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沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

山崎 豊子 
沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)
定価:¥ 700
新品最安価格:¥ 700
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多くの悪と、わずかな光

山崎豊子氏による、実在航空会社をモチーフにした、限りなくノンフィクションに近いフィクション。
「アフリカ編」「御巣鷹山編」をバックボーンとした完結編。
本作は、国民航空の再建を担う新会長国見とそれをサポートする主人公恩地による、腐敗への戦いを描く。

大企業を蝕む腐敗の根は深く、国民航空OBをはじめ、政財界の黒幕たちにまでも翻弄される国見と恩地。
企業再建の基礎となる絶対安全の確立、組合統合への道のりは、遥か遠い。
はっきり言って、悪いやつが多すぎる。逆風が強すぎる。
しかしそんな中でも和光や志方のような、志を同じくする者達がいるのが救いである。
長かった本作も、終盤でわずかな光明が見えたような気がした。

10月には映画も公開される。
恩地役の渡辺謙は、ハマリ役かもしれない。
是非観て確かめたいと思う。


ちょっと毛色が違うような

よく3巻は毛色が違うとありますが、4巻も前3巻とも毛色が違うような気がします。
主人公はいったん影を潜め、脇役たちの横領や悪事の流れなどが説明されていて一種、告発本のような内容になっているような・・・
これはこれで、航空会社や業界の狡さ等が見えていいと思いますが
退屈な人には退屈な内容になっているのかもしれません。
けどこれを読むと全5巻を通して、筆者が訴えたいことの全容が見えてくるような気がします。
ただ、1,2巻は小説、3巻はドキュメンタリー、4巻は告発本みたいになっているように思えますので
本の性質がコロコロ変わっているように思えるので人によってはつらいのかも。
けど、だからこそ全巻通して言いたいことがあるように思えます。


国民不在の国民航空

会長室編では、御巣鷹山の墜落事故後、組織の建て直しを図るため
首相に請われて国民航空の会長に就任した国見正之を中心として
物語が展開する。恩地は新設された会長室の部長に抜擢される。

国見会長は建て直しの手始めとして分裂している組合の統合を目指す。
整備士や機長など各部門から会社の現状について意見を聞くのだが、
その中で、「自分達の理想像」を熱く語る者はいても、「お客様にとって
の理想像」を語る者はいない。

一例を挙げれば、ある機長が、「昨年ソウルで着陸復行をした際、乗り
合わせた大蔵大臣から機長のアナウンスが無かったと指摘された為、
オペレーション・マニュアルがアナウンスをするように改定された。
しかし、安全上、課業順位最下位とも言えるアナウンスを、神経を最も
使う着陸復行、最進入の途中で課すなど考えられない。このように我々
の立場にたって考えてくれない職制である」と憤る。

この機長は、自分達が乗せているのが荷物だとでも思っているのだろうか。
乗客の立場にたって考えてみれば、アナウンスも無く着陸復行をされたら
不安を感じるのは当然である。機長が忙しければパーサーがアナウンス
すれば良いだけの話ではないだろうか。

このように、この会社の社員はお客様の立場にたって考えるという意識
が欠落しているのである。まるで社会主義国の航空会社のようだ。
上層部の腐敗や癒着などより、社員のこのような考え方の方が利用者
としては怖い。まさに国民不在の国民航空である。

この航空会社を国民航空と名付けたのは、作者である山崎氏の痛烈な
皮肉なのではないだろうか。


著者会心の傑作!

企業の利益優先と人間性の欠如は現在も多くの人命を奪っている。
JR脱線事故、安曇野の観光バス事故、多くの長距離トラックの事故など上げたら数限りなく出てくると思う。
20年前に警鐘とも言える事故を経験しながら、この国はどうなって行くのかと不安になる。

刑罰的人事を描いた1―2巻での企業の腐敗、人道の欠如は520人を人柱にする大事故に発展した。
著者は見事な取材で、3巻にあの忘れてはならない未曾有の大事故を立体的に描ききり、当時報道されきれていなかった事実をも描いている。
この4巻では、うわべだけの謝罪をすませ、のうのうと私欲をむさぼる、役人的特殊法人と言う”お役所”と改革に立ち上がる人々の戦いが始まった。

この巻では個人的に組合活動をささえる家族たちに頭が下がり、事故現場に一周忌に集まった遺族たちの叫びに涙した。
人が良心を取り返し、金銭意外に人生の目標を持たなければ、事故の本当の解決は遠いのではと思う

この事件を知らない若い世代の方にも是非読んでいただきたい作品であり、その際”クライマ−ズハ-横山秀夫”も一緒にお読みいただけましたら、この事件の社会的影響がより理解できるはずです




こんなことが日本社会で行なわれていたとは・・・

ここまで日本社会が腐っているのかとまざまざみせつけられたことはない。
この話ははるか昔のことだが、いまだに同じようなことが行われていて、
特殊法人を民営化するのに断固として反対する族議員や、
公共事業の利権をむさぼる政治家・官僚・企業の実態をみるにつけ、
ほんと日本はどうしようもない腐敗に満ちた社会なのだということを、絶望的に思い知らされる。

ただ最後に社員の告発によって、その腐敗の一端が暴かれるものの、
それを突き詰めていくと、前総理大臣の金稼ぎにまで及んでしまうことを考えると、
捜査が進んだところで、いかようにも圧力をかけ、腐敗を闇に葬ってしまうことができることを考えると、
日本社会に正義はないのかとまたも絶望感を覚える。

この本を政治家・官僚・企業は読んで悔い改めるべきだと思う。



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沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

山崎 豊子 
沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)
定価:¥ 620
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クチコミ情報

ノンフィクションとして読むのは間違いだと思います。

他の方もレビューで書かれていますが、
筆者も言っているようにこの小説は新しいタイプの小説だと思います。
事実を基にしているが、ノンフィクションではないという。

主人公や国見会長が絶対的な正義として書かれていますが
このような清廉潔白な人間はまずいないので、
これを実在の人物と≒で結び付けてしまわないように注意が必要と思います。
(主人公に関しては、自分のエゴの為に家族をまったく省みないので清廉潔白とは言いがたいですが)

ただし、筆者がこのような描写をしたのは、おそらく国と天下り企業の癒着や
裏工作など社会の闇をわかりやすく表現したかったからではないかと思います。
読んでいて公務員体質という点では非常に納得できる部分が多かったです。

官公庁と仕事をする機会があるのでわかるのですが
民間では考えられないほどに非効率的に組織が運営されていますし
小説内で「親方日の丸」の国民航空経営陣の発想も「さもあらん」という感じで
大変納得が出来ました。

正直言うと、半公務員として運営されていた企業が
いわゆる民間企業になっただけで、公務員体質から抜け出せたとは思えませんし、
この本を読むとモデルとなった航空会社には怖くて乗れないと思います。

今まで何度か映画化の話が流れてきたのも理解できます。
反面、今年公開される映画の内容がどの程度小説に忠実に再現されているかで
航空会社や国がどの程度圧力をかけているのかわかりますし、
その内容如何では、どの程度「公務員」から脱却できてきたのか
ある意味バロメータになるのではないでしょうか。


いよいよ大団円(?)

これだけ大部な小説を読み切ってもさほどの「達成感」は無かったのが不思議。
それだけ楽しんで、一気に読んだからなんでしょうね。全編にわたってこれでもか
と描かれるJ○Lの腐敗しきった体質。本当に救いようがない。
取材の厚みが違うので半端でないのでそこがまた救いようの無さを増幅させている
わけですが。ラスト・・・ちょっとだけ救われた感じがします。
超一級品のビジネス・娯楽小説。


あまりの面白さに、5巻一気に読んでしまいました

事実に基づくフィクションとの名目。
一部、 実名も登場。臨場感、溢れる作品に仕上がっている。

主人公、恩地の生き様には、
壱サラリーマンとして、熱い勇気を与えられる。

全5巻と中篇作品ではあるが、
どうなってしまうのか、気にさせられる
秀逸なストーリーで、一気に読破をしてしまった。

映画化も決定。
一つ一つの場面が、
どのようにスクリーンへと映し出されるのか、非常に楽しみである。


国民航空は今日も飛ぶ

組合の元委員長、恩地元を主人公とする物語は、事実上アフリカ篇
で終わる。 御巣鷹山篇では悲惨な航空機墜落事故そのものが中心と
なり、会長室篇では新生国民航空に会長として就任した国見が主役と
なる。

この作品は、「取材した事実に基づき、小説的に再構築した作品である」
と作者自ら言っている。作品のモデルとなった人物が、御巣鷹山の墜落
事故に直接関わっていなかった等の批判もあるが、あくまでもこの作品は
小説であり、作者の創作であると判断したい。だって、こんな航空会社が
実際にあったら嫌だもんね。

ただ、御巣鷹山編では墜落事故の状況や、その後の補償交渉まで、非常
に生々しく綴られている。作者の緻密な取材が伺われるが、リアリティーが
豊かな分だけ、この作品がノンフィクションではないかと誤解されるのでは
ないだろうか。

会長室編のラストは、唐突に終わってしまった印象がある。
恩地や国見が聖人君子として描かれているのに対して、作品上の悪役
である行天四郎の方が妙に人間臭く、親しみをもてたりしてしまう。

魑魅魍魎にまみれた国民航空。しかし、国民航空は今日も飛ぶ。
国民の夢を乗せて。


会長編は...

沈まぬ太陽、御巣鷹山編までは面白かったのですが、会長編からはどうも恩地の迂闊さ無能さ融通の利かなさが感じられ、これじゃー行天達には到底勝てないだろうと納得してしまいました。
会長も当事者意識に欠けてるような印象を受けました。
大なり小なりサラリーマン社会ではこのような現象は有りますが、「正義の為に時には妥協してでも貫く」という強さも必要だと思います。



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沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

山崎 豊子 
沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)
定価:¥ 700
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トルク・リングはいま何処?

最終巻までついにその正体を明らかにしない恩地元、彼の真の正体が垣間見える描写が本巻P.196からP.205にさりげなく織り込まれています、

それはナイロビに到着した恩地と税官吏のささいな衝突、しかし恩地の正体が決定的にあからさまになる衝突です、

当事の発展途上国ならば当然に横行していた税官吏の嫌がらせに怒った恩地は接収されそうなタバコをカートンごと握りつぶし、さらになんとケニヤ国の紙幣を破ってしまうのです、
紙幣/貨幣は国旗と並びどこの国でもその国家を象徴し一定の敬意をはらって接すべきものである、という通常の精神の大人であればあたりまえすぎるような価値観が恩地に欠けていることがここで明らかになるわけです、それもまさに国家の出先機関である税関で紙幣を破る行為がどれほどその国を侮辱するものであるか、説明無用と私は考えますが、恩地の世代はそんなこと考えたこともないのかもしれない、

その後の行動がさらに読者を白けさせます、
警察に連行された恩地はどうにか署長にとりいり事件化を避けるのですが、自分を空港へ送らせた警官にチップを握らせ何をさせたかはぜひ書中で確認してください、(それができるならもっとましな処世をしたらどうなんだ恩地君!)

恩地の心に巣食う沈まぬ太陽という信念は、国旗・君が代への対応で処分されたアカ教員が、これからも戦い続けます、と反省も後悔も決してしないのとおんなじことなんでしょう、

本書で描かれたような労使関係の緊張が存在するような企業/組織の現実の末路はぜひみんなで見届けましょう、


映画が先か、本が先か、どちらでもだいじょうぶ

 昨日公開となった映画を見た。原作を読んでから映画を見るとがっかりするとよく言われるが、
よく出来た映画だった。だからと言って映画を見て筋を知ってしまうと本がおもしろくなくなる
かというとそういうこともない。むしろ3時間超と映画としては長いとはいえ、文庫本で5巻と
いう長い小説ではどうしても取捨選択してはしょわらずを得ないので、映画を見てから読むと映画
で描写できなかったディテールが分かり、面白さが増す。
 この本で扱った航空会社は政権交代もありほぼ公的資金注入が決まった。本と映画で描かれた
官的体質のゆえである。映画制作の構想・企画は政府による再生が明らかとなる前であったはずだ。
その時機を得た先見性には脱帽だが、10年も前にそれを見越したような予見を内包したこの本は
すばらしいという言葉を超越している。山崎豊子おそるべしとしか言いようがない。映画と本、
双方お勧めですが、映画にはハンカチが必携です。
 「白い巨塔」で育った者の読後感です。
by 左門 新
 三つ星レストランには、なぜ女性シェフがいないのか
 女はなぜ素肌にセーターを着れるのか


沈まぬ太陽2 アフリカ編(下)

主人公に対する、執拗な会社側の理不尽な報復。これに対して、自分を信じる仲間のためにも信念を曲げず、私腹を肥やす会社側に与しない姿が感動的です。実際には、主人公のようにされることはないと思いますが、少しでも報復人事等を経験した人は勿論、そうでない人も共感できると思います。また利益一辺倒の昨今、品質安全問題にも視野に入れたこのシリーズは、時代背景にかかわらず感慨深いものがあります。

会社の非情さが赤裸々に書かれる

パキスタン、イラン、ケニアと、恩地の海外たらい回しの旅は続く。
組合の副委員長として共に闘った同期の行天は会社側に寝返り
順調に出世を重ねていく。

そんな中、1972年に国民航空の旅客機がニューデリー、ボンベイ、
モスクワと連続して事故を起こす。事故調査班として現地に派遣
された国民航空社員の苦闘が書かれる。

しかし、事故原因をパイロットのミスとする社員の考えは無視され、
会社には空港設備の不備であるとの報告が出される。また、事故
原因調査に同行したパイロットが、同じパイロット仲間を擁護する
ため、自分の目で見た事実を信じず、執拗に仮定の想像を繰り返し、
空港設備に責任を求める姿にはあきれてしまった。

このような体質が、日本航空(作中では国民航空)123便墜落事故
に繋がって行ったのではないだろうか。

やがて、恩地に日本帰国の話が出てくる。しかし、それは会社側が
折れた訳では無く、連続事故の背景に国民航空の労使関係が影響
しているのではないかと国会で追及されたからであった。会社として
は、更なる僻地へ追いやる計画もあったようだ。

家族との別れ、出世を重ねるかつての仲間、海外で一人仕事をする
孤独、日本で会社に差別されながらも頑張っている組合の仲間、様々
な思いが積み重なり、恩地は精神的に追い込まれていく。

執拗な報復人事、組合つぶし、安全軽視の体質など、会社の非情
さが赤裸々に書かれるアフリカ篇。
そして物語は運命の御巣鷹山篇へと続く。


続きが楽しみ

合員の待遇改善を目的に組合活動を活発に行ったことからアフリカに10年以上飛ばされていた主人公の恩地が組合員の働きかけでようやく帰国できるようになった。

アフリカ編(下)は読中爽快であったがその後はどうなるのか…楽しみである。

この面白さは最後まで挫折がないことは間違いない。



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沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

山崎 豊子 
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
定価:¥ 620
新品最安価格:¥ 620
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奇跡的な経済復興を遂げてゆく日本の影。

舞台となっている時代は、丁度オリンピック前当たり、高度成長期の頃です。その頃海外勤務といえば、総合商社か日本航空でした。ソニー、ホンダ、セイコーといった貿易で国を再建する日本の尖兵として海外に飛び立つビジネスマンは鶴のマークの飛行機に乗り込んでゆきました。一方で、当時は激しい組合闘争の時代でもあります。今とは正反対のインフレが家計を襲っていた時期でもあります。経済成長とインフレは切れない仲ですが、企業業績が上向き、賃金が増え、消費が増え、企業業績がさらに増えるという時代でした。この賃金上昇を担ったのが労働組合です。今のように大人しくはなくストライキも盛んに行われました。そして組合活動を行えばアカとも呼ばれる時代でもありました。冷戦時代、世界中で共産革命も進んだ頃でもありましたから。労働組合の活動を行ったために差別的な待遇を受けると不当労働行為という法律違反になります。この作品でみられるように、組合役員を降りたときに、報復人事ということが行われます。自らの役割に忠実であればあるほど、不利な立場に立たされるのが労働組合でもあります。会社と組合はこういう争いを経験しながら、妥結点をみいだしていった結果、今日のような組合員が一種特権階級のようになった企業組織を作り上げてしまいました。奇跡的な経済復興を遂げてゆく日本の影の部分が見事に映し出されていると感じました。主人公の圧倒的な存在感でぐいぐいと引き込まれる抜群に面白い作品です。

物語としては面白いが、手法に疑問

全5巻の感想です。
もともと大部分が事実をもとに作られた小説であるとの先入観があるため
私はこの小説をよくわからないまま興奮しながら読みました。

特に第三巻にある墜落事故は特に実際にあったことだけに、そして生存者などは実名ですので、
全巻を通じて何処までがフィクションでどこまでがノンフィクションなのかわからず
(それがこの作家の凄さであると思いますが)時間を忘れながら先を読み進めてしまいました。

しかし読み終わってみて冷静になって思ったのは、
これはあくまでもフィクションであるはずなのに、これを読んだ人間は、登場人物を実際の人間に当てはめて読むであろう。
そして聞くところによると実際に登場人物の多くが実際にモデルとなる人間が実在するということ。
だとすると、この物語はあまりにも善悪が偏りすぎているその怖さを禁じえません。
主人公恩地は「スーパー善人」として書かれており同情・共感の嵐。恩地の対立側は「スーパー悪人」となり世間から浴びる誹謗はこの小説の影響力を考えると想像に硬くないです。
フィクションならそれでよいでしょうが、実際に起きた大事件(墜落事故)を使っているだけに、読者の反応を想像できてあえてこのような手法を使うやり方に違和感を感じます。
あとがきに「事実を取材して小説的に再構築した人間ドラマである」と記載すればオッケーでしょうか?

さて恩地のモデルとなる人物は、日航機墜落事故に際して、遺族世話係として働いた事実は無いとのこと。
であるなら、なにか別冊のような印象を与える墜落事故編第三巻は
この前後の小説(1.2.4.5巻)と一緒にすべきではないのではないかと思います。
第三巻部部分は完全に切り離し、恩地を登場させず、事実を、取材に基づいて忠実に描くべきではなかったでしょうか。

その点でイマイチ納得ができませんので星は3つにいたします。



2巻途中で挫折

元国民・・いえ元*AL社員です。2巻目途中で挫折してしまってしばらく経っています。
なぜ挫折したか、作者には本当に感謝しています。よくぞ書いて下さったと。それは、
組合問題による、報復人事は昔も今も当たり前のように起こっているから。カンタロー
さん(恩地のモデルとなった人)のように創成期から在籍して、組織の中核にいける
人材であっても、それは逃れられないんだ、と見せつけられ社内でも伝説の様に語られ
ていました。ですから、この本の内容はごく日常で起こっている事柄なのです。そして
昨日まで、恩地ぽい人だったのに、今日からは、行天になっちゃったって事も珍しく
ありませんでした。なぜそんな会社をやめないのか、それはけっして孤独ではないから
です。そんな仕打ちにあってる人はたくさんいるから。御巣鷹の事故については、避けて
語れない為、大きく取り上げていますが、前記の組合問題とは、次元が別であると、
とらえていただきたい。あの事故は、会長、社長以下、社員全員打ちのめされました。
作品のレビューになりえていないのは、認識しておりますが、他の方のレビューを
拝見してどうしても伝えておきたかったのです。


映画が先か、本が先か、どちらでもだいじょうぶ

 昨日公開となった映画を見た。原作を読んでから映画を見るとがっかりするとよく言われるが、
よく出来た映画だった。だからと言って映画を見て筋を知ってしまうと本がおもしろくなくなる
かというとそういうこともない。むしろ3時間超と映画としては長いとはいえ、文庫本で5巻と
いう長い小説ではどうしても取捨選択してはしょわらずを得ないので、映画を見てから読むと映画
で描写できなかったディテールが分かり、面白さが増す。
 この本で扱った航空会社は政権交代もありほぼ公的資金注入が決まった。本と映画で描かれた
官的体質のゆえである。映画制作の構想・企画は政府による再生が明らかとなる前であったはずだ。
その時機を得た先見性には脱帽だが、10年も前にそれを見越したような予見を内包したこの本は
すばらしいという言葉を超越している。山崎豊子おそるべしとしか言いようがない。映画と本、双方
お勧めですが、映画にはハンカチが必携です。
 「白い巨塔」で育った者の読後感です。
by 左門 新
 三つ星レストランには、なぜ女性シェフがいないのか
 女はなぜ素肌にセーターを着れるのか
 


なんだかなぁ、

P.293にとんでもない記述があります、
脇役の一人、美人スチュワーデス三井美樹の飛んでいるという南回りヨーロッパ路線の「過酷な」勤務実態を綴った箇所です、以下本文を分かりやすく書き直します、

  羽田から香港経由でバンコクで最初の交替
  三日待機
  バンコクからカラチへ飛びここで交替
  四日間待機
  カラチからローマ・フランクフルト経由でロンドンへ
  四日間待機
  逆のコースで羽田へ帰る

のだそうです、24日間連続で拘束されるとはいえ、実際の勤務はわずか6日だけ、残り18日はなんと次の飛行機がくるのを待つだけ?の勤務で美人スチュワーデス三井美樹は復路のカラチあたりでへばりそう(本文のまま)になるのだそうです、搭乗している六日にしても24時間勤務でないことは指摘するまでもないでしょう、カラチはともかくバンコクで六日、ロンドンで四日も待機できるなんてまるで夢のようです、

いやはやなんとも、今のCAが聞いたら腰を抜かしそうなのんきな勤務実態でしょう、この予定でいいのなら他の用事をサボっても私も1年に一回くらい無給で搭乗してもいいなぁ、まだ飛行機の数が少なかった昭和の時代、南の島のリゾート地での待機が1週間だったなどという夢のような事実も伝わっています、なんだかなぁ、




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不毛地帯 第5巻 (新潮文庫 や 5-44)

山崎 豊子 
不毛地帯 第5巻 (新潮文庫 や 5-44)
定価:¥ 820
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その終わり方はないでしょう

引き込まれる物語であっただけに、あまりにあっけない最後に絶句しました。残念です。色々なことが中途半端なまま物語が突然幕を閉じました。不完全燃焼の一言です。

壮大なドラマの終焉

社運と壱岐自身の進退をかけて挑んだ石油発掘事業で、壮大なドラマが生まれてきます。
その個人の人生やいくつもの商社、国内外の政治を巻き込むスケールの大きさに、商社と縁がない私は、ただただ圧倒されるばかりです。

すべてが終わると壱岐は、自分の原点に戻っていきます。とても納得がいくラストです。
と思うと同時に、こんなに強い人、誠実な人って、いるのだろうか、どうしたらこんなふうになれるのだろう…と思いました。
人間の精神的な強さと描く、傑作です。


おれの頭を不毛地帯と呼ばないで!

前半に比べれば後半の石油編はいささかパワーダウン、石油掘削という題材がはたして小説に向くものなのか、はたまた筆者が取り組むにふさわしいものなのかなど多くの読者が疑問を持ちつつ読了するとおもいます、「沈まぬ太陽」第3巻航空機事故編同様にエンジニアリング関連の話題を小説の中の消化するのは筆者の力を超えたものだと判断します、これがもし全盛期のF・フォーサイスならはるかに波乱万丈の掘削劇を面白く描写したでしょう、

などなどとは思いながらも、壱岐が向かう終末はどこなのか、そして石油と社内の派閥抗争(筆者の最も得意な話題)を絡めたクライマックスはもちろん娯楽小説の王道です、

終章に向かうにつれて感じたことが、筆者が実は主人公壱岐正にあまり愛着をもっていないような印象を受けたことでした、山崎作品の他の主人公に比べれば壱岐正に関する書き込み方では作者が主人公に注いだ愛情のようなものはしょうしょう薄めと感じるのは私だけではないでしょう、

父親としての壱岐と息子の親子関係の冷え冷えした様が一応の解決は見るものの冷え切ったままに終わる点にとくに壱岐への作者の愛情の薄さを感じるわけですが、おそらく息子の父へのさめた感情は壱岐正の人生を貫く妥協のない「出世主義」への反発であり、壱岐正が山崎作品中でもっとも正体不明の不可解な人物として描写せざるを得なかった「何か」を感じてしまいます、

なお、壱岐がシベリアから引き揚げたと書中で述べられる昭和31年12月26日は歴史上の「最終引揚船到着日」です、壱岐のモデルとなった瀬島龍三が引き揚げたのはその前、昭和31年8月19日天気晴れ(自伝「幾山河」による)です、また、秋津中将のモデルとなった草場辰巳中将が服毒自殺したのは昭和21年9月20日です、



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不毛地帯 第4巻 (新潮文庫 や 5-43)

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定価:¥ 780
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自動車から石油へ

舞台は、国内自動車会社とアメリカの自動車会社との提携から、石油発掘へと移っていきます。
元軍人の壱岐は、戦争中軍事力で奪おうとし、結局それが手に入らなかったがために敗戦したという石油を、今度は平和的な方法で、日本の国益のために手に入れようと奔走します。
そのためには財閥商社や政治家など、立ちはだかる壁がいくつもあるのです…
3巻までと比べるとスピード感がなくなりますが、その分不透明な中東の石油ビジネスの不気味さととてつもない規模の大きさが伝わってくるようです。

それにしても、副社長の里井の、壱岐に対する嫉妬心のすさまじさは、女の私から見ても考えられないほど醜いです…なんとかなんないかな、このおっさん…



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不毛地帯 第3巻 (新潮文庫 や 5-42)

山崎 豊子 
不毛地帯 第3巻 (新潮文庫 や 5-42)
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新たな戦いの始まり

商社で大活躍の主人公、元軍人の壱岐に、大きな転機が訪れます。
転機はは家庭の中で起こり、その後仕事面で起こります。
舞台は東京から壱岐が社長となって赴任するニュー・ヨークに移り、壱岐は日本の自動車会社とアメリカの自動車会社を提携させるという大きなビジネスにうってでます。
物作りに誇りを持ち優れた技術を持ちながらも営業や経営面でまだ未熟な日本の会社、世界に食ってかかる傲慢なアメリカの会社、国際化に疑心暗鬼ながらも保守主義から移行していく通産省、など、1969年前後の日本社会が抱く葛藤が見えてきます。

ちょうど現在放映されている「官僚の夏」に、似たような雰囲気を感じるのは私だけでしょうか?秋からの唐沢さん主演のドラマが、とても楽しみです。



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不毛地帯 第2巻 (新潮文庫 や 5-41)

山崎 豊子 
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腐敗した軍部の幻を見た、戦後の経済戦争

戦争で大きな傷を心に負った一人の男が、商社マンとして再度国防に立ち向かう。
しかしそこには、やはり利権と欲望にとらわれた魑魅魍魎たちの戦いがあった。

大本営で作戦を立案し、多くの兵を死地に追いやった果て、戦後再度国益に沿った生き方を目指した壱岐にとって、どういう意味を持った戦いだったのだろう。

真の国防、真の国益とは、人命を尊重した戦闘機選択であるという、当たり前の信念の前に立ちふさがるのは、国を己の欲望のために利用する、権力と言う妖怪ども。

自分が命を懸けて戦った国、11年間のシベリア抑留中に望郷の念をあふれさせた国とは、こういう国に成り果てていたのか?そう言う念の中での戦いだったに違いない。

また、勃発した中東戦争を利用した、企業同士の利益のむさぼりあい。

経済戦争とは、人道とはまた違う道を進まなければならないのか・・・・。

戦後の企業にも、腐敗した軍部の縮図が見えるような気がする


壱岐正に学ぶ

壱岐は商社マンになっても、組織をまとめ上げることにすばらしい能力を発揮してます。

第1に目的を決め、目的達成のための方策を考え、実行するための部署を作ること。
第2に適材適所に人員を配置し、チームワークを組ませること。
第3はいかなる事態に対しても、迅速に総合力を発揮する機動力が大切であるということだ。

軍は国家目的を達成するために命令によって兵隊を動かす事ができる。
企業は自由意志を持った人間の集団であるから、社員が納得し、
自覚して案件の遂行に持っていかなくてはならない。

その辺のビジネス書より、ビジネスに役にたつね。
すごい本です。


国防とは、が問われる(セリフの引用あり)

山崎豊子の戦争三部作の1つで彼女にとっての最長の作。
主人公は伊藤忠商事の瀬島龍三元会長(元陸軍中佐)がモデルといわれている。
ドラマ化を機に読み返しており、シベリア抑留が強烈なインパクトだが、一番印象に残るのはこの巻の主人公の親友の空将補の言。

「俺が防衛庁に入ったのは、警察予備隊以来のマッカーサーの手紙一本で作られた自衛隊を、日本の国民に支持される自衛隊にしたいという理想を持って入ったのだ。
軍国主義の手先だとか税金の無駄遣いだと非難され、石を投げられる自衛隊では無意義だ。
どんな綺麗ごとを並べようと独立国として国際社会の中に伍していくためにはどうしても最小限の武装は必要であり、戦争をしない、いや戦争をさせないための役に立つ自衛隊とはどんなものであるか、それを政治家や内局に対して強く訴え、国民にも納得してもらえる自衛隊にしたい。」

「憲法九条の規定のある日本では非武装中立という強い論議があり、その中で強い防衛力を整備していこうという自分の意見はいつも白い目で見られる。
しかし戦争の悲惨さは、軍人としてこの前の大戦を経験した自分たちが一番よく知っており、日本が平和国家であり続けることは絶対の理想だ。
だがそのためにはどこからも手出しをさせないだけの強い防衛力が必要で、日米安保条約が存在していても、自分の国も独立は自分の力で守る義務がある。」

ドラマでは柳葉敏郎が演じるようだがこの台詞は出てくるだろうか。


商社の激烈な争いを描く

シベリアから帰還後、商社に入社した主人公が初めて大きなプロジェクトを率いて活躍していくのがこの第2巻です。
戦後の日本の再建を目指し、防衛という目的から使う戦闘機を選択するのに、そこには戦闘機の能力や安全性を無視した、欲深い政治家や官僚たちの目論見が働いていることに気付いた主人公の壱岐は、なんとしても国のために目的に見合った戦闘機を国が選択するよう、手を尽くして働きかけます。しかし複数の商社、政治家、そして自衛隊をまきこんだ争いは熾烈を極まり、はらった犠牲も大きくなるのです…
軍人として祖国に尽くし、戦後は軍人であるがために祖国からうとまれる壱岐ですが、国への愛は不変のようです。
国、会社への忠誠心はもとより、壱岐の頭の切れのよさ、ビジネスマンとしての勘とセンスの良さ、判断の早さと適切さにも魅せられるものがあります。



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不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))

山崎 豊子 
不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))
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シベリア抑留を描いた、壮絶な1冊

ドラマも好評の、山崎豊子の傑作。
1巻ではドラマの第一話がほぼ収録されているが、特筆すべきはドラマではくわしく描かれていなかった、
シベリア抑留時代の壮絶な捕虜生活が克明に描かれていることである。

終戦後に条約を一方的に破棄し、満州と北方列島に進行してきたソ連。
国際法を無視したのは、その点だけではなく、捕虜に労働を強い、一方的な軍事裁判で、国際常識を超えた
重労働を極寒の地で強制する、その国家体制には怒りをも超越した感想を持つ。

また、驚くべきことは、日本人捕虜に対し、左翼思想を洗脳し、その上で帰国を許していたと言う事実。
または、自国民に対しても、囚人にはシベリアでの重労働を行わせていたと言う事実。

国交を断絶したままでは、捕虜の救出もままならず、長期にわたる捕虜生活で生命を失った多くの軍人の無念は、想像を絶する。

戦傷国のエゴと、米ソの対立の中、北方領土問題の中、交渉のコマにされた捕虜たちの悲哀がこの物語の中に描かれている。

1冊でも独立した捕虜生活を描いた小説として完結している。
戦後問題を考えるとき、必読の書と言える一冊


したたかに、壱岐正。

ここにきて、‘沈まぬ太陽’の映画化や
本作のテレビドラマ化と
また山崎豊子の作品が取り沙汰されている。
その綿密な取材力とプロットの繋ぎ方など
雄渾な筆致はあまたの読者を魅了してやまない。

戦時中は大本営の作戦参謀の任にあった
本作の主人公:壱岐正。
戦後は戦犯として裁かれ、シベリヤ抑留も
経験する。11年の歳月の後、壱岐は日本に
戻ってくる。その後、社長からの三顧の礼
に応えるように商社に入社する。

しかし、ここからが実は本作の真骨頂。
その優秀さと職務に対する厳しさ故に
商社マンとして異例の出世を遂げる壱岐。
プロジェクト毎に新機軸を構築し
確実に成果を挙げ、覇道を邁進する・・・。
この辺りは自らも思う処の多いくだりだった。

巻を追う毎に山崎豊子の付けた
‘不毛地帯’の意味が分かってくる。

組織とは、人生とは、そして幸せとは・・・。
様々な事を考えさせてくれる渾身の力作、

確実におススメです。



あほな上司とどう向き合うべきか教えてくれたすばらしい本

ビジネスに役立つ一冊。
この本との出会いがなかったら、今の自分はないと思います。
参謀として部下や仲間を大事にする壱岐正の姿は1巻目から4巻まで変わらない。
精神的に極限を超えたシベリア抑留中でも正しい心を持ち続けた。
新設された自衛隊に幹部として戻らず、商社マンとしての道を選んだ彼の男としての道、
ビジネスマンとしての道すべて参考になります。
欲の皮が張った上司や、現場のことがわからない上司とどう向き合うべきか、
壱岐正に教えてもらいました。そのへんのビジネス書を読むより、勉強になりました。
すごい本でした。


逆境に、どこまで耐えられるか?

第2次世界大戦敗戦後、主人公で、軍人である壱岐正は戦争俘虜としてシベリアに11年抑留されます。その間にはソ連軍の証人として東京裁判で証言をするという屈辱的な行為を強いられたり、不条理で一方的な裁判で戦犯として25年の強制労働の刑を言い渡され、シベリアの過酷な環境で、死刑にも等しい厳しい労働を課せられたりするのです。
彼の目を通して見えてくるものは、読んでいるだけでも胸が苦しくなるほど、過酷な体験です。そこから、一体どれほどの逆境に、人間は耐えられることができるのだろう?という素朴な疑問が浮かび上がってきます。
彼を支えているものは、家族や同僚、祖国への愛であり、自分の確固たる信条であることが伝わってきます。それを読者に伝えているのは、作者の入念な取材や調査を元にした物語構成の力量だと思います。
シベリアから帰還後、商社マンとして第2の人生を切り開く主人公ですが、第2の人生の土台となる体験を描いているのがこの第1巻です。


行間を読むことの大切さを教えてくれる傑作、

山崎豊子の豪快な作風が遺憾なく発揮された傑作、初期作品の情緒を愛するものには違う人が書いているのかと思わせるほどだが、本作のような題材を一気に読ませる作品に仕上げる娯楽作家の本領が発揮されています、いかんせん長編に免疫のない人には驚愕の大長編小説です、似た題材を描いた石川達三「金環食」や松本清張でウォーミング・アップしてもいいかもしれません、

私のような昭和の歴史好き読者の意見として次の点だけは多くの読者に知っておいてほしいと思います、

よく知られるように主人公壱岐正のモデルは戦前は大本営参謀として陸軍の作戦立案をおこない、戦後は伊藤忠商事で活躍した瀬島龍三(故人)です、これはあくまでもモデルであり本作は瀬島個人の人生のセミ・ドキュメンタリではありません、著者の調査による多くのデータから登場人物それぞれが再構成されたことだけは肝に銘じた上で読んでほしいとおもうのです、

本書では昭和20年8月15日の阿南陸軍大臣の自決後(映画「日本の一番ながい日」参照)に主人公が満州へ向かいますが、瀬島隆三が関東軍参謀の辞令を受け取り羽田を飛び立ったのは昭和20年7月10日(自伝「幾山河」による)、8月8日夜半ソ連軍が満州に進攻したあとに日本人居留民を守るという当然の義務を関東軍が放棄したまま終戦を向かえた結果、満州でどれほどの悪行をソ連軍がおこなったかは多くの記録が物語るとおりです、その責任の一端は大日本帝国陸軍中佐であり在満州・関東軍参謀瀬島龍三にあるのです、

8月15日の終戦後でさえソ連軍が軍事侵攻したと判断した千島・樺太の大日本帝国陸軍守備隊は果敢に戦いました、最近ではそれなりに有名になった占守島の戦闘では守備隊の適切な判断で島民は無事に北海道に帰還できたのです(中公文庫「最後の日ソ戦」参照)、

もし日本人が昭和20年の満州を描くのであれば関東軍軍人たちの武人としての誇りのなさを大きな声で描写すべきなのだ、という視点からは本作はやはり物足りないでしょう、

瀬島の自伝を読めば明らかですが瀬島は軍人ではあるがたった一度の戦闘も経験していない優秀な軍事事務官と評すべき人物(本書の壱岐正も同様な人物として描写されています)で、硫黄島で有名な栗林中将のような「軍人」と同類などと勘違いしてはいけません、 彼のようにまったく戦闘経験のない「幹部軍人」が大日本帝国陸海軍にはいて捨てるほど実在した事実(有名な山本五十六も同類)は、逮捕経験のない警察幹部・消火活動を経験していない消防幹部のような正体不明の印象を現在の私たちに与えます、

瀬島がほんとうにシベリアで苦労したのか? 昭和19年瀬島はソ連になぜ一人で出向きいったい何をしてきたのか? そして瀬島ほど華麗な軍歴を誇る人物が何ゆえに創業期の自衛隊に入隊しなかったのか(瀬島の胡散臭い背景に気付いた自衛隊側の拒否なのではないか、自伝でもこの経過は実にあいまいに記述されている、瀬島龍三=ソ連スパイ説からアメリカから自衛隊に圧力があったと指摘もする人もいる)? など瀬島龍三に関する疑問はつきない(旧ソ連の情報公開を待つ)というのが現実です、

瀬島の自伝で最も奇怪な部分が昭和19年に自らの目で極東ソ連軍の増強を確認しながらも大本営参謀として何一つ対策しないままに満州赴任に至る経過をまるで他人事であるかのように冷ややかに記述している箇所(つまり客観かつ冷静を装って何事かを隠蔽していること)で、以上の事実を知った上で読む本書の面白さは娯楽を超えたものだと保証します、

それにしても、壱岐正、つまり「意気正し」とはいつもながらの著者得意の安直な命名が面白く、21世紀の現在では不毛地帯とは戦争もしていないのに惨めに自滅してしまったソ連という情けない共産党政権国だったのだとも気付かされます、



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大地の子〈1〉 (文春文庫)

山崎 豊子 
大地の子〈1〉 (文春文庫)
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心・技・体を総動員して生き延びること

 上司から紹介されて読み始めました。今までタイトルと中国残留孤児の話と言うことは知ってい
ましたが、手が出ませんでした。現在上海に6年駐在していますが、中国の歴史についてはあまり
触れることがありませんでした。今の上海は経済主導で、今日より明日が豊かになる。明日はもっと
便利になる。明日はもっと家が高くなると言う右肩上がりの風潮があります。

 40‾60年の間に中華人民共和国の成立、文化大革命と大きな歴史の転換点がありました。今の上海
では考えられないほど、悲惨な生活事情と知識人の不当なつるし上げがまかり通っていました。

 著者の筆致は非常に力強く、ぐいぐい引きつけられて読み終えました。1巻しか買わなかったの
を非常に後悔しています。次回、日本帰国時には全巻そろえたいと思います。

 主人公に対する次々の不幸と拷問、非常に辛いです。それでも、養父への恩義に報いるために生き
延びる精神力と体力に感動しました。また、看護婦の江月梅の博愛。一筋の光となって、2巻への希
望へとつながります。

 人間は「流される」生き物だと思いました。一人一人の人間が集まるとこうも残酷になれるのかと
驚きました。環境には逆らえないのかも知れません。主人公はその時代の流れの中で翻弄されていき
ます。現代では環境はある程度自分で選べます。自分に合わない環境であれば、合う環境に移る必要
もあると思いました。

 日本の武術で、心・技・体という言葉あり、私の座右の銘です。主人公も、義父への恩返しという心、
生き残る技術、生き残る体力の3つで数々の困難を乗り越えてきました。現代の状況とは全く異なりま
すが、日々の生活でもこの3つをバランス良く向上させていきたいと思っています。


絶望の中で

中国で起きた文化大革命とはなんだったのか?ほんの数十年前の出来事でありながら、その内容は
一般的にはあまり知られていないのではなかろうか?
中国と日本、近くて遠い国。いまだに反日教育のようなことが公然と国家を挙げて行われているという事実。

物語は冒頭から凄まじい吊るし上げという場面から始まる。主人公、陸一心の心の葛藤、絶望、言いようのない
さびしさが胸に堪える。養父や将来、妻となる看護婦との出会いに人間の優しさを感じ慰められる。


涙なくしては読めません

 波瀾万丈の壮大なストーリーが予想通りに展開して、まるで漫画みたいだと思いながらも随所で思わず涙してしました。現実味が希薄ですが、娯楽読物として面白かったです。

 満蒙開拓団、文化大革命、残留孤児の問題を身近に届けた功績は大きいと思います。


残留孤児とは

今更ですが、読んでみました。
非常に読み応えのある硬派な内容で、引き込まれて一気に
読んでしまいました。
残留孤児の主人公に幾多も襲いかかる不幸、主人公を助けた
養父母の人間性、貧困が故にエゴむき出しの貧農、現代中国
の象徴である狡猾な政治家、妥協を許さない厳しいビジネス
の内幕。
どのシチュエーションにおいても綿密な取材と膨大な資料に
よる裏付けによりリアリティーと迫力があった。

中でも共に孤児となりながら自分とは異なる悲惨な運命を
生きてきた実妹。偶然にもその妹と再会することとなり、実妹
の不幸な最後の場面で実父とも運命的な再会を果たす。
立場は異なるが、日中の巨大なプロジェクトで共に働く実の親子
の再会をどの様に描くのか、揺れ動く主人公の心情を思いながら
読み進んでいったが、なんとも皮肉な悲しい再会として描かれて
いた。

戦争によって肉親との辛い別れと異国で過酷な人生を歩まざるを
得なかった残留孤児の物語であるが、厳しい幼少時期から文革と
いう暗黒の時代を経て、ようやく掴み取った中国人としての尊厳
(?)である党員となった主人公は、最後に中国人=大地の子と
して生きていくことを告げた主人公とその言葉を聞いた実の父親
の心情を考えると複雑な気持ちになった。



人権なき世界と人間の狂気が結びついたときの恐怖

 結論は納得である。やはり所変われど、「氏より育ち」である。
 その意味で、「大地の子」という表現は、簡にして明瞭なメッセージである。 
 こう考えると、果たして、残留孤児として日本に帰国した人は、果たして幸せに生きているのだろうかと素直に疑問に思う。 

 しかし、最近の小説がぺらぺら薄っぺらいものに感じてしまうほど骨太の作品である。
 無知で恥ずかしいが、自分の生まれた直後の時期に文化大革命が起こり、狂乱の時代が中国大陸に到来していたとは知らなかった。
 また、小日本鬼子(シアオリーベンクイツ)という日本人の血を引くものへの侮蔑の言葉が耳について離れない。 

 普通の日本人で、文化大革命時代の中国で、自分は無傷に立ち回れると思える人はいるまい。
 正直、自分の立ち居振る舞いによっては死を招きかねない時代の暗さは目を覆うばかりである(戦前の日本もこういう感じだったのだろうか)。
 読んでも読んでも、ソ連軍の虐殺、妹との別れ、労改送りと、これでもかとつらい話が続き、これでハッピーエンドか期待をしても、それは空しく裏切られる。
 しかし、こういう重厚な本が、安価な文庫で読めるのは至上の喜びとすべきであろう。 

 全体の展開を時系列で見ると、1)敗戦時の死線を彷徨う日々、2)陸徳志と暮らした日々、3)北京鋼鉄公司での活躍と暗転(労改送り)、4)上海宝華製鉄建設での活躍と暗転(大包鋼鉄公司への転属)、5)名誉回復とエンディングということになるのだろうか。
 やはり、こうした果てしなくて出口のない物語で最後救われるのは、「私は、この大地の子です」という陸一心の言葉であろう。  

 なお、なぜこのような本の執筆が可能になったかは巻末(胡耀邦党総書記の知遇を得たこと)に示される。



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