかに内在している存在
なのだということを表現していると考えます。

そういう意味でブッタとは対照的な作品でした。


苦しみと哀しみ

このマンガ集では人間の残酷さが描かれています。表題にもなった作品では復讐心の空しさ、哀しさが訴えられています。俗に「人を呪わば穴二つ」(呪われた相手と、呪った自分と両方が墓穴に入ることになる)と言いますが、そのことをビジュアルに表現した佳作でしょう。とても哀切な作品です。その他二編でも、人の残酷さ、憎悪心が描かれています。単にショッキングなアクションマンガで終わらせずに、読後に自分の心の内にも巣食う闇に気付かされるのは、手塚治虫氏ならではのことだと思います。

復習の最後には

復習の輪廻というか人間の負のエネルギーというかそういったものをあ使ったものだとおもいますが、そんな事を考えなくても自分では十分に面白い作品だとおもいます。

ある男が復習のためにPK(超能力)をならい、なくなった自分の腕のかわりに義手を自由にうごかせるようになったが・・・ ラストの一こまには戦慄が走る。


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ばるぼら (上) (角川文庫)

手塚 治虫 
ばるぼら (上) (角川文庫)
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手塚はヒューマニストか

事物に対する氏の、表層的で短絡的な捉えかたが、よく現われている作品。
ばるぼら、暑苦しいくらい「女」にしか見えないのに、少年のようと形容しているのにも苦笑い。これ見よがしにヴェルレーヌを諳んじるし。

ポルノの翻訳で食っている男の元に若い魅力的な女が転がり込んで奇妙な関係を築く、出口裕弘「京子変幻」のたちの悪い焼き直しに見える。こちらは本当に美少年が出てきますよ。


芸術と狂気の狭間を描く手塚治虫の名作

他のレビューで、この作品の主人公「美倉洋介」を「売れない作家」と書いていらっしゃる方がいますが、そうではありません。美倉洋介はこの物語の巻頭で、すでに耽美(たんび)小説家として文壇にユニークな地位を築いている「売れている」作家として設定されています。
その今まさに「売れている」作家である美倉洋介が、「ばるぼら」という名のフーテン娘を東京・新宿駅で拾って自宅に連れ帰り、そこから奇妙な二人の同棲生活が始まります。そして、手塚治虫は、この二人の奇怪な生活の顛末を描きつつ、芸術とはそもそも何か、芸術家を創作活動へと突き動かすエネルギーの源とは果たして何なのか(それは人が"狂気"と呼ぶものなのか?)、という問いに対し、自分なりの答えを提示し、世に問いかけたように、私には思われます。手塚治虫はこの「ばるぼら」を書きながら、自身の作品の「芸術性」や、漫画家として生きる自分の内面、特に漫画界の第一人者としての自負と、創作上のジレンマやスランプがもたらす内面の葛藤を強く意識していたのではないでしょうか。
不条理と怪奇に満ちたストーリー展開は、数ある手塚作品の中でも第一級のもの。文句なく5つ星としたいと思います。


奇々怪々

これに出てくる登場人物は「オマエラ何しとんじゃい!」と何度もツッコミを入れたくなります。彼らは安住を恐れ自らを破滅に向かわしめていきます。何故か最初は異常に見えたバルボラが最後は段々まともに見えてきます。逆に最初はまともに見えた美倉が荒唐無稽で狂人の姿をあらわにします。

手塚作品の中ではいちばんリアルかもしれない女

 手塚治の物語の中の女性キャラクターはだいたいみんな記号のように面白くなくて似通っていると思ってきましたが、ばるぼらだけは、コマとコマのあいだにちょっと血肉を感じます。それだけでも手塚作品中、いちばん好きな女性登場人物です。前半は読んでいて嬉しくなるほどです。「ピノコ」、「火の鳥」、「ボク(サファイア)」。――そのいずれでもない、勝手な女が、ばるぼらです。男性がばるぼらに対して覚えるかもしれない「気持悪さ」と、女性が手塚治作品の他の女性キャラクターに対して感じている「気持悪さ」は、相当異質のものだと思うけれど、そんなことも含めて、「神様」の膨大な遺作の中でも、ちょっと特異な位置を占める作品でしょう。

ヴェルレーヌを口ずさむホームレス女は芸術の女神の末娘か

これは手塚治虫のいびつな自伝かもしれない・・・あったことではなく、あったら恐ろしいこと、しかしどこかであって欲しいと願っていたこと・・・そんな架空の、それとも潜在意識の自伝。
恐ろしいけども、惹かれてしまう、もし彼女との出会いで自分の創ったものが芸術として残るなら、たとえ全てを犠牲にしても、彼女を求める心は抑えがたく彼女とともに堕ちたいと「マンガの神様」ですら思ったのだろうか。
「マンガの神様」が求めた「芸術の女神」、見てみたくはありませんか。



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アラバスター (2) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

手塚 治虫 
アラバスター (2) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)
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狂った男と、純真な少女の悲しい結末。

深い悲しみの果てに悪に目覚めた亜美。彼女を慕うゲンと、亜美の兄カニ平の愛は、果たしてアラバスターの手から彼女を救い出す事ができるのか…。
狂気の男アラバスターの結末はどうなるのか。前巻を購入した人は読まずにはいられないでしょう。
重い話でも平気な人は是非。



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ばるぼら (下) (角川文庫)

手塚 治虫 
ばるぼら (下) (角川文庫)
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魔性の女 ばるぼら

ばるぼらはある意味作中で‘悪女’として描かれているが、無邪気で大酒飲みでなんだか憎めないキャラクターである。
一人称も「俺」と、かなり豪快だ。
登場人物の美倉は、三島由紀夫をモデルにしているそうで、その経緯も手塚治虫の人物像がうかがえる。


うーん。

手塚のピカレスクは「さるたひこ」像を除けばどれも今ひとつだ。作家の批評眼が問われる故だろう。

ブラックジャックで大学の医局を批判するほどには関心を払わなかった手塚。社会や政治批判に冷淡だったことが、端的にあらわれている作品だ。
悪女を素材にした「人間昆虫記」「奇子」「ばるぼら」…どれも後味が悪い。「MW」や「人間昆虫記」(尻切れトンボに終わるが)は優れた演出家の手にかかれば面白くなりそうな素材ではある。「MW」がマシなのは深読みすれば政治への皮肉があるからだ。

「ばるぼら」では反政府活動に身を捧げ、ばるぼらに去られたために創作できなくなった作家が出てくる。ばるぼらの母は冷然と政治などにうつつを抜かすからだと言い放つ。文脈からして手塚のホンネだ。ちょっと待てよと言う感じ。大いなる力への抵抗も立派な動機ではないか。でなければロシア文学は生まれなかった(罪と罰の漫画化は大島弓子の方が興味深かったのを思い出す)。本気で社会を変えるつもりの無い、デモンストレーションが目的化しているある種の左翼が論外としても、それはそれとして批判すべきだろう。

手塚の悪女が私にはちっとも魅力的でない。ばるぼらはその最たるものだった。
先ず、匂いもしそうなむちむちした女なのに、やたら少年のようだと形容する。これ見よがしにヴェルレーヌを諳んじさせる。ランボーとでも言いたいのか?

出口裕弘の小説「京子変幻」の影響で描いたものではないだろうか。設定がとても似ているのだ。小説は耽美といっていいのだろうが、決してじめじめしてはおらず、軽やかで、香気ある文章だ。併読をお奨めする。




理想の女性

人間は理想や非現実的なものを(ロマン)を求めるものだと思います。芸術家はそのロマンの部分を形にして、受け手はそれに共感したり、感銘を受けたりする。

ばるぼらは創造者のロマンを引き出す女性で、彼女にあった芸術家・作家は彼女が居ないと創作ができないとまで思ってしまう。酒飲みで放浪癖のある現実的には最悪の女性、でも創造者には最高の女性。なぜか読者としてもばるぼらの魅力に引き込まれてしまいます。

手塚氏も創造者であったため、理想の女性を描いたのでしょうか。邪推かもしれませんが、手塚自身が創作に対するジレンマを感じたときに描いた作品のような気がします。
手塚作品の中でも私小説的な意味を含む作品のような気がします。



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