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空飛ぶ木―世にも美しいメルヘンと寓話、そして幻想的な物語

ラフィク シャミ ロート レープ Rafik Schami Root Leeb 池上 弘子 
空飛ぶ木―世にも美しいメルヘンと寓話、そして幻想的な物語
定価:¥ 1,680
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「童話?」「いやいや」

「あ~~、もう今忙しいんだからぁ・・」とか思って入るのに、気がつくと、お話を一章分読んでしまっている。

なんだか小さい頃のお母さんとかにお話を聞かせてもらっている時のあの感覚。「これを読んだら、もう寝るのよ。」と言われてるのに、終わった途端に「ねぇ~~、もう一個読んで?」と言ってしまったことって、1度くらいあるでしょう?この人のほかの本を読んでも感じるんですが、本当に人をお話の世界に引き込むのが上手(拍手っ!!)私くらいの年齢になると(17歳です)最後は幸せになるのね?と安心して読めてしまうような童話は、少しずつ退屈に感じるようになりますよね?

が。この人の書くお話は、すっごく一生懸命な主人公が、何故か最後まで救われず、そしてそのまま終わってしまった!周りのみんなに馬鹿にされていても本当は世界一幸福だったりする主人公、といった感じで、単純なサクセスストーリーなんかでは全然無くて、思わず共感させられる様な物語ばかりです。

全然知らない異国の地でも思ってることはさほど変わらないんだなあと、笑いつつも、何となく嬉しくなってしまいました。

強欲な人や、支配欲が強い人、自分のことしか考えない連中(アレッみんな一緒だったかな?)型にはまった事しか信じず、新しい思想を理解しようとしないものにたいしては、風刺を利かせて面白おかしく書きつつ、痛烈な批判の目を向けていて、私としては結構爽快でした。

逆に、みんなと違うということで差別されるものや、正しいことをしているのに理解されないもの達への作者の優しい視線も感じて、本当にあったかい気持ちにさせられました。 


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マルーラの村の物語

ラフィク シャミ ロート レープ Rafik Schami Root Leeb 泉 千穂子 
マルーラの村の物語
定価:¥ 1,631
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異国の香りに包まれて心を開放する

著者のラフィク・シャミはシリア生まれで成人してから西ドイツに移り住んでいる。著者はある偶然から故郷であるシリアのマルーラ村の人々と生活について書かれた本とドイツの図書館で出会い、感動する。その中から選りすぐった物語14篇と著者の創話が1篇収まられたのが、本書である。読み始めてすぐに、異国の香りに包まれ頭の中がひっくり返った。日本で生まれ育った私の常識や感覚では進んでいかない話の流れ。しかし、痛快で面白いのである。人間として健康的でまっすぐ。悩みを抱えている人も是非この本を読んでカラッとした笑いに心を遊ばせてください。


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蠅の乳しぼり

ラフィク シャミ Rafik Schami 酒寄 進一 
蠅の乳しぼり
定価:¥ 1,733
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夜と朝のあいだの旅

ラフィク・シャミ Rafik Schami 池上 弘子 
夜と朝のあいだの旅
定価:¥ 1,890
新品最安価格:¥ 1,890
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最高傑作

 アラビアを行くサーカスという物語の中に、入れ子のように小さな物語がいくつも入っている。それらがひとつに繋がり、美しい音をあやなしていく。
 
 美しい交響曲のような、建築物のような、織物のような、切子細工のような。そんなような例えはよく使われるけれど、この書ほどそれらの例えがぴったりくるものはないと思う。それほど技巧をつくして構成されているし、そのひとつひとつのディテールに驚きと喜び、悲しみや失望といった感情が丁寧にこめられている。

 誰が読んでも面白い本だが、特にある程度人生経験をつまれた方にぜひお勧めしたい本。


人生のほろ苦さ

赤字続きで経営の危機に瀕しているサーカス団長のヴァレンティンは、妻を亡くしてからめっきり老け込み、生きる喜びを忘れかけていた。

そんなヴァレンティンにもたらされた、一通の手紙。それは、アラブにいた頃の親友ナビルからの招待の手紙だった。
ガンに侵され、余命いくばくもないといわれたナビルは、残りの人生をヴァレンティンのサーカスと共に過ごしたいと言ってきたのだ。

費用は全部ナビル持ち。しかも、高額の準備金つき。そのお金で借金を清算し、まってもらっていた団員の給料も払えたヴァレンティンは、勇んでウラニアへと旅立つ。

サーカスでの様々なエピソードを縦軸に、ヴァレンティンの母親と父親の愛を辿る模索を横軸に、物語は回っていく。
あたかも、シェラザラードの千夜一夜物語のように、朝と夜のあいだの時間・ナッハモルグごとに語られる魅力的な物語。

作者のシャミは、シリアからドイツへの亡命者なので、物語はそのへんの事情も織り込まれている。ウラニアで大成功していたサーカスが、やがて、為政者の都合に翻弄されていく過程は、大変興味深い。

ナビルの語ったユーモアたっぷりの「おなら」話。サイコーに面白い話が、独裁国家では、命取りになったりする。うっかりジョークもいえないような国・・そんな国は悲しいな・・。

軽妙な語り口とは裏腹に、思いテーマを秘めた作品でした。

ザッハモルグ

ひとつひとつ、とても印象深い章題がつけられており、読む前からわくわくしてしまいます。また、次の章へと移る時の、早く読みたくてたまらなくなる、引き込まれる数々の文句に、気分はすっかりシェヘラザードの話を聴く王様。どこかゆったりと話は進んでいくようでいて、次々と山場が待ち受けていて飽きさせない。
朝と夜のドイツ語造語ザッハモルグ、という言葉が、この作品全てを支えていると思う。これは愛についての旅なのだ。朝と夜のあいだがなくなることがないように、この旅に終わりはなく、きっとどこかで続いていく。


惹きこまれました

ナンとも不思議な本でした。
恋愛小説でもあるし、精神世界風でもあるし、冒険物のようでもある。
多分、出版会社が小さいのであまり宣伝していないのでしょうが、
大手だったら、売れているんでしょうね。
こういう本、残念ですよね。
声を大にして、お勧めしたいです


間違えたっっ

上の星の数は間違えです!!!何故か2つだったけど、本当はもちろん星5つ分です!!!すいませんでした。


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ミラード

ラフィク シャミ Rafik Schami 池上 弘子 
ミラード
定価:¥ 1,260
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モモはなぜJ・Rにほれたのか

ラフィク シャミ Rafik Schami 池上 純一 
モモはなぜJ・Rにほれたのか
定価:¥ 1,680
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他のに比べて、いまいち

正直なところ、シャミの他の作品に比べると、あまり感心しなかった。
特に表題作は、初めにテーマありき、という感じで作為的、もっといえば嘘臭いものになっている。魂の奥底から泉のように湧き出て来た、という感じがしないのだ。
作者はこの作品によって、エンデのファンタジーが逃避的だと批判したいようだが、あまり成功しているとは思えない。まして批判が正鵠を射ているとも感じられない。少なくとも作品そのものの魅力は、エンデに遠く及ばない。
同植物を擬人化した作品にも、疑問を感じる。私が日本人だからかも知れないが、同植物は人間のように利己的で愚かなことをしない、と思ってしまう。やはり、この作者はシリア政府を皮肉ったり、ダマスカスを舞台にした作品が、一番生き生きと書けているように思う。
一つ面白いと思ったのは、「マルーラの竜」という作品の中で、『中国の子もアフリカの子も同じ竜の絵を描く』といいながら、翼のある竜を登場させていることだ。東アジアの漢字文化圏の竜には、翼はない。翼の力でなく、霊力で飛ぶからだ。
ヨーロッパからは同じ東洋と見られていても、中東はやはりアジアではないのだ。これがエンデだったら、こんな誤謬は犯さなかったはずだ。



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日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

水村 美苗 
日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で
定価:¥ 1,890
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賛成です。

全面的に賛成です。
どうやったらこういう国語の時間になるのでしょうか。
高校の時に読んだ漱石さんの「こころ」は忘れられません。
そういうことなんだと思います。


退屈な国語授業の増加なんてまっぴら

 日本国語教育学界の理事が勧めていたので読みました。5章までが良かったです。特に4章と5章の論述がとても良かったです。日本語の文字と日本近代文学の成り立ちについて、くっきりした形がとらえられたような気がしました「普遍語」と「現地語」と「国語」という定義の仕方に納得しました。
 ただ、6章以降の感情的な部分には、異論があります。義務教育で日本人全員を二重言語生活者とする目標は、表向きの目標です。教育を受けたって、どうせ出来ない人には出来ないのです。能力は平等じゃありませんから。だから無駄だと思っていても、平等に教育すればいいじゃありませんか。
 退屈な文学作品の解説をえんえんと受ける国語授業の苦役は、復活してはいけません。楽しく読めるような工夫が必要です。そっちの方を考察してほしいです。


機械翻訳というオプション

ドルが世界通貨になり英語が普遍語になった。一方我が”日本語”は、”円”の相対的価値低下にともなう遠心力で、急激に地位を落としていくかもしれない。”英語”と”ドル”。いまや地球上に住む人類でこの連関から逃げ出せるものはいないだろう。“EURO”や“元”が世界通貨に加わりつつある、という事実もあるが、通貨と異なり普遍語の地位は簡単に引き下がらない、と著者はいう。

「流通するが故に流通するという点では<普遍語>は<世界通貨>よりも、より純粋に自動運動を続けられる。大英帝国が滅びてから半世紀ほどで、ポンドはドルに<世界通貨>の地位を譲ったが、ローマ帝国が滅びてからなんと十世紀にわたってラテン語はヨーロッパの<普遍語>として、しぶとく生き延びた」P50

本書の趣旨では、英語をマスターしなければならないのは当然のこととなる。ここからは個人的な未来予想図であるが、別なオプションがあるかもしれない。たとえば機械翻訳がそうだ。水村氏は自動翻訳機の可能性については否定的だが、検索エンジンの翻訳能力向上はすさまじい。確かに、西洋語と日本語間の翻訳ではまだまだであるが、数年前にくらべればはるかによくなった。日本語とよく似た文法である韓国語とでは、すでにかなり正確な翻訳をおこなうことができる。「話し言葉」を近代日本文学での「書き言葉」に翻訳できるプログラムがあるならば、あまり好ましいやり方ではないのかもしれないが、体裁的に「書き言葉」は残っていくだろう。


個人的「想い」「思い入れ」が強すぎる

著者の生い立ち,個人的経験が論旨の進め方を強引で押しつけがましいものにしている.
彼女が守りたいものは,大所高所からは「日本語」「日本の文化」「日本文学」などになるのだろうが,根本的には彼女の「文学少女としての自分自身の人生を肯定したい,認めてもらいたい」欲望が感じられてしまう.
著者の主張にも一理あるとは思ったが,300頁以上を費やしてくどくどと何度も念を押しながら述べてもらわなくてもいい,最後までつき合う必要のない本だと思った.著者の願望に個人的理由も感じられたから尚更だった.
時間を無駄にしたような後味の悪さが残った.


正しくは「近代日本文学」が亡びるとき

ではないでしょうか、この本の主題は。けっして日本語を語っているのではない。なんとなれば、現代の日本語は、やはり1000年前の日本語とも異なるはずだし、おそらくその時代の人がタイムスリップしてきても会話にはならないでしょう。かように日本語は変化していくし、外来語も入ってきて入り混じり、また100年もすれば日本語と呼ばれる言語も、今のそれとはかなり異なった形になっているはず、でも「亡びる」わけではない。また、インターネットにより実は日本語に限らずあらゆる言語が生き延びる可能性を高めていると思われます。一方で、研究者などを除き確実に近代日本文学は読まれなくなっていくでしょう。テーマがあまりに過渡的であり、「カラマーゾフの兄弟」など永遠に読み継がれるであろう文学作品に比べて人間存在の核心に迫る迫力が欠けているのかもしれないし、時代の制約もあったのかもしれない。その辺は、文学者村上春樹さんあたりに本当は語って欲しいし、この本の作者には荷が重過ぎるのではないですか。公立の図書館で借りて読めば十分です、敢えて購入する価値はないと思います。


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ユリイカ2008年3月号 特集=新しい世界文学

ユリイカ2008年3月号 特集=新しい世界文学
定価:¥ 1,300
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イン・ザ・ペニー・アーケード (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

スティーヴン ミルハウザー Steven Millhauser 柴田 元幸 
イン・ザ・ペニー・アーケード (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
定価:¥ 998
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商品の紹介
ダルキー・アーカイブ・プレスが、ミルハウザーのあの素晴しい短編集を、アメリカ文学シリーズの1冊として再び世に送り出すことになった。巧みな描写力に加えて、人間の才知と酔狂に対するミルハウザーの深い洞察があますところなく発揮された物語の数々は、真実と超現実的な美しさの両方を兼ね備えている。

『Lives of the Monster Dogs』の著者、クリステン・バキスと、「アウグスト・エッツェンブルグ」を書いたミルハウザーは、同じ夜に同じ主人公の夢を見たのではないだろうか。両者とも名前をアウグストといい、両者とも創作家として、人間と人間もどきの違いは何かという難問に直面する。

主人公のアウグスト・エッシェンブルグは、ほんの短時間ではあるが、ほとんど生きていると見まがうほど精巧な動きをする、からくり人形を作りあげる。彼の技法はしかし、ハウゼンシュタインによって下劣な形で模倣される。ハウゼンシュタインが作ったのは、観客がより喜びそうなしろもの…セクシャルな側面が異様に強調されたからくり人形だった。うねるように動く巨大なヒップ、流し目の好色な顔、そして大きな胸。芸術は大衆娯楽のえじきとなった。そしてアウグストのパトロンは、彼の人形ではなく、お色気ロボットの方を選ぶのである。

カフカの「断食芸人」のように、アウグストもまた、経済状況を顧みず、芸術家としての衝動に駆り立てられるまま自らの芸術へと戻っていく。この衝動こそ、独立系出版社という名の芸術家にも求められるものではないだろうか。


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スノードームのような世界

まるで、スノードームのような作品。
「物語」というよりは、「作品」と呼びたくなる。
小さく細密で、その世界はこのうえなく美しいのだけれど、同時に世界はそこだけで閉じていて、孤独でもの悲しい。

19世紀は、幻燈や映画などが登場した「光の時代」であり、また「大衆化の時代」でもあった。
「アウグスト・エッシェンブルグ」は、大衆化していく時代の、芸術家の孤独さと矜持を描いている秀作である。

失われていくものへの夢やロマン、ノスタルジアは、感傷的に過ぎてあまり好きではないのだが、ここまで徹底的でしかも完璧だと、いっそ見事と脱帽してしまう。
それくらい、職人的な細密描写と、この時代の雰囲気が、うまく描かれている。


過去に見た景色

遠くに見えるディーゼル列車のスピードは遅く、
小学生の足でも追いつけそうだった。
十字路から5本目の電信柱まで、誰もいない農道で、毎日列車と競争をした。
大声援が聞こえ、勝者への祝福さえも聞こえてきた。
走りきった後、すぐには息があがって、答えられない。
けれど、小さなガッツポーズでその拍手の音に答えていたりした。

あのまま、どこまでも走り続けていたのなら、
孤独にして無敵の、マラソンランナーになれたはずだった。


天才からくり人形師の人生を描いた「アウグスト・エッシェンブルク」が、抜きん出て素晴らしかった

 その道の名人が、精魂込めて作り上げたガラス細工の陶器のような作品。冒頭の「アウグスト・エッシェンブルク」が、収録作品中では群を抜いた出来映えで魅了されました。
 十九世紀後半のドイツ。からくり人形の天才的な作り手、アウグスト・エッシェンブルクの人生を、映画のフィルムが回るように映し出して行くストーリー。芸術と卑俗なものとの衝突、夢の成就にひた向きな芸術家の信念とジレンマ、時代の流れに浮きつ沈みつする人生。そういったモチーフが、鮮やかに文章の中に盛り込まれていたところ。素晴らしかったなあ。
 物語の最初のほう、十四歳の誕生日を迎えたアウグストが、父親のヨーゼフと入った緑のテントの中で自動人形に魅せられてしまうシーン。彼とからくり人形との運命的な出会いを描いたそのシーン辺りから、魔術的、蠱惑(こわく)的な魅力を持つ話に夢中にさせられましたね。文章によるデッサンが実に精緻で、静かな気品をたたえていたのも味わい深く、好ましかったです。
 この珠玉の名品のほか、「太陽に抗議する」「橇(そり)滑りパーティー」「湖畔の一日」「雪人間」「イン・ザ・ペニー・アーケード」「東方の国」を収録した一冊。
 柴田元幸氏の訳文は、とても読みやすいものでした。


描写フェチ・ミルハウザーの世界に酔う

「マーティン・ドレスラーの夢」(白水社)で、濃密に延々と書き込まれるホテルの描写に唖然としつつも陶酔感を覚えたぼくは、「あの世界」に帰りたくなって本書を手に取った次第である。現実と非現実の境界を華麗に行き交う独特な世界観は本作でも如何なく発揮されている。19世紀のドイツを舞台にした中篇小説では、時計を動かす歯車の仕組みから始まって世にも不思議なからくり人形たちまで、それらの「モノ」たちの美しさ、妖しさにうっとりしてしまう。札幌雪祭りをひとつの町で丸ごとスケールアップして狂気的に行ってしまう短篇では、加熱する作品の競い合い、その個々の完成度にクラクラと眩暈がする。オリエンタルな国の博物記といった具合の作品では、そこで語られる幻想的な数々の事象にとりとめもなく惹かれ続けるのであった。

ガラス玉の向こうに

「ペニー・アーケード」とは、小銭1枚(=1ペニー)で遊べる、遊園地のゲームコーナーのこと。子どもの頃、誰もが時がたつのさえ忘れて夢中になった不思議な空間。あの胸弾む感覚が、この本の中にはびっしりとつめこまれている。しかも、とてもエレガントに。第一部にあたる「イン・ザ・ペニー・アーケード」では、少年時代、小さな町のほの暗い博物館の片隅で、一枚の動く絵に心を奪われてしまった、天才からくり人形師の生涯が描かれている。時代という名の大きな流れに立ち向かった彼の背中は、透明なガラス玉のように美しい。


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バーナム博物館 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

スティーヴン ミルハウザー Steven Millhauser 柴田 元幸 
バーナム博物館 (白水uブックス―海外小説の誘惑)
定価:¥ 1,155
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自然な世界から怪奇・幻想の世界へ

表題作を含めた十編の短篇集です。
この「バーナム博物館」が、この本のタイトルになっているのには大きな意味があると思います。
と言うのは、「バーナム博物館」では、この博物館の性格等が語られているのですが、ある意味で、この本全体が「博物館」かも知れません。
「バーナム博物館」では、「自然な世界から怪奇・幻想の誤った世界へ」とか「不思議の殿堂」と言う様な言葉を使って、この「博物館」を表現しているのですが、まさにその言葉が、この本全体に与えるべき言葉だろうと思います。ですから、「バーナム博物館」は、この本のガイドブックと言えるのかも知れません。その意味では、この作品から読んだ方が読みやすいかも知れません。
「千夜一夜物語」や「不思議な国のアリス」などを題材に採った短篇もなかなか面白いのですが、個人的には、映画化もされた「幻影師、アイゼンハイム」が一番ピッタリときました。この短篇が一番解りやすいこともありますが、その醸し出す世界に引き込まれてしまいました。


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道を歩いているとき、心配事が急にあたまを占拠する。
道の温度は失われ、空気は現実味を失い、
目に見えるもの、感じるものが、次第に頭の中で想像されたものになる。

小さなころから、蓄積されたイメージがある。
表題作「バーナム博物館」は現実の世界なのだろうか、
もしくは、僕が作った世界なのだろうか。
境界線を越えていく、ミルハウザーの幻想は、僕の妄想にリンクする。


綿密に描かれた絵

10編の短編は、それぞれ形式や長さが異なりますが、どれも読み応えのある作品で、大変に面白かったと思います。全ての作品に共通している点は、細密画を描くがごとき丁寧な状況描写です。ミルハウザーは、精巧に出来た一枚の絵から物語を紡ぎだしている、あるいは文章によって一枚の絵を読者の心に描こうとしている、そんな印象を受けます。


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PC・家電・CD・DVD  |  2009/11/25