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夏の家、その後 (Modern&Classic)

ユーディット・ヘルマン 松永 美穂 
夏の家、その後 (Modern&Classic)
定価:¥ 1,680
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タバコの煙

小説とはトンとご無沙汰だった中で読んでみた一冊。都会の青年たちのもつ、敏感すぎるほどの感受性と、信じがたいほどまでにあっさりとした自己放棄のアンバランスさが、全編にわたってスマートに描かれているように思う。だが、そこから先への感慨に乏しいのは、私だけか…。まあ、それにしても、登場人物たちはひっきりなしにタバコを吸う。人物よりも読者の側に浮遊感が強すぎて、着地点を見失いそうだ。

次作に期待。

ドイツの現代文学は初めてだったんですが、ほんと英米文学と同じ匂いがしますね。名称だけがドイツを感じさせるだけで、その他は最近の英米短編集とまったく変わりない感触でした。
しかしちょっと物足りない。作者が切り取る場面はまさしく日常なんですが、変にエキセントリックなところもあってうまく馴染めなかった。そして気になったのが全編のほとんどを覆う寒さと湿っぽさ。これがうまい具合に作用すれば、静的に書き込まれた味わい深さを感じれるんですが、読んでみて感じたのはおよそ真逆の感想。でも、その中でも「オーダー川のこちら側」にはちょっと感心しました。この作品はなかなかいい。素直になれないおっさん的な心情が、うまく表現されてて好きでした。「ハンター・ジョンソンの音楽」もそういった意味では共感できました。死にゆくだけの男と、若い娘という取り合わせが、とまどいと気後れに彩られ小品ながらいい味出してました。
しかし、全体的に見渡してみると、ちと弱い。次作に判断をゆだねましょう。



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朗読者 (新潮文庫)

ベルンハルト シュリンク Bernhard Schlink 松永 美穂 
朗読者 (新潮文庫)
定価:¥ 540
新品最安価格:¥ 540
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商品の紹介
スイスで出版された原書を、キャロル・ブラウン・ジェンウェイが格調高い英語に翻訳。セックス、愛、朗読、戦後ドイツの不名誉についての、短くも豊かな物語。15歳の少年ミヒャエル・バーグは、謎めいた年上の女性ハンナとの激しい恋の虜になる。だが彼女の身の上についてはほとんど知らないうちに、ある日ハンナはミヒャエルの前から姿を消してしまう。…二度と彼女に会うことはないと思っていた彼だったが、戦慄(せんりつ)の再会が実現する。ナチスの過去を裁く法廷の被告席に、ハンナがいたのだ。彼女が筆舌に尽くせぬ重罪を犯していたことが明らかにされていく、その裁判の進行を追いつつ、ミヒャエルはとてつもなく大きな難問に取り組みはじめる。ホロコーストを知った自分たちの世代は、どう対処するべきか?「理解に苦しむものを理解できると思ってはいけないし、比較にならないものを比較してはいけない…。ぼくたちは、嫌悪と恥辱と罪の意識を抱えたまま、ただ黙っているべきなのだろうか?何のために?」
本書はボストン・ブックレビュー誌のフィスク・フィクション賞を獲得した。たぐいまれな明快な文章で、少ないページ数のなかで多くの悪の精神の問題に挑んでいる。世界がかつて知り得たなかで最悪といえる残虐行為に加担したのが親や祖父母、あるいは恋人であった場合、彼らを愛するという行為はどういったことなのか?文学を通しての贖罪(しょくざい)は可能か?シュリンクの文体は簡潔であり、比喩表現、会話といった文章の属性を問わず、余分なものはことごとくそぎ落とされている。その結果生まれたのが、ドイツの戦前と戦後の世代、有罪と無罪、言葉と沈黙の間に横たわる溝を浮き彫りにした、厳粛なまでに美しい本作なのである。


クチコミ情報

あんまり現代小説を読まない者の感想です。

 刑務所のなかのハンナに向けてテープを送り、主人公が演じ続けた「朗読する坊や」の役割が、かつて彼女自身がおこなった「おきにいり」の少女たちに課した朗読と重ねられ、それからの解放が同じく死の宣告となるといふ結末の符合。囚人を朗読者として看守生活の“隙き間”に入れてゐたのが、今度は反対に囚人として、朗読者の生活の“隙き間”に入れられる破目になったことが、主人公自身によって語られてゐるのが、実に皮肉に感じられました。朗読だけを聴き続けるといふ、思惑を超えて主人公から与へられることになってしまったともいふべき、その「罰」の内実が、しかし苦しみとしてではなく、言葉を覚える喜びとして、反省の学びへと真摯な彼女を向かはせる。しかも「罰」は「罰」として顕れ、彼女を最後に自殺に追ひやることになってしまふ訳ですね。この小説の苦味の背景にあるのは、戦争と貧困の問題といふより、時代に翻弄される人間のどうしようもない運命のやうな感じがします。思ふに、文盲であることを隠す生き方を貫くことは、実はハンナ一人が選んだといふより、その事実を暴露しなかった主人公とともに選んだ誤りとも云ふべきで、二人の責任です。ですが、そのせゐで、刑務所といふ閉じた環境に守られた彼女にとって、主人公といふのは「ただの朗読者」であり続ける限り、依然自らが優位に立つ思ひ出の中の「坊や」のままであり続けることができ、(さう思ふのは彼女の自由なのですが)、主人公の側もまた「坊や」からの成長を見せず、そのやうに演じ続けなくてはならないと思ひ込んでしまったところに、二つ目の誤りがあります。もっともそれは彼の「罪」ではないのですが、刑務所の女所長さんが「どうして手紙を書かなかったのか」と非難したときに、一番こみあがるものがありましたね。その次のカタルシスはもちろんハンナが裁判長に詰め寄るシーンでした。

物悲しいラブストーリー

一気に読みました。戦争の理不尽さに翻弄された男女の物悲しいラブストーリーに感じました。映画ではどのように描かれるのでしょうか。

人間の記憶って・・

物語は、「ぼく」がハンナと過ごした日々を回想するところから始まる。物語の中核となるべき大恋愛なのに、「ぼく」は記憶があいまいで、すべてを明確には覚えていない。
大恋愛だったのなら、なぜしかっり覚えてないのだろう?その程度の恋愛だったのか?

読み進めていくと、ハッキリ覚えていないことがむしろ自然に感じた。純愛ものにありがちな、あの大恋愛だけは明白に覚えている、忘れられないんだ、という世界観が崩れていった。

読んでよかった。また、何年か後に読みたい。


読みやすい英語。

英語勉強用の小説としてわかりやすい、読みやすい 200ページの分量も努力すればいける。 もとはドイツ語で書かれたものを英語翻訳しているので、英語の癖がなく、勉強用の小説として薦められる。TOEIC800点レベルの人が900点を目指すために読むという感じ。

散漫すぎる

女性がハンナでならなかった理由、
他の女性や囚人や他人の過去とは違う理由、
時代の移り変わり・・・

それらが全く読めず、ただ主人公の男性が思い出にすがって
自己中心的な思考を前後左右にめぐらしているだけ。

この作品の中では『生』も『死』も重みが無い。

ハンナが隠した秘密はあまりにも決定的な根拠に欠け
時代背景や過去にさかのぼる犯罪と繋げるのは難しい。



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役にたたない日々

佐野 洋子 
役にたたない日々
定価:¥ 1,575
新品最安価格:¥ 1,575
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こういう歳の取り方っていいなあ

佐野洋子は以前からずいぶん多くのエッセイを書いていますが、還暦を過ぎた
ころからのものは珠玉といってもよいでしょう。特に感銘を受けたのは、癌の
再発で余命宣告されたにも関わらず、それを帯にも見出しにも全然触れずに、
淡々と文中に書くという態度です。

「昔から70で死にたいと思っていたし、死ぬ時がくれば確実に死ねる癌って
いうのはいい病気だ」と言い切ってしまえるのは立派です。日頃は似たよう
なことを言っていても、いざとなったら「生への執着」を恥も外聞もなく
書き綴り、「みんな私を見て〜!」と絶叫するような人物が多い中、実に
すがすがしい。こういう意地悪で凛としたおばあさんが増えたら日本は確実
に変わるだろうと思いました。


役に立ちました

タイトルに惹かれて読みました。この方の本は初めてだと思ったら
絵本「100万回生きた猫」の作者ではないですか。
正直内容にあまり期待してませんでした(失礼)。しかし大きな間違いで。
料理、戦争体験、友人、韓流ドラマ、そして自身の健康の事、老いの事…等々
様々な話題が魅力たっぷりにちりばめられています。

老後=穏やかで静かな日々と思いきやそんな事も無く
確固たる自分を持った作者は情熱的(?)で、破天荒で
こういう老いの過ごし方もあるんだ、こういう人もいるんだ、と何かホッとしました。
考えさせられる事、学ぶところが多いです。

最後の2〜3頁は何度も読み返しました。
沢山のことを教えてもらえた気がします。商品の説明どおり、名言だらけ。
作者の方がこれから少しでも、良い体調で過ごせる事を祈ってます。

蛇足ですが
何の因果か、偶然にも、もう一冊手に取っていた本が元旦那さんの本でした…
(ここに来るまで二人の関係を知らなかった…)



いなくならないで

いつも秘かに思っていることを、サラリズバリと書いてくれる洋子さんのエッセイは新刊が出るごとに読み、強力なサプリメントとして、日々の生活の励ましとなっている、ので洋子さんには、いつまでも元気でいてもらいたい。あなたがいなくなってしまう世の中は想像するだけでも寂しいもの。人生の甘いも、辛いも、苦いも、酸っぱいも、すべて知り尽くしたかのような洋子さんが紡ぎだしてくれるエッセイは、とても大事なエッセンスでもある。

かっこいい、老い方だってある

 佐野さんは、谷川俊太郎の三人目の妻だったひとだ。
今は離婚して、シングルでいる。成人した息子さんがいるようだが、
ほぼひとり暮らしのようだ。
お友だちがたくさん。一緒に料理したり、麻雀したり、お仕事の依頼もいっぱい。
充実した、老境ではありませんか・・。
 ところが、この佐野さんにして、やはり、老いや癌や孤独、
焦りは嵐のように日々渦巻いている。
 よくある達観や、諦観、という見せかけのかっこつけはない。
 日々、熱く、または淡々と生きる。自分のばばあ振りに驚きながら、堂々と生きる。
 こういうエッセイいままで、日本になかったなぁ。
自在で、魅力的な語りくち。
 老い、ひたすら恐がるのではなく、自然体で行こうよって思えてきます。


肩の力がぬけます

人生の秋から冬を迎えた女性の人生の達観ぶりがみごとです。なにも起こらない生活の日々も時間がたつにつれ、人生の終わりがちらつくような出来事がおこってきます。
健康のありがたさ、食にたいするこだわり、自分の人生のスタイルは自分がきめるという作者の生を貫く生活信条がみごとです。中身は読んでのおたのしみです。



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夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

カズオ・イシグロ 土屋政雄 
夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
定価:¥ 1,680
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初の短編集

カズオ イシグロの初の短編集。
内容は他の人たちが、必要十分に説明しているので、、。

要約すると、
新しい人生のスタートをするために、
持ち物を取り替える人たちの話。
顔だったり、妻だったり、謙虚さだったり、。
どの作品もこっていて、
くすっと笑いつつ、
すこし苦い後味だった。

正に、登場人物達が、
夜に回想する話なのだろう、、。


連作(?)短編!

原題は「NOCTURNES」となっているのですが確かに良いタイトルで、この連作短編(いわゆる普通の連作短編ではないが、私には連作短編に感じました)の通しタイトルとしてベストだと思いました。


往年の大歌手でスターであり、ベネチアでギター奏者として生計をたてる主人公の母と東欧に暮らしていたときからのファンである老歌手との1夜のサプライズセッションの顛末を描いた「老歌手」

大学時代の親しかった友人夫婦の家に泊まりに行く1人やもめの47歳の英語教師として食いつないできた男。友人は仕事に成功しているが何故かいつもは仲の良い夫婦に訪れたささやかな危機的状況に陥った時期に来てしまったことから始まる変な時間の変なやりとりを描いた「降っても晴れても」

プロを目指すまだ若いギター奏者が姉の故郷の田舎のカフェを手伝うことで知り合ったミュージシャン夫婦との交友を描いた「モールバンヒルズ」

売れないジャズサックス奏者のとある入院に伴って生まれたセレブレティーとの不思議な展開を、不思議な場所で描いた「夜想曲」

若いチェリストと不思議な年上の魅力的アメリカ人女性との出会いで生まれた奇妙な師弟関係を語る「チェリスト」


もう少し詳しく書きたいのですが、どの作品もやはり素の状態で味わっていただくのが最も美味しいと考えさせられる作品、やはりイシグロさんは面白いです。


それでも、やはりどちらかというと私の好みは長編ですし、「日の名残り」、「私を離さないで」、「遠い山なみの光(昔のタイトルは「女たちの遠い夏」)」なんかを読んでしまっているので、その期待が大きくなりすぎた分、少しだけがっかりもしてしまいました。ただ、もちろん素晴らしい作品です。

イシグロカズオ作品の静かなトーンが好きな方にオススメ致します


人生の移ろいやすさと音楽を描く味わい深い短編集

最初、読み終えたときには「イシグロ氏にしては通俗的な作品集だなあ・・」と思いましたが、
やがて表面上の軽さとはうらはらに、なかなか内容の深い短編集だと気づきました。

登場人物は過去の成功を懐かしんだり、将来の栄光を夢見たり、
皆、いささか寂しく微妙な立場に立たされています。
音楽業界で成功するため整形手術を試みる、才能ある中年サックス奏者、
シンガー・ソングライターを夢見る若者と初老の音楽家夫婦、
ベネチアで不思議な年上の女性からチェロの手ほどき(?)を受ける青年など、
プロの音楽家として発展途上だったり、盛りを過ぎていたり、
俗世で成功していても空虚さを抱えていたり、と人生の縮図のような群像です。

イシグロの手にかかると、こういったはかなく、滑稽にも思える人びとの姿が
音楽の持つ魔法の力で、普遍性と一抹の哀愁を帯びて浮かび上がります。
そして音楽という天上の美に触れた彼らの人生が、
新たな意味とともに、夕暮れ時の光に優しく静かに照らし出されるのです。

どの短編にもそれぞれの味わいがありますが、個人的には二番目の『降っても晴れても』の
何とも絶妙なユーモア(ビリー・ワイルダーの映画みたい)に思わず声を出して笑いました。
こんなほろ苦いドタバタ喜劇も書ける人だったんですね。




室内楽のソロチェロのような小説。静かに胸に迫り来る

カズオ・イシグロの作品は初めて読みました。

静かな小説で、ストーリーもドラマチックな抑揚はありません(「夜想曲」という作品はちょっとあり)。それでいて退屈しないのは、しっかり心をつかまれていたからなのでしょう。作品の登場人物は、円熟期を過ぎ、落ちていく自分に葛藤を感じ、なかば諦めをもっています。人生を一日にたとえるなら、夕日が落ち、夜が始まる時間帯です。「夜想曲集」というタイトルは素敵な表現です。傍からみると、落ちぶれる人々ですが、悲壮感を感じさせません。私たちが、夜になったことからといって、悲しむことがないのと同じです。

あとがきを読むと「大きく影響を受けた作家の一人にチェーホフをあげている」というのがありました。「チェーホフ作品のように、ドラマ性や落ちがなく、人生の一瞬を切り取ってみせたような作品だ」と評されていました。この一文がこの本を表すのに一番ぴったりだと思います。


最後には深く感動

このところミステリ小説を多く読んでいたせいかもしれないが、最初の一編、二編は、オチのないラストにちょっと不満が残った。しかし、読み進めるうちに、短編間の繋がりに気づきはじめ、全体のテーマも見えてきて、それぞれの登場人物たちの他にどうしようもないとしか表現しようのないような心情も伝わってきて、深い感動へと繋がっていきました。
どの短編も設定が素晴らしいです。もう小説の設定なんて出尽くしたような現代で、よくまあ、こうも意外性のある設定ができるのかと思いました。翻訳文は土屋さんなので、安心して読めます。



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川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジョン・ハート 東野さやか 
川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
定価:¥ 1,029
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うーん

面白くない。全然読み進められなくて放棄した。
実は彼には前回も挑戦し同じような感想をもった。

きっと合わないんだと思う。
お父さんとも合わないし。

読みずらい上にダラダラ進むといった感じでした。



評判通りの面白さをもった小説


 無罪になったとはいえ、5年前に殺人の嫌疑をかけられたアダムは事件の後に故郷を逃げるように離れた。親友のダニーからの突然の電話に懇請されて帰郷した彼を待ち受けていたのは、自分を勘当した父や昔の恋人である女性警官、そして新たな殺人事件であった。

 私は普段3冊前後の本を並行して読むのが常ですが、本書は他の書を脇に置いて黙々と読み続けてしまうほど魅力的な書でした。

 巻頭で著者が遠慮がちに注意を促すかのように記していますが、これは正攻法のミステリー小説というより、まさに「家族をめぐる物語」以外のなにものでもありません。だからこそ、この物語はひょっとしたらあなたの、そして私の物語であるかもしれない、という思いを心の底に生む展開を見せるのです。

 登場人物たちは物語の至るところで厭世的なセリフを吐露します。
 「人間とはそういうものだ。さっさと決めつけ、いつまでもねちねちと覚えている。」
 「歳を取れば取るほど背負うものが増える。押しつぶされるほどの重荷がな。」
 「人生は苛酷だ。…いろいろ大変だぞ。いいことも悪いことも、そのあとのことも。」
 5年前の事件以後もかさぶたのまま残ってしまった傷跡をさらにほじくり返すかのように、家族や友人たちは新しい事件を追う途上で鋭く切り結んでいきます。既に生きることに疲れてしまった人々をさらに完膚無きまでに打ちのめす新たな事件。

 それでもアダムの元恋人ロビンはこう語ります。
 「人生は短いのよ、アダム。心から大切だと思える人にはそうたくさん出会えない。だから、出会えた人を手放さないためには、どんなことでもするべきよ。」
 「なんの話だ?」と訝るアダムに対してロビンはこう言葉を継ぎます。
 「人間は誰でも過ちを犯すと言っているの。」

 だからこその赦しの物語と取るのか、それとも戒めの物語と取るのか、この570頁の小説に対する判断は読者に委ねられるでしょう。


分類不能

 著者が冒頭の謝辞で書いているとおり、この小説は「家族をめぐる物語である」。いくつかの殺人が物語の中核をなすため、スリラーやミステリーに分類されるのでしょうが、話の中心はそこにはないと思われます。あくまで、血のつながった、または血のつながらない大きな意味での家族・友人をめぐる物語と感じました。そのため、犯人探しやタネ証しはサイドストーリーにしかすぎないと思います。
 ミステリー好きの方には「犯人すぐわかっちゃったよ〜」ってことなのかもしれないので、犯人探しに重きを置く方や、トリックに重きを置く方には不向きな小説だと思います。私が鈍いだけかもしれませんが、私はかなり後半まで犯人すらわからず、ただ主人公に感情移入してあっという間に読み進んでしまいました。


閉塞した世界での物語

帯に惹かれて読んでみたが、確かに文章は素晴らしく、途中でやめることの出来ない魅力のある本だったが、物語そのものは暗くて澱んだ世界で、登場人物もその鬱屈のたまった人間ばかりで、読後、暗い印象しか残らなかった。

アメリカの地方の小都市という、普通の日本人は知らない世界が舞台なので、ミステリーというには辻褄のあわない捜査や理解不能な人間関係など、わかっていてもあえて追求されないで放置される殺人事件、レイプ事件含めて、納得のいかないこと、理解及ばないものが並ぶ。

個人的には、どの人物に至って主観的な視野で情に流されるままに対処しているようにしか見えず、個人的都合による言動に周囲が巻き込まれるというものばかりのような気がして、うんざりすることもしばしば。
ミステリーとして読むと、かなり気を削がれる可能性もあるような気がした。
正直、まっとうな判断と行動を取る人がひとりでもいれば、こんなことにはならなかったんじゃないのか?と思ったりもするが、そういう人がひとりもいなかったというのがこの物語の基にあるので、読み終わって感銘を受ける、感動するというには至らない。

独特の空気感みたいなものは、なんともいえない味わいがあり、そこはとてもよかった。


これは推理小説として読むとがっかりします

これは推理小説ではありません。犯人とか犯罪の流れとかまさかこんな簡単な
ものじゃないだろうと思ったがそのままでした。だれでも想像する内容の話し
です。家族の嘘とかに異常に反応する頭の悪い主人公の私小説として読んでく
ださい。アメリカの田舎町はこんないい加減な捜査してるの?って感じです。



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単純な脳、複雑な「私」

池谷裕二 
単純な脳、複雑な「私」
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無意識を見える化していくと

文句なしに面白く、その面白さは他のレビューを参考にしていただくとして。

アルファ波を制御できるなんて、無意識の見える化ですよ。

これがどんどん進んでいくと、無意識とされているカテゴリーが数値化され、
見える化されて、意識下にのぼってくるわけで。

ただ、本著でもふれられているように自律神経系まできちゃうと、
それはそれでまずいことになりますが、無意識というカテゴリーが、
意識化されてコントロールが可能になったとき、心、ってのは、
いったいどうなってくるのでしょうか。

それは単純な要素のルールによって創発された過渡期の状態なのでしょうか。


脳研究者が語る分かりやすい最新の脳科学

本書は第一線の脳研究者として,また科学の伝道師として,活躍している著者が,母校の高校生向けに行った最前線の脳科学の講義をまとめたものである.同様の書籍としては,ニューヨークに住む日本人高校生向けに行った最新の脳科学の講義をまとめ,2007年初旬に出版された著者の前著『進化しすぎた脳』がある.本書では前著の出版から新しく得られた最新の研究成果も交え,大変エキサイティングな内容となっている.どちらも未読の方は,『進化しすぎた脳』から読まれることをお勧めする.

本書では「事実」と「真実」が違うことや「直感」と「ひらめき」も異なることを脳科学的側面より明らかにしている.特に運動と知覚において,@脳の準備→A意志→B知覚(動いた)→C運動(脳の指令)という手順を踏むことは,少なからずショックを受けた.しかし,このショックは,人間にある「自由」は,“自由意志”ではなく,“自由否定”であるということで癒されることとなる.
第一線で活躍する脳研究者自らが,脳は単純であるという言葉の通り,ニューロンを始めとする脳のパーツの働きは非常に単純であるが,その単純なパーツの組み合わせから,どうして人間もつ複雑な精神が生まれるのかという疑問をぜひ明らかにして欲しい.


間違っている。

「脳」という器官についての記述は研究者としての
大変な力量を感じさせる意欲作であることは認めます。

しかしあえて皮肉を言えば、
「私」あるいは「心」についての現象や解釈は実証的でなく、
間違っていると思う。

これは、私が本書を読んで「思った」他ならない感想です。

何がどのように間違っているのかは、
各自「自分の胸」に聞いていただきたいと思います。


単純な池谷の心、複雑な脳

本のタイトルは『単純な脳、複雑な私』になっているが、実は逆である。
池谷氏の本は脳の構造と機能、つまりシステムが複雑であるということをひたすら論じているに過ぎない。
また「創発」という重要な現象も取り扱っているが、とうてい心と脳の間の複雑な創発関係をとらえているとは言えない。
脳神経システムの超精密な情報処理機構が解明されても、心はビクともしない。
心の本質はみなさんが普段かんじていること、そのままのものである。
脳科学が解明するのは、脳神経システムがそれをコード化する精密な過程のみである。
心や自我や意識の本質を解明するためには、脳の働きだけではなくて、生命と情報そのものの自己組織性を解明しなければならないのである。
少し難しかったかな?


角回とは

 僕はヘミシンクという処理を行った環境音楽のCDを持っている。これを聞くと、とてもよく眠ることができる。ヘミシンクとは米国のモンロー研究所が開発した音響システムで・・と書くと胡散臭さが漂うが、実はそうでもないらしい。これはHemispheric Synchronization(左右両脳同調効果)の訳であるが、左右の脳を刺激し、脳全体を特定の周波数へと導くことで意識状態を変えることができると言われている。
 じつはこのヘミシンクによって精神と肉体とを分離することに成功しているらしい。しかし理科系で科学の教育を受けてきてそんなことはありえないと思ったあなた、実は幽体離脱は科学的に解明されているのだ。
 この本に脳の角回という領域を刺激すると体外離脱が起こる、と書いてあるのを読み衝撃を受ける。つまり、脳は幽体離脱を生み出すための回路を用意しているらしいのだ
。ヘミシンクはきっと脳の角回を刺激するのだろう。



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ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)

伊丹 十三 
ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)
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かっこよすぎ

一番痺れたエッセイです。
多くの方がおっしゃってらっしゃるように、極々若いときに読むべき一冊かもしれません。

伊丹さんの才能はほんとにキザだけれど素晴らしく、そして今の日本ではカッコよすぎ。

林望先生が本作の文章を激賞してらっしゃるけれど簡潔丁寧で、リズミカルな文体もこれまたかっこいい。





自分の一番泊まりたいホテルに泊まり、自分の一番いいと思うレストランで食事をする

40年近くも前に書かれた、エッセイです。エッセイを書くなら、この本を手本にしたいです。さすが、山口瞳の推薦だけある。野口悠紀夫も薦めていました。

かっこいい人である。したがって、文章もかっこいい。映画、車、ヨーロッパ旅行、料理、英語、などの面白い話題が豊富です。体験に裏打ちされた知性です。

こんな文がありました。
「。。。つまり予算を立てない旅行、とでもいおうか。即ち、自分の一番泊まりたいホテルに泊まり、自分の一番いいと思うレストランで食事をする、、、どうしても買いたいものがあれば、無理をしてもどんどん買う、、、そういうことを通じて、物に動じなくなるとすれば、これは安いものではないか。」
うう、一度はこんな旅行をしてみたいです。


「ジャガー」を「ジャギュア」と表記するこだわり

  友人にデイムラーMrUを持っている人間がいる。一般にジャガーマークUと呼ばれることもあるが、彼は、頑なに「デイムラー」というし、仮にジャガーと呼ぶなら「ジャギュア」と言ってほしいといい続ける。私もキャブレター使用のローバー=ミニを新車で買って20年近く維持している。
 こうしたこだわりはどこから来るのか分からないが、そういう人生はいいと思う。
 この本を読んだ時には、伊丹十三は、我師「山口瞳」さんが時々取り上げる以外は、大した活動をしていなかったと思う。その中で、極めてディレッタントなこの本を出した彼の真意は何であったのだろうか?
 正直に言うと、最初にこの本を読んだ時に「何、突っ張ってんだよ」と思ったものである。
 しかし、それからしばらくして、彼が日本の映画に極めて重要な影響を与える多くの作品を「妻と」制作し、そして、不可解であるが、「男の矜持」のような死を選択したことは、全てこの本の中に、答えがあるような気がする。





退屈な時に、暇つぶしに読む本。

 海外(ヨーロッパ、とりわけパリ)の生活、買い物のこ
だわり(ジャグワー、ドライビンググローブ、ライターな
ど)、英語の発音などについて、筆者の体験談が書かれて
います。

 1960年代に海外で生活し、映画出演しているところなど
はかっこいいですが、中学生・高校生というよりも大学生
からフレッシュマンが読んだほうがいいかと思います。

 中学生から、スパゲッティの巻き取り方について講釈が
できるような人間は、ちょっとどうかなと思います。

 読みやすい文体なので、日曜日の午後にソファーで読むの
に適した本です。


「粋」な生き方を語る

こだわりと粋について網羅されているエッセイ。
また、英語の発音についても氏の俳優としての(ハリウッド映画に出演)経験に基づく見地が卓見。
軽く読めるエッセイであるが、個人的な参考書ともしたい本。



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モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号

柴田 元幸 
モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号
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村上春樹のインタビュー(インタビュアーは古川日出男!)

季刊の文芸誌。今号で創刊1周年を迎える。

今回は対話号とういうこともあり、村上春樹のインタビュー(インタビュアーは古川日出男!)と川上弘美と小川洋子の対談が目玉。

村上春樹のインタビューは、かなり長いが、二人のやりとりは飽きることがなく読めた。
小川洋子と川上弘美の対談もなかなか。

その他の作品では、福岡伸一の『隠された棘』が良かった。いい文章書く人だなぁ。


濃い内容に満足

村上春樹氏へのロングインタビューと、小川洋子&川上弘美 両氏の対談を読む目的で購入。

ロングインタビューでは、村上氏の「作家としての身体と心」が執筆に与えた影響、当時の文壇や世評をどう思っていたか、などが、詳しくうかがえて面白い。小川氏、川上氏の対談からは、正反対の創作指向性を持つふたりの意見が、絶妙なやりとりを交えながら響き合っていく様子に、両者の知性の奥行きを見るようで、こちらもとても面白かった。

目的以外のページにも、おもいがけなくうれしいものがあって、満足。

作家の内面性という、なかなか表に出る機会がないものを、深いレベルで結晶させてくれた柴田元幸氏(本誌・編集長)に深く感謝。こういう雑誌は、長く続いて欲しいものです。


大満足

村上春樹さんのインタビューを読む機会がなかったので最初のインタビューだけで、すでに満足でした!価値ありです。


「健全な身体に宿る不健全な魂…」

柴田元幸さん責任編集文芸誌『モンキービジネス』最新号には、村上春樹さんのロング・インタビューが掲載されています。

村上春樹、聞き手 古川日出男「「成長」を目指して、成しつづけて―村上春樹インタビュー」 『monkey business 2009 Spring vol.5 対話号』ヴィレッジブックス

70頁以上にわたるロング・インタビューで、読みごたえも充分。村上さんが珍しくも、自らの作品について、時代をおいながら、コメントしてくれています。小説を書くことに対する、村上さんのものすごくストイックな姿勢に、ひどく心打たれます。

『風の歌を聴け』からはじまって、もうすぐ発売される最新長編小説(『1Q84』新潮社、2009年5月29日発売予定)にいたるまで、村上さんが「みずから書きたいと思う小説」を、ただそれだけをひたすら書きつづけてきたということが、よくわかりました。言葉にすると簡単なようだけど、そんなことを心の底から言えるような作家は、世界でもおそらく数えるほどしかいないように思います。

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』を超える総合小説。村上さんが目指す先も、ほんのちょっぴりとコメントしてくれています。なんとも大きな話で、一読者としては、新刊長編への期待は膨らむばかり。

村上さんが同時代の作家さんで、こうやって最新の作品を楽しみに待つことができるのは、なんと幸せなことでしょう。その幸せをかみしめながら、新刊の発売を待ちたいと思います。

その他にも、僕の大好きな川上弘美さんが小川洋子さんと対談していて、お得感たっぷりです。こちらもまた、とっても楽しめました。


お腹いっぱいの一冊。

2008年12月の村上春樹氏と古川日出男氏と対談が
掲載されています。

先ず「肉体から小説を作る」という話題から始まり、
海外で書き始めたきっかけや、
「ねじまき鳥クロニクル」を書きあげた時の状況、
「アンダーグラウンド」に対する思い、
一人称から三人称への移行、

それから、アメリカの9.11事件の話から
なぜ村上作品が多くのヒトに
受け入れられているのか、

さらに、今後の活動について語られています。

彼は、平凡なヒトでありながら、
やはりすごいヒトなんだと、改めて思いました。
そして、イマの時代に適合したヒトなのだと思う。
新作がますます楽しみに。

もうひとつ、 本書で魅力的だったのは、
2大女流作家といってもいい、
小川洋子と川上弘美、お二人の対談。
とても興味深い話が展開されています。

小説を書き出した経緯、
物語を始める“とっかかり”や
“わたし”というもののとらえ方
小説との距離感の話。

お二人の作風の違いが顕著に表れている。

さるきちが特に気になったのは、
「輪郭の見える小説と顔の見えない小説」

小川氏は登場人物をじっと見て物語を作るといいます。
だから、細部まで描くことができる。

一方で川上氏は俯瞰しながら書くというのです。
だから、顔とか服装とかぼんやりしている。

こうした話が、最近の「猫を抱いて像と泳ぐ」、「風花」を初め、
「博士の愛した数式」、「どこから行っても遠い町」 など、
代表作を引用しながら語られています。

お二方の多くの著書を読まれた方には
とても楽しんで読める内容でしょう。


雑誌のメインテーマは「対話」。
それに基づき、詩や俳句、マンガ、
小説なども掲載されています。
お腹いっぱいの一冊です。



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日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

水村 美苗 
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賛成です。

全面的に賛成です。
どうやったらこういう国語の時間になるのでしょうか。
高校の時に読んだ漱石さんの「こころ」は忘れられません。
そういうことなんだと思います。


退屈な国語授業の増加なんてまっぴら

 日本国語教育学界の理事が勧めていたので読みました。5章までが良かったです。特に4章と5章の論述がとても良かったです。日本語の文字と日本近代文学の成り立ちについて、くっきりした形がとらえられたような気がしました「普遍語」と「現地語」と「国語」という定義の仕方に納得しました。
 ただ、6章以降の感情的な部分には、異論があります。義務教育で日本人全員を二重言語生活者とする目標は、表向きの目標です。教育を受けたって、どうせ出来ない人には出来ないのです。能力は平等じゃありませんから。だから無駄だと思っていても、平等に教育すればいいじゃありませんか。
 退屈な文学作品の解説をえんえんと受ける国語授業の苦役は、復活してはいけません。楽しく読めるような工夫が必要です。そっちの方を考察してほしいです。


機械翻訳というオプション

ドルが世界通貨になり英語が普遍語になった。一方我が”日本語”は、”円”の相対的価値低下にともなう遠心力で、急激に地位を落としていくかもしれない。”英語”と”ドル”。いまや地球上に住む人類でこの連関から逃げ出せるものはいないだろう。“EURO”や“元”が世界通貨に加わりつつある、という事実もあるが、通貨と異なり普遍語の地位は簡単に引き下がらない、と著者はいう。

「流通するが故に流通するという点では<普遍語>は<世界通貨>よりも、より純粋に自動運動を続けられる。大英帝国が滅びてから半世紀ほどで、ポンドはドルに<世界通貨>の地位を譲ったが、ローマ帝国が滅びてからなんと十世紀にわたってラテン語はヨーロッパの<普遍語>として、しぶとく生き延びた」P50

本書の趣旨では、英語をマスターしなければならないのは当然のこととなる。ここからは個人的な未来予想図であるが、別なオプションがあるかもしれない。たとえば機械翻訳がそうだ。水村氏は自動翻訳機の可能性については否定的だが、検索エンジンの翻訳能力向上はすさまじい。確かに、西洋語と日本語間の翻訳ではまだまだであるが、数年前にくらべればはるかによくなった。日本語とよく似た文法である韓国語とでは、すでにかなり正確な翻訳をおこなうことができる。「話し言葉」を近代日本文学での「書き言葉」に翻訳できるプログラムがあるならば、あまり好ましいやり方ではないのかもしれないが、体裁的に「書き言葉」は残っていくだろう。


個人的「想い」「思い入れ」が強すぎる

著者の生い立ち,個人的経験が論旨の進め方を強引で押しつけがましいものにしている.
彼女が守りたいものは,大所高所からは「日本語」「日本の文化」「日本文学」などになるのだろうが,根本的には彼女の「文学少女としての自分自身の人生を肯定したい,認めてもらいたい」欲望が感じられてしまう.
著者の主張にも一理あるとは思ったが,300頁以上を費やしてくどくどと何度も念を押しながら述べてもらわなくてもいい,最後までつき合う必要のない本だと思った.著者の願望に個人的理由も感じられたから尚更だった.
時間を無駄にしたような後味の悪さが残った.


正しくは「近代日本文学」が亡びるとき

ではないでしょうか、この本の主題は。けっして日本語を語っているのではない。なんとなれば、現代の日本語は、やはり1000年前の日本語とも異なるはずだし、おそらくその時代の人がタイムスリップしてきても会話にはならないでしょう。かように日本語は変化していくし、外来語も入ってきて入り混じり、また100年もすれば日本語と呼ばれる言語も、今のそれとはかなり異なった形になっているはず、でも「亡びる」わけではない。また、インターネットにより実は日本語に限らずあらゆる言語が生き延びる可能性を高めていると思われます。一方で、研究者などを除き確実に近代日本文学は読まれなくなっていくでしょう。テーマがあまりに過渡的であり、「カラマーゾフの兄弟」など永遠に読み継がれるであろう文学作品に比べて人間存在の核心に迫る迫力が欠けているのかもしれないし、時代の制約もあったのかもしれない。その辺は、文学者村上春樹さんあたりに本当は語って欲しいし、この本の作者には荷が重過ぎるのではないですか。公立の図書館で借りて読めば十分です、敢えて購入する価値はないと思います。


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灯台守の話

ジャネット ウィンターソン Jeanette Winterson 岸本 佐知子 
灯台守の話
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物語を物語ることに拘る作家。

彼女の作品の魅力を語ろうと思えば、おそらく本が一冊書けてしまうに違いない。それくらい多様で、言及すべき事柄にあふれているのだ。たぶん、こうやって三冊の本を読んできたぼくにしても、彼女の作品に隠されている数多くのたくらみをすべて回収してる自信はない。それほどに奥深く、隠喩に満ち、行の背後に潜む解釈が多いのだ。だからといって、難解なわけではない。これは訳者である岸本佐知子さんによるところが大きいのだろうが、書かれている文章は非常に平易でわかりやすいし、切り取られた場面が頭に入りにくいということもない。
だが、彼女の描く世界は寓意に溢れているのである。その感覚はかのティム・バートンの作り出す世界にも類似して悪夢的でさえある。それが作品世界に共鳴し、独特の雰囲気を醸し出す。そして、そこから紡ぎだされる物語は、反復と進化を繰り返し読む者の頭の中に長く居座るイメージを構築するのである。本書で語られるのは盲目の灯台守に引きとられた孤児シルバーの物語だ。だが物語を司る灯台守ピューが毎夜語る百年前の物語「バベル・ダーク牧師の数奇な人生」が侵蝕してき、やがてダークとシルバーの物語が交錯して、語り手がピューからシルバーに変わり、話はどんどん加速していく。物語を物語るという行為は、世界の創造にも似た崇高で確信犯的なたくらみに満ちている。そこには、愛の物語もあるし、裏切りの物語もあり、喜びの物語もあれば、失意の物語もある。そして、ただ一ついえることは、物語には決しておしまいがないということなのだ。『物語るという行為で人は救われる』というメッセージを発信し続けているウィンターソンの、これは再生の物語であり、真実を求める物語でもある。短い話ではあるが、やはりどこをとってもウィンターソンの描く世界が満喫できた。やはり、ウィンターソンはいいなぁ。これからもずっと読んでいきたい作家である。


自分の「物語」を探す旅

「わたしたちの家は、崖の上に斜めに突き刺さって建っていた。椅子は残らず床に釘で打ちつけてあり、スパゲティを食べるなんて夢のまた夢だった」
最初のページでこの数行を目にすれば、斜めに傾いだ家のかたちを思い浮かべずにはいられない。
私生児として生まれ、すべり落ちないために母さんと体をひとつに結びつけて育ち、やがて灯台守見習いとなったシルバー。
灯台守のピューが夜ごと聞かせてくれるふしぎな物語の主人公、バベル・ダーク。
ふたつの人生が交錯し、物語にみちびかれて、シルバーは旅に出る。

風のひと吹きでちりぢり、ばらばらになってしまいそうな、あやうい物語の断片たち。
それでいて、夜の真ん中にそびえたつ灯台のような、強烈な求心力もある。
ふたつの相反する力をあやつり、ぎりぎりのラインで物語を成立させるバランス感覚において、ウィンターソンというひとはたぶん、天才なのだと思う。

「物語」という概念が、この小説のひとつの大きなテーマになっている。
かつて、地図の読めない海の男たちは、世界中にちらばる灯台を物語でおぼえた。
物語を語ることが、灯台守の大切な仕事だった。
やがて灯台は無人化され、物語は忘れられた。

ほんとうに? ほんとうに忘れられたんだろうか。
それは世界のどこか、バベル・ダークが見つけた岩の割れ目のような秘密の場所に、ひっそりと隠されているのかもしれない。
それを探しに出かけ、掘り出してメッセージを聴きとり、人びとが読むことのできる共通の記号、言葉に変換するのが、たとえばウィンターソンのような、作家の仕事なのかもしれない。


物語のチカラ。

私たちは
大好きなパートナーや家族や友人やご近所や職場の同僚や
この社会をともに育んでいる方々に、
いつも少しだけ多めに期待しているのかもしれない。
まぁ、自分のことを棚上げにして。

だから、時どきがっかりさせられ、
それがたび重なればとても疲れるし、
いたる所で自分がひき裂かれているような気分を
味わうことさえ少なくないだろう。
でも、そんなときは“いたる所”で物語を語るんだ。

『灯台守の話』の主人公シルバーは父を知らず、
幼くして母を亡くした少女として私たちに語りかける。
そして、すでにその光を必要としなくなりつつある時代の灯台で、
盲目の灯台守ピューと暮らし始める。

著者のジャネット・ウィンターソンは私と同じ年に、
英国北部の工業都市マンチェスターで孤児として?生まれる。
多くの場合“狂信的”との形容詞を付される
ペンテコスタ派を信仰する養父母に育てられたが、
同性愛者ゆえに家を追われる。

もうひとりの主要人物──ダーク牧師を含めて、
この物語に登場する人びとの境遇は幸せとはほど遠い。
しかし、その悲惨さが物語として語り直されることで、
やけに明るくなる。
それは、様々な職業を転々としながらも
独学でオックスフォードにたどり着く
著者の内面に通底しているものなのだろう。

少しだけ我慢して読み進めてほしい。
いつしか幸せな気分に包まれている自分に気づくはずだ。

Tell me a story, Pew.

What kind of story, child?
A story with a happy ending.
There's no such thing in all the world.
As a happy ending?
As an ending.

私たちが主人公のいくつかの物語だって、まだ始まったばかりだ。


no other words,

なんてきれいなんでしょう。

わたしはジャネットの熱いファンなので、レビューというかファンレターですけど。
彼女の言葉のすべてが心にビシバシと迫る。です。

マドンナやグゥィネス・パルトロウもファンを公言されているそうです、、、マドンナ、いい人やー!


人を愛し信じ続ける事で、人生は幸せに導かれて行くのだろう。

1985年「オレンジだけが果物じゃない」でデビュー以来イギリス文学界をリードしてきた女流作家ウィンターソンが2004年に発表した傑作長編です。著者は孤児として生まれ、その後紆余曲折があって苦労され、また90年代には批評家の誤解を招いて批判されるという辛い経験をされたそうです。本書は著者の分身のような孤児となった少女シルバーが不思議な盲目の灯台守の老人ピューに引き取られ、夜毎に100年前に生きた牧師ダークの人生の物語を語り聞かせられる事で貴重な何かを学んでいき、世間に揉まれて苦労しながらも、人生を乗り越えてゆく物語です。老人ピューとシルバーの会話で、ハッピーエンドのお話をねだるシルバーに、この世におしまい(エンド)などありはせん、と返すピューの禅問答めいた掛け合いの言葉が印象的です。私が本書の中でもうひとつ心に残ったのは、牧師ダークが独白する言葉「彼は自分の人生の異邦人だった」で、ダークは裕福な身で前途洋々たる人生を送っていながら、ふと心に懐疑の念を抱いた為に道を踏み外して迷い何時しかジキル博士とハイド氏の如き二重人格の悪党に成り下がってしまいますが、自業自得とはいえ急激に襲い掛かった運命の過酷さを思うと深い憐れみを感じずにはいられません。ダークとシルバーの人生の対比を考えると、幸せと不幸せはほんのわずかしか距離がなくて、例えば信じる事と疑う事が人を一瞬の内に光と闇に分けてしまうのだろうかという思いに駆られました。


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