TOP > Amazon 関連商品検索  

飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)

ケストナー 丘沢 静也 
飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)
定価:¥ 500
新品最安価格:¥ 500
『飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)』の関連商品を見る
クチコミ情報

正義を象徴した独逸文学

「ブリキの太鼓」ギュンター・グラス
「朗読者」ベルンハルト・シュリンク
「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ

ゲーテやシラーを除くといまいち他国よりもパンチに欠けてる気がするドイツ文学の中で
煌めきを持って読み継がれている(私が単に知らないだけなのですが)数少ない作品だと思います。
土地柄や時代的な不遇さが関係しているのか伊・独文学のはらむ陰鬱さは日本人が
社会生活で抱えるそれとよく似ている気がします。
本国(ドイツ)での位置付けはよく分かりません。私は友情の綺麗さから映画版のドラえもんのような印象を受けました。
正義感や倫理、道徳、純粋さの最終防衛ラインと言うか、20歳で読んだ当時私個人は割と感動したものです。
微妙な嘘っぽさを指摘されると自分の過去の感覚に羞恥心あたり出そうですが、
飛びたくなるような機会に不自由はしない今の世の中で
取り戻せない過去を純粋に懐古するぐらいの事は各々に許容されても不利益が無いはず。


ジェンダー観が古臭い

ジャンプで「飛ぶ教室」という漫画が連載された時にも、
ケストナーがブームになった記憶がないが、
なんで今頃あちこちのブログで話題になっているのか判らなかったが、
新訳で出てたからかw
生きるのに役立つ名セリフ満載の本だが、
小説としては書き込みが浅くてタルイよな。
小学生の男子に読ませるなら有効だが、
おっさんが今頃これを読んで感動していては恥ずかしいよな。
「金持ちであることと有能であることは別問題」等の
良識ある大人には当たり前のことばかり書かれています。
国を滅ぼしても自分の利益しか考えない
政治家や官僚に読ませるべきテキストか?
でも、全体主義や資本主義に汚染された現代には、
もう、この本の持つ力はほとんどないと思うよ。
ウーリの命を賭けた勇気の提示も、
今の子供たちには、
「馬鹿じゃん!」とか「つまんないあてつけしやがって!」
と思われて、ウーリへのイジメはなくならないと思いますw
イジメ対策はやはり谷沢永一 先生のおっしゃるように、
「いじめっこの太腿をナイフでブスッと刺す」
のが有効だと思います。
戦えないのなら逃げるのみ。
学校の中で飛び降りても問題は解決しないと思いますよ。
男は勇気が無ければいけないという、
古臭いジェンダー観は乗り越えてない古い作品である。
良作ではあるが、古典として闇に消えていてもよかったと思う。
他校との喧嘩とか、貧乏な生徒の問題の解決も、
ご都合主義すぎないか?
教師のポケットマネーで解決するには、
現代の貧困格差はありすぎるであろう。
というか、いい先生ばかりでムカつきました。
自分を犠牲にして子供を救う先生なんて、
現代ではほんと御伽噺だよね。
子供を素晴しい人間に成長させるために読ませる価値はあるが、
子供を救う力はこの本にはあんまり残ってないと思う。
子供を救うのは夜回り先生に任せて、
子供が嫌いな私は面白い本を読んで自分を救うことに専念しますw


「犬のように」忠実な翻訳

mocoさんのレビュー(2007/9/12「翻訳が特殊です」)に驚いた。「訳者が足した説明」があるから、というのが理由らしい。
そこで、光文社文庫と、もっとも信頼できる版の原書と、mocoさんおすすめの講談社文庫をならべて、読んでみた。

その結果、光文社文庫の翻訳は、とても原書に忠実だった。訳者は、カフカ「変身/掟の前で」の訳者あとがきで、「オリジナルにたいして犬のように忠実に」が翻訳の方針だと書いているが、それはこの「飛ぶ教室」にも当てはまる。

mocoさんは、講談社文庫を物差しにしてしまったから、「特殊」だと思ったのだろう。
むしろ講談社文庫のほうに、ちょくちょく訳し忘れがある。たとえば、光文社文庫139ページ2行目〜5行目の部分などが、すっぽり抜けている。最後まで「原書と見比べた」なら、すぐ気づくはずだ。あるいは、mocoさんの見比べた原書が、まともなバージョンでなかったのかも?

そうそう、光文社文庫で最初のほうに一箇所だけ、「訳者が足した説明」を見つけた。Tertianerの翻訳だ。「ギムナジウムというのは、9年制の中高等学校のことだ。大学進学予定の子どもが、4年間の小学校をすませて10歳で入学するのだが」(19ページ5行目〜6行目)と追加している。
mocoさんは、これに気づいたのかもしれない。しかしこれは、「訳し込み」という翻訳のテクニックだ。
光文社古典新訳文庫は、訳注はつけない方針らしいから、「訳し込み」が必要になることがある。「飛ぶ教室」の話の舞台である「ギムナジウム」については、どうしても説明が欠かせない。だが目立つ「訳し込み」は、この一箇所だけだった。

最初から最後まで、じっくり原書と見比べながら読んでみて納得したのは、ケストナーの古びないスマートなドイツ語が、カットされず忠実に、良心的に翻訳されているということだ。


いいな、不自由じゃなくて

不思議な題名に惹かれて小学生のころに読んだはずだけど、記憶が薄れて、しょせんは子供の文学さという気持ちがあった。古典新訳文庫に入っていることに驚き、思わず手が伸びた次第だが、大人が読む作品とわかって二度吃驚! グッときた最大のポイントは、少年たちと大人二人の素敵な交流、というより、その交流が大人と子供という、節度も理由もない決めつけから抜け出して、かえって節度ある人と人との交わりが描かれている点だ。そういえば、昔はこういうふうに、面と向かって自分を一人前に扱ってくれる大人が、身のまわりにもいたはずだよな。いまの自分がそうである自信はまるでないけれど、その記憶が妙に新鮮に、そしてヴィヴィッドに蘇ってしまった。人生はかくあるべきもの。さすがケストナー、そして訳者。かわいい孫や子がいるまだ若い人という人たちに、とくに一読をおすすめします。

「基礎」としての『飛ぶ教室』

 ひどく登場人物はステレオティピカルで、そこがこの『飛ぶ教室』の最大のミソである。類型的だからこそ、読者は本の中に入り込む努力を少なくして、イメージを受け取ることができるのだ。その削ぎ落とされた感覚が、温かいストーリーとあいまって読者を感動させる。完璧で、堅牢なのだ。ところどころに出てくる、狙いすぎの感もあるアフォリズムもピタリと決まってるし、ストーリーもストンと落ちていて読後感も良い。

 そのような意味で、小説に求められる、基礎的な要素がこの本に詰まっている、と感じた。

 ただ、所詮児童文学だろ、とバカにしながら読むと、類型的な人物が鼻についてしまい、楽しめないのかもしれない。

 あとがきの辛辣さもこの本の愛すべき点である。光文社の新訳文庫は、あとがきが中々面白いので結構気に入っている。



この商品を買った人はこんな商品も買っています:車輪の下で (光文社古典新訳文庫) | 初恋 (光文社古典新訳文庫) | ちいさな王子 (光文社古典新訳文庫) | 猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫) | 秘密の花園 (光文社古典新訳文庫) | 
関連商品を探す:『飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)』

変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

カフカ 丘沢 静也 
変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)
定価:¥ 440
新品最安価格:¥ 440
『変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)』の関連商品を見る
クチコミ情報

カフカを読むなら本書から

初めてカフカの「変身」を読んだのはおそらく中学生の頃。
今でも憶えているのだが黄色いカバーの文庫本(たぶん新潮社?)だった。
結局、なんとも不可解きわまる内容で、とりあえず読了したものの、その後何度か手には取っても再読することがないまま、その文庫本はどこかにいってしまった。
典型的なカフカの読後リアクション?


時は流れて・・・。
最近の「新訳ブーム」に乗っかって手にした本書。
比較的すんなり読み通せたのは、「いま、息をしている言葉」(新古典文庫のキャッチコピー?)による新訳だからか?
それとも、30年の歳月を経た僕自身の変化か?
本書の解説によると、当時手にした「変身」と本書では底本が別である、とのこと。その違いか?

いずれにせよ「意味不明」の誉れ高い?カフカの代表的作品たちであり、確かに極めてカフカ的な作品たち、しかも好都合?にも短編ばかりが収められている本書。
このご時世にカフカを読むなら、本書から始めるのが良いかも。■


意義深い新訳

クラシック音楽におけるピリオド楽器によるオケの演奏は、ほとんどの場合好まない。特にベートヴェンやバッハの多くについては。
訳者は翻訳(これはある意味演奏と同様の行為だ)における「ピリオド奏法」を謳い、実践している。高橋義孝訳、池内紀訳を併読したが、この丘沢訳が一番しっくり来た。といってもドイツ語を解するわけではなし、先行訳にも美点は大いにある。
『変身』は、怖ろしい物語だ。筋だけを辿っていても、この力強さは旧約聖書に匹敵する。こういう真の世界文学の新訳は大歓迎だ。『星の王子様』程度のお子様物語の新訳に躍起になるのはどうかと思うが、『カラマーゾフ』といい、本書といい、意義がある。
そういえば『カラマーゾフ』の訳者・亀山郁夫は『罪と罰』にも取り掛かっているらしい。
光文社古典新訳文庫には大いに期待したい。


小説を変身させるのは訳者と読者。


簡単な言葉で訳すことで、カフカの天才が出てきた。
養老猛司の言うように、自分は自分のままと思い続けた主人公ザムザは不気味だ。
だが、それ以上に頭に引っかかったことがある。家族はなぜ馬鹿でかい虫をザムザだと思ったのだろう。
馬鹿でかい虫に目がいって、家族の視点で読んでしまいそうになるにこらえて、
ザムザの視点で読み進めていきました。人生は切ない喜劇でした。


楽しい不条理

判決、変身、アカデミーで報告する、掟の前で、の4編を収録。

カフカの作品といえば、面白くないという印象がある。
作品の内容は、わけの分からない状況に置かれた主人公が右往左往するのを淡々と描くだけなので、読んでいるこちらも訳が分からす、それが延々と続くので、ただ退屈なだけ。
評論家はとそれを不条理とかなんとか難しいことを言って高く評価しているけれど、やっぱりだた退屈なだけ。
あまり読みたくない作家だ。

しかし、そういうカフカ像を産むに至ったのは、どうやら原典の編集段階に問題があったらしく、また、日本訳にもいろいろ問題があったらしい。

史的批判版」に基づく本書は、カフカのそんなイメージを覆す。
なによりも読んでいて面白い。退屈で無味乾燥なカフカではなく、筒井康隆のある種の作品に近い感じ。いやもっと近いのは、やはり吾妻ひでおのマンガだな。

考えてみれば、不条理というのは、主人公がヘンな目に遭わされて困っているということだから、「笑い」とかなり近いところにいるはずだ。不条理作品を読んで笑いが出てくるのは、だから、そんなにおかしなことではない。というよりもむしろその方が自然なのではないか。

最後の「掟の前で」は、いかにもいろいろな解釈をしたくなるような結末だが、「なんだこれ?」、という感想だけでも十分ではないか。
カフカを楽しめる一冊である。


よりカフカに近い翻訳

収録作品は『判決』『変身』『アカデミーで報告する』『掟の前で』です。
クラシック音楽でピリオド奏法が受け入れられていることを受け、
翻訳するに当たって丘沢氏は「相手の流儀をまず尊重」(168頁)するとしています。
そのため本書は史的批判版カフカ全集を底本としています。
この版は、現在のところ、カフカの書いたものが
最もそのまま提示されているとされます(164頁)。

全体として一文一文は短く区切って訳されていて、リズムカルです。
しかし、本書の魅力はこれまでの翻訳でカットされていた箇所
がしっかり掲載されている点です。
例えば、「訳者あとがき」(178頁)によると『判決』(23頁)の
今までカットされていた「答えが質問に衝突したのだ」
という一文が掲載されています。
このように、これまで削り取られていた箇所を掲載したことで
読者の側に時間的な余裕が生まれ、他方で登場人物の心情の変化が
今まで以上に分かるようになったと思います。



この商品を買った人はこんな商品も買っています:車輪の下で (光文社古典新訳文庫) | 幻想の未来 文化への不満 (光文社古典新訳文庫) | 若者はみな悲しい (光文社古典新訳文庫) | 訴訟 (光文社古典新訳文庫) | 地下室の手記(光文社古典新訳文庫) | 
関連商品を探す:『変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)』

赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)

スタンダール 野崎 歓 
赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)
定価:¥ 1,020
新品最安価格:¥ 1,020
『赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)』の関連商品を見る
クチコミ情報

誤訳は増刷のたびに訂正されていくのでだんだんよい本になるでしょう。

野崎氏の訳について、スタンダール研究会の会報で指摘された「誤訳」箇所のいくつかを、原書・英訳書・新潮文庫の和訳書・本書をつきあわせて検討してみました。一つ例をあげると、原文では「レナール氏の部屋からいびきが聞こえた」と書いてあるのに、野崎氏の訳(第2刷)では「レナール夫人の寝室の扉で耳を澄ますと、寝息が聞き分けられた。」と書いてあります。これは明らかな誤訳です。原文にあるM.(男性につけるムッシュの略称)を、女性につけるマダムの略称と間違えているのです。不思議なのは、フランス語学者で「赤と黒」の愛読者であると言われる野崎氏が、こんな単純な間違いをするはずがないということです。とすれば、この部分は、フランス語の基礎学力がなく、しかも「赤と黒」をこれまで読んだこともない人間が訳したと考えざるを得ません。なお、この誤訳箇所は、第3刷では、「レナール氏の寝室の扉で耳を澄ますと、いびきが聞こえた。」と改めてあります。その他の誤訳箇所も、今後の増刷のたびに訂正されていくと思いますので、購入される場合は、もう少したってからのほうがいいかもしれません。
なお、文体の面については、特に画期的といえるところはなく、あえて野崎氏の訳を読む必要はありませんので、野崎氏のファンでなければ、新潮文庫や世界文学全集などの既訳を読まれるとよいでしょう。


新しいジュリアン・ソレル

私はフランス語は全く読めないし、他の訳は今まで読んだことがないので誤訳のことはよく分かりません。ですからこの本を呼んだ感想を素直に書くことにします。

分かりやすく、読みやすい訳でナポレオン失脚後のフランスをジュリアンの情熱と共に駆け抜けたようでした。
読みやすかったからこそ、早く読め、原作の駆け抜けるような勢いや熱情を感じ取ることが出来たと思います。

何故言葉は国、人種、時代によって変わるのでしょうか?
それは生活習慣が違うからだそうです。
ですが人間の心はどんな状況でも変わりません。
だからこそ海外の本の翻訳が盛んに行われたり、時代を超えて源氏物語などの古典は読まれるのでしょう。
翻訳というものは『今、その土地で生きている人』のためにかかれるものだと思います。
読みやすいものはその作品の価値を下げるものではないと私は思います。


読みやすい

光文社古典新訳文庫は読みやすさを主眼においています。ですから訳文が日本語的に読みやすく訳されているのが最大の強みです。「赤と黒」は既に岩波などから出版されていますが、光文社の訳に比べると読みにくいのが現実です。非常にきれいな訳文で読みやすいのが非常に良いです。文法的にどうかといえば個人差によります。既に評価が定まった作品だけに新たに読まれて岩波などの訳文と読み比べるのも良いかもしれません。この企画は非常に好感が持てます。何より敬遠されていた古典をこれだけ読みやすく、親しみやすくした光文社には脱帽しますし、訳された訳者にも脱帽します。


この商品を買った人はこんな商品も買っています:赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1) | 車輪の下で (光文社古典新訳文庫) | 変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1) | 肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫) | アンナ・カレーニナ〈2〉 (光文社古典新訳文庫) | 
関連商品を探す:『赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)』

赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)

スタンダール 野崎 歓 
赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)
定価:¥ 800
新品最安価格:¥ 800
『赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)』の関連商品を見る
クチコミ情報

それでもなお、読みたい飜訳

この飜訳は、刊行直後にスタンダール研究者を名乗るある大学教師から、誤訳が多分に含まれているとして厳しく批判されたものである。その書評を読み、なおかつ原文と読み比べて検討した結果、やはりこれは価値のある飜訳だと思ったのでレビューを書かせて貰うことにした。実際、指摘されている箇所に関しては翻訳者のケアレスミスもあろうし、むしろ評者の言いがかりに近い、取るに足らないものもある。ミスは今後、版を重ねる上で訂正されていけばいいだろう。しかし問題は、こうした書評が出た途端に、実際には原文と読み比べることもしない(あるいは出来ない)多くの読者やレビュアーたちが、「これは間違いの多い飜訳だ」などと知った顔で囃し立ててしまうところにある。なぜか日本の読書界では、誤訳の指摘は受けが良い。飜訳大国ならではという肯定的な見方も出来なくはないけれど、私はやはり、こうした風潮に危機感を覚えざるを得ない。元来、スタンダール研究者の訳読と、現代の一般的なフランス語話者ないしフランス語の読める読者の読み方は、必然的に異なるはずだ。私見では、この作品の仏語原文は疾走するようなスピード感が魅力の一つであるが、過去のスタンダール研究者による飜訳では、残念ながらそれは損なわれてしまっている。それは、一語一語時間をかけて意味を確定していく専門の作家研究者の宿命でもあると、私は思う。この野崎訳では、これまでの飜訳で表現されていなかったスピード感が充分に味わえる。その意味で稀有な飜訳だと思うし、これだけ思い切りの良いスタンスをとることが許されるのは、幾多の飜訳を手がけてきた野崎だからこそとも思う。なお、スタンダール研究者による飜訳に興味を持たれる向きには、少し古いけれども小林正の立派な仕事があることを付け加えておく。

臨場感のある情景描写を評価すべき

誤訳の多さから「誤訳博覧会」と酷評する人もいますが、瑣末な誤訳よりも、現代にも通じる形でスタンダールの作品をよみがえらせることができた点を評価すべきだと思います。スタンダールの醍醐味は、硬質ながらもスピード感のある文体です。スタンダールの情景描写は、本来ならば臨場感を伴って読まれるべきなのです。今回の野崎氏の訳では、映画評論家として活躍されていることもあり、特に情景描写の部分が現代的な言葉で訳されています。そうした訳が軽いという評価もあると思いますが、今どき旧訳のように「熱い接吻」などと言われてもピンと来ません。

古典は幾度も読み返しのきく文体であるべきです

小生の大学時代にはスタンダールの「赤と黒」を、ガリマール版でとぼとぼ読んでは、岩波文庫の桑原訳の耽美さに感動しながら、自分の訳し方を逐語添削していったものです。それほどヒマなことをしては全編読み終えました。ここにその当時のノートがあります。
いま、新訳を右において、原書と照らし合わせてとぼとぼ読んでは、野崎訳の訳文のひどさに嘆息を漏らすしかありません。
読み易ければ良し、とする出版社の方針は必ずしも古典の復興にはつながりません。古典は幾度も読み返しのきく文体であるべきです。文法的な誤りや文意の取り違えは、すでに古典の翻訳ではないでしょう。


数百カ所の誤訳がある「誤訳博覧会」だそうです。

日本スタンダール研究会の会報に掲載された下川茂氏の書評によると、大小合わせて数百カ所の様々な誤訳がある「誤訳博覧会」のような翻訳だそうです。もちろん、なかには誤訳とまで言えるかどうか微妙なところもあるでしょうし、翻訳者にはある程度大胆な意訳をする自由もあるでしょう。しかし、ネット上でも入手可能な下川氏の書評を読んでみると、たしかにこの誤訳はそのレベル以下のものがあまりに多いようです。下川氏の指摘に対して光文社の編集部は、そんなのは些細な問題だ、とか、文句があるなら自分で新訳を出せ、と開き直ったそうです。どこが些細な問題なのでしょうか。

私は最初この翻訳を読んだときに、読みやすい翻訳ではあるものの、ところどころなんか変だなという違和感を感じたのですが、多数の誤訳がその原因だったようで、納得いきました。はっきりいって、これは翻訳としては欠陥商品で、金返せといいたいくらいです。

しかし、「誤訳博物館」として貴重な資料となりますし、原書と比べ合わせて読んで、どんな誤訳をしてしまうのかを調べると、フランス語や翻訳の格好の教材となります。そのような資料、もしくは教材として利用するならば、十分な価値がありますので、ぜひ絶版や改版せずに、そのままの形で出版を続けてほしいと思います。


読みやすい新訳

「パルムの僧院」と並ぶ、スタンダールの代表作。
本書の主人公、ジュリヤンも「パルム〜」の主人公と同様にナポレオンを崇拝し、
出世の野望に燃えている。そのジュリヤンのギラギラした情熱は、現代の日本人にはちょっと理解し難く、
決して共感できるキャラクターとは言い難いが、当時のフランスの激動の時代を背景にした力強いストーリーには自然と引き付けられる。
本書の面白い所は、二人の女性(レナール夫人とマチルド)との恋愛ドラマの側面と、野心家ジュリアンの出世ドラマの側面が上手く絡み合っている所だと思う。
もう少し上手く立ち回れば、主人公はいくらでも成功出来たと思ってしまうのだが、
あえてそうならなかったのは、この物語が実話が基になっているからだけでなく、ナポレオンの悲劇的人生と重ねようという意図があったのではなかろうか?
本書のように非常に読みやすい新訳が出たのはとても有難いのだが、
下巻がなかなか出ないため仕方なく新潮文庫の下巻を読んでしまいました。




この商品を買った人はこんな商品も買っています:赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫) | 車輪の下で (光文社古典新訳文庫) | 変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1) | 肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫) | アンナ・カレーニナ〈1〉 (光文社古典新訳文庫) | 
関連商品を探す:『赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)』

宝島 (光文社古典新訳文庫)

スティーヴンスン 村上 博基 
宝島 (光文社古典新訳文庫)
定価:¥ 720
新品最安価格:¥ 720
『宝島 (光文社古典新訳文庫)』の関連商品を見る
クチコミ情報

「大人の」宝島

本書の翻訳は、これまでの「宝島」に抱いていたイメージを、かなり変えてくれる。
もともと、この作品は、冒険心に富んだ少年少女向けと思われがちだが、原書はそうではないと思う。
作品が執筆された当時は、少年少女の皆が、これだけの長文を読破出来るだけの、教育が十分ではなかった様だ。

そのため、イギリス本国および世界中で、少年少女向けの、要約版が、多種類出版されている。
ところが、本書のこの翻訳は、内容などから見て、大人向けだと感じる。
描写がリアルで、妙に生々しい箇所が多い。
ただ、少し、スリルに乏しい感はある。

また、大人の観点で、作品を眺める事が出来る。
宝を探すというロマンあふれる行為と引き換えに、一艘の船から、おびただしい数の人命が失われる。
たいていの人は、金や宝石の類を目の当たりにすると、理性が吹っ飛ぶのだが、裏切り者シルヴァには、最初から理性など無かった。
この様な、人間の非常に醜い部分が、そのまま醜く描かれているが、そういう点でも、大人向きだと思う。

冒険心に富んだというよりも、しっとりとした、「大人の」宝島だ。


迷訳

 小学生の頃、胸をワクワクさせて何度も読み返した思い出から、再び手に取りました。改めてスティーヴンスンの原作の素晴らしさを感じました。
 しかし、この翻訳は良くないように感じました。海賊たちの歌に「死人箱島」という歌詞がありますが、直訳過ぎる感じを受けました。頭の中で「棺桶島」と読み替えてみました。「白波紳士」という漢字には『しろなみ』とルビが振られていますが、一般的には『しらなみ』でしょう。
 そして帆船に関する訳注の乏しさ。スクーナーと書かれても船の形が思い浮かばない方が多いのでは。幸いに私の場合は「海皇紀」という漫画のお陰で基礎知識があったので、読みこなせましたが。私の場合は、スクーナーという船を知るまでは、帆船の帆は進行方向に対して垂直に張るものだと思い込んでいました。
 しかし本書の最大の欠点は、躍動感が感じられないことです。原作の持つ冒険譚特有のスリルや、主人公の好奇心による行動力が伝わってきません。翻訳者が少年のような心で原作を読んではいないのではと思いました。それ比べると今読んでいる福音館文庫の「宝島」は読んでいて楽しく、面白いです。「死人箱島」も「亡者の箱」と訳し、注で実在の島の名と記されています。怖ろしげな島の名前というニュアンスが伝わってきて、この方がスマートだと思います。
 新訳文庫の割には、翻訳に真新しさが感じられませんでした。原作は良くできた古典だなと再認識できましたが。


ついにやりました。無声映画が3D、カラー、ドルビーに。

古典新訳文庫がスタートしてからずっと楽しみにして読んできました。
いつかは、作品のイメージを変えるようなホームラン翻訳が出てくると期待していましたが、ついにやってくれました。翻訳家村上氏の50年間の夢をかなえてという翻訳なのですが、見事大ホームランです。
これまで新潮版を2回購入し2回とも挫折していた私ですが、本を開くや、躍動感とrealityにあふれる展開の速い描写に、宝島が実際に目の前に現れ、波がたたきつける岸壁の近くを小船で旅をし、海賊たちとの戦いに実際に参加することが出来、3時間後には大満足で本を読み終えていました。圧倒的なリアリズムと速い展開、魅力的な悪役シルバー、冒険小説はこうでなければと改めて小説を読む楽しさを思い出させてもらいました。

私が挫折してきた、昭和26年初版の新潮版は丁寧な翻訳なのですが、一読、英米文学作品宝島なのです。
「わたしは前部上甲板の風下の側にいたので、やはり風を受けて膨らんでいる大帆が邪魔して、後甲板のある部分は私には見えなかった。人影はまったくなかった。あの謀反以来一度も洗った事のない甲板の板には、たくさんの足跡がついていた。そして首をたたき割られた空き瓶が一本、排水孔の中を生き物みたいにあっちこっちに転がっていた」(新潮文庫)

対する村上版は、ハードボイルド翻訳、簡潔で生き生きとしています。

「立ったところは前甲板の風下側で、まだ風をはらんでいる主帆が邪魔をして、後甲板の全部は見えなかった。視界に人影はなかった。反乱が起きてから一度も磨いていないデッキには、無数の足跡がのこり、首をもがれた空き瓶が一本、排水溝のなかを生き物のように、あちらへこちらへ転がっていた」(古典新訳文庫)

今回、村上版宝島を読み、この作品が奇跡のようなすばらしい冒険小説であり、多くのハリウッド映画や娯楽映画、文学の原点なのだという事をかみ締めました。

いままで、私と同じように宝島が楽しめなかった人々へ、何か面白い小説を読みたいと考えている人に、またパイレーツ オブカリビアが好きなあなたに本書を強く勧めます。

Dead man's chestという名称に対して日本語できれいな適訳を見つけるのはむずかしですね。棺桶島は適当でないでしょう、死人箱島は、多分、佐々木直次郎訳に対する翻訳者の敬意だと思います。一つの単語で、名訳、迷訳が決まるのではなく全体のreadability、言葉の選び方、主語述語のつながり、はっきりいって言葉選びのセンスだと思います。





この商品を買った人はこんな商品も買っています:飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫) | 車輪の下で (光文社古典新訳文庫) | 秘密の花園 (光文社古典新訳文庫) | 赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫) | 人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (光文社古典新訳文庫) | 
関連商品を探す:『宝島 (光文社古典新訳文庫)』

初恋 (光文社古典新訳文庫)

トゥルゲーネフ 沼野 恭子 
初恋 (光文社古典新訳文庫)
定価:¥ 440
新品最安価格:¥ 440
『初恋 (光文社古典新訳文庫)』の関連商品を見る
クチコミ情報

中学生には早かった作品

私が初めて読んだ外国文学の作品です。中学3年生のときでした。

「ウラジミール少年が初めて愛した人は…」

どこかの雑誌に載っていた書評にこの一文のみが書かれていました。中学生時代の私は日本文学、特に戦後派と言われている作家の作品をよく読んでいました。この本も彼らの描く恋愛要素の入った小説に近いかと、勝手に想像して読みましたが、読後に後悔したのを覚えています。本の内容、スピード感などすべてが今まで読んできた小説とは明らかに異なり、2日間眠りにつくことはできませんでした。(大げさではなく事実です)

新訳が出版されたと言うことで、早速買って読んでみました。しかしあの時のような感情が湧き起こりませんでした。訳が悪いとは思いませんがなぜでしょう?


トゥルゲーネフの自伝的な忘れ得ぬ初恋

カラマーゾフの兄弟を読み、古典(ロシア文学)も面白いと思い
ロシア文豪の一人であるトゥルゲーネフの本書を読んでみました。

16歳の少年が年上の女性に初恋をした時から、最後の幕切れまで
著書の自伝的要素を織り込んで描かれています。

少年の心のときめき、不安、虚無感等がみずみずしく描かれており
個人的にはBeethovenのクラシックのように、主人公の歓喜、純粋さ
誠実さ、一途さ、抱えている不安といったものが(読み手の)心に
すっと入ってきました。

自分が忘れ(かけ)た若い頃の感覚をふと思い出してみたい方は
主人公といっしょに、19世紀のロシアにタイムスリップするのも
悪くないと思います。



よしもとばななを読んだような不思議なtexture。

25年ぶりに本作品を読みました。以前は角川文庫で読みました。夜中寝室で、古典を読むんだという意気込みで、難解な文章を読み解くように読みました。十分理解できたようで、理解できなかったようで、でもジナイーダの美しさが心に残りました。
今回は、40前後の男が自分の初恋を思い出すという部分にやけにしみじみとしたものを感じてしまいました。
わかりやすく、丁寧で、上品な翻訳のおかげで最初の1ページを開いた瞬間から、ふと気がつくと最後のページまで一気に読めていました。
ツルゲーネフを読んだというより、よしもとばななを読んだような不思議なtextureを楽しんでいました。
これが、新訳の力なのでしょうか。
とにかく、古めかしさをどこかに感じることもなく、古典を読めるということに素直に感謝します。
この文庫シリーズのおかげで、古典がとても身近なものになりました。
有難うございます。


気になる少女

ロシア文学はちょっと難しそうで苦手だったのですが、
ぱらぱらめくってみると、上品かつひきこまれる語り口。
よかったです。

親しい三人の男たちが、自分の初恋について話をする。
うまく話せないので、ノートに書いてくるといった一人の男の、
初恋の話がこのお話の主な部分を構成しています。
彼が16歳のとき。奔放な年上の美少女。
やがて現れる、彼女の心を奪う男。

少年の、彼自身の心をあからさまに、誠実に書かれています。
しかし、それ以上に、少女と、男の気持ちが心に残ります。
特に、奔放だった少女の、恋による変化の描き方は
凛として、悲しく、美しいです。



ペールヴァヤ・リュボーフィ

主人公ウラジーミル・ペトローヴィチは、ジナイーダの逢引相手を殺すよう「唆さ」れ、
ナイフを手にします(121ページ)。
ナイフを「男性器」と見なすとすれば、ウラジーミルは大人の「男性」になろうとしていたことが分かります。
しかし、ジナイーダの逢引相手が自分の「父」であると知ると、
ナイフを手から落とし、逃げ出します。
このように、若人ウラジーミルが大人の世界の現実の前に衝突し、そして悩みながら
内面的に成長していきます。
彼の成長は沼野女史の新訳によってみずみずしさを帯びていると思います。
さて、トゥルゲーネフは『初恋』で農奴制などロシアが抱える問題を随所に盛り込ませている、
と沼野女史は指摘しています。
一方で、「唆す」や「父親」などロシア文学においてよく見られ、
かつとても重要な問題がある、と私は加えておきます。



この商品を買った人はこんな商品も買っています:鼻 外套 査察官 (光文社古典新訳文庫) | 飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫) | イワン・イリイチの死 クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫) | 地下室の手記(光文社古典新訳文庫) | リア王 (光文社古典新訳文庫) | 
関連商品を探す:『初恋 (光文社古典新訳文庫)』

1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編 (光文社古典新訳文庫)

O・ヘンリー 芹澤 恵 
1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編 (光文社古典新訳文庫)
定価:¥ 700
新品最安価格:¥ 700
『1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編 (光文社古典新訳文庫)』の関連商品を見る
クチコミ情報

構成、編集、選択の妙味

 全部で23編の短編が収められています。オー・ヘンリーの短編の魅力の一つに、落ち、結末の味わい深さが挙げられますが、本書ではそれが十分に味わえます。以前読んだ経験のある作品も多いのですが、改めてそれぞれの作品の良さを知った思いです。
 本書では、性格の異なる作品を選択し、それぞれ巧みな構成・順序の配列をし、一つひとつの作品が際立った光を放っています。他社から発刊されているものとは味わいの異なる短編集となっています。オー・ヘンリーを初めて読む方にはもちろん、読んだことのある方にもお勧めの1冊です。


O'Henryの伝えたかったもの

ある日O'Henryは、銀行の金を横領した罪で起訴され、病気の妻と娘を残して逃亡した。

翌年、妻の危篤を知ったO'Henryは家にもどり、妻の看病したが、その甲斐なく妻は病死した。
妻の死後、O'Henryは懲役5年の刑に服し、服役中に多くの作品を書いた。

釈放された後、娘と義父母が待つピッツバーグで新しい生活を始めたが。
娘を残してニューヨークへ。O'Henryは、幼なじみと再婚。娘を呼び寄せ、新しい生活を始めたが。

しかし過度の飲酒から体を壊し、肝硬変により死亡した。

O'Henryの作品の多くはは、病死した妻へ宛てた謝罪の言葉なのかもしれない。 


魅力的な編み方

 O・ヘンリの短編集は新潮・岩波ほかで既に刊行されているので、後発のこの本は何を特徴としているのかが閲覧者の関心事と思います。
 まず第一に、訳文が新しく、読みやすいということが挙げられます。海外ミステリの翻訳で知られる芹澤さんの訳は簡潔かつ明瞭で、内容によく合っており、現代の読者にフィットするでしょう。
 そして、第二には一冊の「編み方」が挙げられます。O・ヘンリの作品の量は膨大で、必然的にどの文庫も短編選となるのですが、この本はその他のものに比べ、短編の選択と順番にこだわっているように感じます。
 最初に「多忙な仲買人のロマンス」「献立表の春」など、比較的知られており、明るい作品を入れ、中途に「意中の人」「靴」など、あまり知られていない話を含め、そして最後の部分に「最後の一葉」「賢者の贈り物」などの代表的な傑作を集めるなど、彼の作品を読んだことがある人にもない人にも効果的にアピールできる編み方になっています。
 読み終えたあと、「賢者の贈り物」を最後に持ってきたことに感嘆しました。この作品はO・ヘンリ自身の心情がよく表れた、あたたかな語りで締めくくられ、あたかもこの一冊すべての話を締めくくっているかのように感じられるからです。
 解説も充実しており、O・ヘンリをよく知ることのできる一冊だと思います。気軽に読めるのでお薦めします。
 ちなみに私は「二十年後」が最も好きです。


クセになる

O・ヘンリーの短編集、23編入りです。

「賢者の贈り物」「最後の一葉」のような超メジャーなものから
これまであまり知られてこなかった南部や西部を舞台にした
短編も多く紹介されています。

お話のおもしろい、親戚のおじさんにお話を聞いているような
軽妙で洒脱で、皮肉も人間への愛情も織り込まれた、不思議な語り口。
何本も読むうちに、だんだん著者の語り方にはまっていきます。

「賢者の贈り物」や「最後の一葉」、「ミス・マーサのパン」などの話は
子どものころ読んで筋は覚えていたものの、改めて読み直すと
登場人物のディティールに、以前よりずっと深い印象が生まれました。
初めて読んだ「赤い族長の身代金」や「甦った改心」もすごくよかったです。

恋愛のお話が意外に多かったのですが、皮肉な結果に終わることが多く
なかなか成就しないのはちょっと残念でしたが。



この商品を買った人はこんな商品も買っています:八十日間世界一周〈上〉 (光文社古典新訳文庫) | 飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫) | 黒猫 モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫) | 鼻 外套 査察官 (光文社古典新訳文庫) | 車輪の下で (光文社古典新訳文庫) | 
関連商品を探す:『1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編 (光文社古典新訳文庫)』

ちいさな王子 (光文社古典新訳文庫)

サン=テグジュペリ 野崎 歓 
ちいさな王子 (光文社古典新訳文庫)
定価:¥ 580
新品最安価格:¥ 580
『ちいさな王子 (光文社古典新訳文庫)』の関連商品を見る
クチコミ情報

様々な社会批判や風刺が込められた傑作

子供向けのファンタジーだと勝手に思い込み、未読のままでいたのだが、
これは完全に大人向けの童話であり、様々な社会批判や風刺が込められた傑作である。
本書の解釈の仕方については多数の本やサイトで色々書かれているので、ここではあまり触れないでおくが、
やはり執筆された第二次大戦当時の社会情勢の影響が強いと思われる。
本書を読むことになったきっかけは、箱根の「星の王子さまミュージアム」に行って興味を持ったからなのだが、
やはり読んでからミュージアムへ行くことを強く勧めます。


淡々とした語り口も気持ちのよい新訳

 砂漠で遭難した飛行機乗りと小さな星から地球にやってきた王子さまの出会い。悲しみややさしさを包み込んだような言葉は、幾つになっても心に残るものを与えてくれる。キツネに教わる「大切なものは、目に見えない」という言葉など、心に残る言葉がこの本にはたくさんある。良く知られているサン=テグジュペリの作品の、新訳の一つ(原作の日本での著作権保護期間が2005年に満了し、いくつかの新訳が続けて出ている)である。

 この新訳では、表紙はこの「新訳文庫シリーズ」に共通する(しかし、内容も少しイメージする)新しいデザインになっているが、原版の挿絵もちゃんと著者の原版からカラーで用いられているので、しょうしょう小型ではあるが、原作の雰囲気は保たれていると思う。あとがきに訳者が「記録に残されている、作者の太くやわらかく、楽しげであったかい声で朗読すべき本であること」を目指して訳したと書いている、淡々とした語り口の文章も、気持ちがいい。

 翻訳、ということについて感じたことを一つ。上にも挙げたキツネとの出会いはとても重要な部分の一つである。ここに「自分がなつかせた相手に対して、きみはいつまでも責任がある。きみはきみのバラに責任があるんだよ・・」という言葉があるが、この「なつく」というのがどういうことなのか、と考えたりして、多分翻訳者も苦労をしたところではなかったろうか、とちょっと他の翻訳も調べてみたくなった。よい作品であるからこそ、自分の感じた通りの言葉に翻訳したい、との思いも強いだろう。こういったことが多くの新訳を生んだのだと思う。良い作品、深い作品ならでは、である。
 どの訳であれ、この作品の伝えたい「大事なもの」は変わらない。しかし、違った訳で読んでみて、違ったところに気付くこともあるかもしれない。短い作品である。何度でも読んで欲しい。


ちいさな現代の「教典」

本書112頁の大切なものは目には見えない、
など静かな文句が読者をはっとさせるでしょう。
いわゆる近代合理主義思想によって、人間は知恵をフル回転させ、
科学技術を次々と発展させています。
これで人間は物質的に豊かな生活を送れるようになりました。
その一方で孤独化も同時に起きてしまいました。
お金だけを稼ぐだけの人生、他者に命令するだけの人生。
人間にそれぞれの役目だけをさせることは効率的ですが、
どこかむなしいです。
「合理的」ということの表と裏について考えさせていただけました。



この商品を買った人はこんな商品も買っています:飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫) | 星の王子さま (集英社文庫) | 星の王子さま (ちくま文庫) | 車輪の下で (光文社古典新訳文庫) | 新訳 星の王子さま (宝島社文庫) | 
関連商品を探す:『ちいさな王子 (光文社古典新訳文庫)』

旅のラゴス (新潮文庫)

筒井 康隆 
旅のラゴス (新潮文庫)
定価:¥ 460
新品最安価格:¥ 460
『旅のラゴス (新潮文庫)』の関連商品を見る
クチコミ情報

こんな風に生きてみたい

ここには、どこまでも、自分の人生を生きていく人間の姿があります。
多くの出会いと別れを経ながら、旅を続けるラゴスの姿に、なぜか泣けてしまいました。


濃密な読書体験!

一遍一遍が長編小説になっていいんじゃないかと思うくらい濃密です。
人間一人の長く短い人生がこれには詰まっています。
この厚さでこれだけ感銘を受けた小説は数えるほどしかありません。
筒井康隆さんの偉大さが身にしみるようでした。
おすすめです。


あたかも自分が旅に行ってきたような

面白くて、通勤電車の中や昼休みなどに、寸分を惜しむようにして、一気に読んでしまった。
読後、しばらくたって、ふとこの本のことを思い出した。自分はこの本を読んでいる間、自宅(新宿区)と職場(港区)の間を往復していただけなのだけれど、なんだか長い間とても遠くに旅をしていたような不思議な感覚がした。


人は誰でも旅人・・・

旅というのは、人生に役立つ何かを得ることができると同時に、何かを
捨てなければならないものでもある。いろいろな人たちとの出会いと別れ、
さまざまな体験を繰り返すラゴス。そんなラゴスの旅で特に印象に残ったのは、
ボロ村でのできごとだった。ドームの中でひたすら本を読むラゴス。そんな
彼にアドバイスを求める村人たち。ドームの中のラゴス自身は何も変わらない
のに、ドームの外の村は急速に変化していく。「人間とはこういうものなのだ。」
作者の声が聞こえてくるような気がした。
求めていたもの。30年たっても変わらず求めていたもの。それが分かったとき、
ラゴスは再び旅に出る。求めているものは得られたのだろうか?笑顔で旅を
終えることができますようにと、願わずにはいられない。人は誰でも、人生という
道を歩く旅人なのかもしれない。この作品を読んでそんなことを感じた。


「人生そのものが旅である」〜詩情とロマンに溢れた秀作

遥か昔に、異星(恐らく火星)から高度な文明を持ってやって来た祖先が、時が経つに連れ文明を失う代償として、人類が転移、予知などの特殊能力を身に付けた時代を背景に、ひたすら旅を続ける「ラゴス」の姿を描いた作品。「ラゴス」がナイジェリアにあるアフリカ第二の都市名である事と、乾いた文体から舞台はアフリカ北西部と想像される。

ラゴスの旅の一応の目的は、祖先が降り立ったという"キチ"という南の村で祖先が残した書籍を読む事である。"キチ"は宇宙"基地"の意であろう。しかし、キチに辿り付くまでの過程を読むと、旅そのものが宿命とも言える。壁抜け芸人の悲哀。怪鳥と大蛇の町。ラゴスを愛する女達との非情とも言える別れ。銀山での奴隷生活。全ての人に愛着を持たれながらも、ラゴスは南を目指すのである。そして愛馬スカシウマとの友愛は詩情さえ感じさせる。元々北の都市部で教育を受けたラゴスが書籍で得た高度な知識を活かす事によって、キチの村は栄え王国になるが、ラゴスは現代人がその高度な知識を用いる事の危険性を感じる。逆進化論者の筒井としては格好の題材の筈だが、物語はあくまで静かに進行する。そしてラゴスはキチを去り、また旅に出る...。

出逢いと別離、そして再会。略奪賊と友好的村人。現実と甘酸っぱい回顧。旅の最中でのこうした感情・状況が構成力豊かに描かれる。特に、スカシウマとラゴスが同化して谷を飛ぶシーンは美しく、ここで終っても良かった。故郷に戻ったラゴスはダ・ヴィンチよろしく万能学者として活躍するが、時代のレベルを忘れない。技術先行の現代への警鐘と言える。「人生そのものが旅である」。"氷の女王"を目指して、ラゴスはまた旅に出る...。詩情とロマンに溢れた秀作。



この商品を買った人はこんな商品も買っています:笑うな (新潮文庫) | 虚航船団 (新潮文庫) | 家族八景 (新潮文庫) | エディプスの恋人 (新潮文庫) | パプリカ (新潮文庫) | 
関連商品を探す:『旅のラゴス (新潮文庫)』

善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)

フリードリヒ ニーチェ Friedrich Nietzsche 中山 元 
善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)
定価:¥ 1,000
新品最安価格:¥ 1,000
『善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)』の関連商品を見る
クチコミ情報

ニーチェと、あの人

 以下のような文章は、興味深く読んだ。

深い苦悩を味わったすべての人は、精神的な自負心と吐き気を感じているものだ。(中略)こうした人は、自分の苦悩のために、もっとも賢い人やもっとも知恵のある人が知りうる以上のことを知っているという確信を抱き、その確信によって彩られているのである。

自分について多くを語るのは、自分を隠す手段でもある。

大政治家、征服者、発見者などは、もはや見分けがたくなるまでに、自分の創造したもののうちに変装している。じつは「作品」こそが、芸術家や哲学者の創造した「作品」こそが、それを創造したとされる者を作り出すのだ。(中略)彼らはしばしば飛翔を試みるが、それはあまりにも拭いさりがたい記憶を忘却したいがためである。泥のなかにはまりこんで、ほとんど耽溺してしまうことが多いし、沼の周囲をさ迷う鬼火のようになって、しかも自分を星だと偽る(中略)彼らはまた長く去らない吐き気と闘い、繰り返し訪れる不信の幽霊と闘うが、この幽霊こそが彼らを冷たくし、栄光を焦がれ求めさせる

 やがて私は、ひとりの作家が放った言葉たちを、ニーチェのそれと並べていた。

叡慮ハ是非ヲ越エタモノデス(「右大臣実朝」)

愛によってなされたことは、つねに善悪の彼岸にある。(本書)

人間は、みな、同じものだ。
これは、いつたい、思想でせうか。僕はこの不思議な言葉を発明したひとは、宗教家でも哲学者でも芸術家でもないやうに思ひます。民衆の酒場からわいて出た言葉です。(中略)
この不思議な言葉は、民主主義とも、またマルキシズムとも、全然無関係のものなのです。それは、かならず、酒場に於いて醜男が美男子に向かつて投げつけた言葉です。ただの、イライラです。嫉妬です。思想でも何でも、ありやしないんです。(「斜陽」)

イエスの生涯について語られている聖なる寓話や仮装のもとには、愛についての知のもっとも痛ましい実例が潜んでいることは、十分に考えられることなのだ。きわめて無辜であり、きわめて強く欲望する[イエスの]魂が殉教したのだ。この魂はいかなる人間の愛にも満足できず、愛することと愛されること、ただそれだけを渇望したのである。そして過酷であり、ほとんど狂っていて、[みずからの]愛を拒む者には恐るべき激怒を向けたのだ。愛に於いて飽くことを知らず、足ることを知らなかった哀れな者の歴史である。(本書)

私は、それ以来、人間はこの現実の世界と、それから、もうひとつの睡眠の中の世界と、二つの世界に於いて生活してゐるものであつて、この二つの世界の体験の錯雜し、混迷してゐるところに謂はば全人生とでもいつたものがあるのではあるまいか、と考へるやうになつた。(「フォスフォレッスセンス」)

「昼にあったことが、夜に起こる」というが、その反対のこともある。わたしたちが夢の中で体験することは、それが何度も繰り返されると、わたしたちの魂の全体の構成のうちの一つの要素となり、「現実に」生きられた経験のようになってしまうものである。(本書)

なんにでもなれるのである。(中略)女性の細胞は、全く容易に、動物のそれに化することが、できるものなのである。(中略)一夜彼女が非常に巨大の無氣味の魚を、たしなみを忘れて食ひ盡し、あとでなんだかその魚の姿が心に殘る。女性の心に深く殘るといふことは、すなわちそろそろ、肉體の細胞の変化がはじまつてゐる證拠なのである。(中略)教訓。「女性は、たしなみを忘れてはならぬ。」(「女人訓戒」)

わたしたち男は、女が啓蒙によって自分の恥をさらしつづけないことを願うものである。(中略)〈女は女のことに口を開くなかれ!〉と呼び掛ける者こそ、女性の真の友であると思うのだ。(本書)

 れいによって、ひどくだらしないレヴューになってしまった。お粗末さまでした。


正義を貫く姿勢を───

一通り目を通して、私には深く理解することが
できなかったと、正直に告白しよう。
ニーチェの考えた思想の連関を100%どころか
10%すら見えていなかったのではないだろうか。

「ツァラトゥストラかく語りき」「善悪の彼岸」「道徳の系譜学」
これが一連のニーチェの思想のつながりある作品群です。
当時、「ツァラトゥストラかく語りき」が不発に終わり、
改めてニーチェの言葉で「善悪の彼岸」を発表し、
「道徳の系譜学」でさらにテーマを掘り下げたとされる。

ニーチェはそれらに巧みな魔法の仕掛けをして、
読者はつぶさに見逃さないように読み進めなければ、
思想の連関を把握し得ないという作りになっている。

私は気付かず通り過ぎてしまった。
特に優れた読者ではないけど、全くもって見えなかった。
これが理解できる人はそれだけで凄いと拍手を送りたい。
それほどニーチェの仕掛けた魔法は分かりづらいものです。


文意がすっと胸に落ちる名訳

「真理が女であると考えてみては――、どうだろう?」という有名な書き出しで知られる本書は、ニーチェの主著といってもよいだろう。『ツァラトゥストラ』のように詩的に舞い上がることなく、『道徳の系譜学』のような論文様式でもなく、いかにもニーチェらしい鋭いアフォリズム形式で書かれており、どこを読んでもその卓抜な表現に唸らされる。内容的にも、キリスト教道徳、西洋形而上学、西洋近代への批判、通俗的なものと高貴なもの、学問批判、ワーグナー論、女性論、力への意志、超人思想など、ニーチェ哲学の諸要素がバランスよく盛り込まれている。本書を通読すると、ニーチェは20世紀のデリダ等に連なるポストモダン思想家であることがよく分かる。中山氏の新訳は明晰で切れがよく、一読して意味の核心がすっと胸に落ちる。例えば、新約聖書があまり出来のよくないギリシア語で書かれていることを皮肉った§121を、既訳と比べてみよう。「げに意味深いかな――。神が著作家たらんとしたとき、まずギリシア語を学び、しかも平人以上によくは学ばなかった」(竹山道雄訳、新潮文庫)。「神が著作家になろうとしたとき、ギリシア語を学び、――しかも普通より以上によく学ばなければならなかったことは、何とも妙味のあることだ」(木場深定訳、岩波文庫)。「神が物書きになろうとしたとき、ギリシア語を学んだということは味のあることだ。――しかもあまりよく出来なかったということも」(本訳)


この商品を買った人はこんな商品も買っています:道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫) | 故郷 阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫) | 幻想の未来 文化への不満 (光文社古典新訳文庫) | 罪と罰〈3〉 (光文社古典新訳文庫) | 人間不平等起源論 (光文社古典新訳文庫) | 
関連商品を探す:『善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)』


カテゴリ一覧
このページについて?

TOP > Amazon 関連商品検索
PC・家電・CD・DVD  |  2009/11/24